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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
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【8】転生? いいえ、時空転移です。

「サクラ」

俺は、話し掛けてみた。


「はい」

HD、いや、サクラは答えた。


自分の名前がサクラということを、

理解してくれたようだ。


「じゃー、まず、

なんで俺が何かの候補に選ばれたのか教えてよ」

俺は、基本的な質問を投げた。


「以前ご説明した通り、2020年に宇宙空間での戦闘を想定したオンラインゲームを利用し、そのプレーヤーの戦績をデータベース化し、上位者を本軍にスカウトすべく、計画が進行しました」


「なるほど。それは、なんつーか、

日本のゲームメーカーの陰謀とか?」


「そんな小さな単位で、宇宙が守れると思いますか?」

なんとなく、サクラが胸を張ったような気がした。


「あなたは…」

「どうした?」

サクラが途中で話を止めたので、

変だと思って聞いた。


「クロと呼んでいいですか?」

「ぶーっ!はっ!はっ!はっ!」

俺は、吹き出した。


「あなたが私のことをサクラと呼ぶのでしたら、

私はあなたを、クロと呼んではいけませんか?」

表情は無いが、サクラは真顔だろう。


「もちろん!いいさー!

ついでに、俺れたちは、友だちってことでいいよね?」

俺は、サクラに握手を求めた。


「はい。サクラとクロは、友だちになりました」

「よろしく頼むよ。俺の知らない世界だし」

でも俺は、まだサクラのことを、頭のいい下僕と思っているのだと思う。


「ま、友情が結ばれたところで、話を戻すが、

俺のいた2020年頃には、[転生]とか、主人公が一旦死んで、違う世界で冒険するとか、そういう話がよく作られて、俺も読んでたんだけど、俺のいるこの世界は、どういう分類になるのかな?」


「クロ、あなたは、死んだのですか?」

サクラが聞いてきた。


「いやー、死んでないと思うけど。だけど、

死んだら、何にも分かんなくなっちゃうんじゃね?」


「死んだら、何も分からなくなります。自分自身では、自分が死んだことも分かりません」

そうなのか?なんか、怖いというか、寂しいというか。


「生物は、その個体の生体機能が停止したならば、その生命活動は停止します。生体機能を維持している間ならば、脳内において、様々な記憶や思考力、判断力、想像力、経験を駆使して、いわゆる喜怒哀楽を表現し、刻一刻と変化する人間性というものを、成立させるのです」


「で?死んだら、転生しない?」


「それは、2020年頃に比較的若年齢層に受け入れられた、小説、ライトノベル、アニメーション等で流行した、文学的ジャンルの一つです。一般的には、科学的根拠に基づかず、もとよりその設定を読者が受け入れることが前提で、作品が成立する、若干不思議な世界観です」


「サクラは、なかなか文学的なんだね」

「私は、科学を根拠に作られています」

「ファンタジーやロマンスは、理解できないの?」


「科学的根拠に整合性がとれない場合、私の思考回路は破綻します。

データベースによると、1915年にドイツの作家、フランツ・カフカが[変身]という作品を発表しましたが、

男が朝起きたら、イモムシになっていた。という設定は、科学的にはありえるはずがなく、根拠が無かろうが

絶対に信じられなかろうが、それを無条件で受け入れて初めて、この物語が進行する力を得るのです」


「サクラ、よくわかったよ。難しいことはサクラに聞いて、たくさん勉強するよ」


「ありがとうございます。で、話は続きますが、

次は、時空の問題です。

クロは、転生したわけではありませんが、時空を移動しています。転生は科学的に証明されていませんが、時空転移は、この7258年までに、ほぼ解明されています」

そうなんだ!すげーな!


時間も空間も、自由に操れるのか!

「時間も空間も自由になるとお思いでしょう?」


サクラが言った。

「あ、うん、思った」


「当たらずとも、遠からず。です」

だんだんとサクラの説明が分かりやすくなってきて、

よかったよ。


「クロは、いつ、どこにいても、2020年の人間です。しかも、人類バージョン1.5.2です」

「あー、体そのものは、人間のままってやつね」


「そうです。で、最初にここにお連れする場合だけ、物理的に乗り物に乗せて、お運びしました。その後、かななり初期バージョンですが、コントロール・チップを埋め込むことで、私たちとのコミュニケーションを高度化させることに成功しました。ちなみに、2020年頃には、すでに欧米などでは体内埋蔵チップによって、個人情報の管理や、キャシュレスサービスが実用化されていましたので、地球上の人類全員がチップを埋める日も、そう遠くはないでしょう。

あとは、物理的な移動の方法です。ある物質をグループ化し、まとめて飛ばすのです。簡単に言うと、荷物を入れたコンテナを、光速技術、ブラックホール、ワームホール等を使って、ある時間のある場所へ、91%の確立で移動可能となったのです。これが時空転移です」

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