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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
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【4】2020年の月面基地

ここは月なのか?


窓の外には、街があった。

けど、ウチの窓から見る景色とは、全然違う。


建物らしき物は角張っていて、

明らかに人工物だということは分かるが、

色は全てグレーで、月面の色と同化している。


整然とはしているが、殺風景というのは、

こういうものだろう。

ある程度、遠くには、半円形のドーム状の建造物もあるようだ。


印象的なのは、地表と空との明暗がハッキリしていることだ。地表、すなわち月面は全てグレー一色といってよく、それに対し、空は黒一色で、ウチから見える星の数とは比べ物にならない数の星が輝いている。


月面基地からの景色、と言われれば疑いようもなく、

映画用のセットだ、と言われれば、そうとも思える。

つまり、今は、確かめようが無い。


「今は、2020年なんだよな?」

俺は、HDに再確認した。


「あなたは、2020年に生きています」

HDの答えは、以前と変わらない。

俺にはこの答えの意味が分からないらしいが。


「2020年現在に、月面にこんな基地があるなんて、

今まで聞いたことがなかったんだけど?」

「2020年に、月面にこんな基地はありません」


「もう一度聞くけど、ここは月なんだよね?」

「はい」

「で、地球の人間が作った基地なんだよね?」

「はい」


聞き方が違うのだろうか。

「君のようなHDがあるなんてことも、

今まで知らなかったんだけど、いつ作られたの?」

「私は、7258年製造です」

「西暦7258年?」

「西暦という表現は、現在は用いられません」


「じゃ、キリストが生まれたのは、いつ?」

「西暦元年とされていますが、根拠は薄弱です」

「根拠が無いのに、使ってるの?」

「はい。便宜上、そうです」

未来というのは、かなり適当なようだ。


「俺には理解できない部分が多いことは、君に教えてもらったんで、よく分かった。んだけど、その中で理解できそうなとこだけ、簡単に説明してもらえないかな?

どうして俺は、ここにいるのか。とか」


「あなたがたは、軍から士官候補として選択され、第一段階として、ここに召集されました」

んー、まー、だいたい想像してた答えだ。

まだまだ、まるで信じられないが。


「じゃー、その軍ていうのは?」

「宇宙軍です」

「あー、分かるけど、なんか大雑把だね?」

「それ以外の名称はありません。組織的には、その下に各方面軍が設置されています」

なるほど、なるほど。よくある感じだ。


「宇宙軍の本部は、どこにあるの?」

「機密事項です」

そうなんだねー。俺には教えられないってか。


「地球の人間は、みんな無事なの?」

「2020年現在では、無事です」

「その後は、どうなる?」

「無事も危機も、多くの事を経験します」

んー。あ、そうか。


「月へも移住しはじめたとか?」

「はい」

「この基地にも、たくさんの人が住んでるんだ?」

「たくさんの基準が分かりませんが、住んでいます」

あー、はい、はい。


「他の星にも移住してるとか?」

「はい」

「どこへ?火星とか、金星とか?」

「火星には移住しています。金星は不適正です」

「火星にも、人が住んでいるのか!」

「はい。まだ多くの疑問がおありでしょうが、追ってご質問ください」

あ、質問切り上げ?面倒くなったのか?


「ベッドから下りて、立てますか?」

珍しくHDから言ってきた。

そう言えば、ベッドに座りっきりだ。


「どうかな?」


体を回して足を垂らすと、ベッドは静かに下がり、

靴が床に付くと止まった。

HDが手を伸ばして、俺を支えようとした。

案外、優しいやつだ。


HDの手を借りて立ってみると、普通に立てた。

別に、なんの違和感もない。

いたって普通だ。


「めまいやふらつき、痛みはありませんか?」

HDが心配してる。


「全然、大丈夫そうだよ」

「生体機能モニターで異常なしは分かっていましたが、一応、口頭で聞いておきました」

こいつ、突き飛ばしたら、転ぶかな?


つうか、靴が、俺のじゃないんだけど。

「この靴…?」

「GCSです」

「は?」

「グラビティ・コントロール・シューズです。宇宙での様々な重力状態の場所に対応するための靴です」


おー!映画でも、こんな靴が出てきたな!

宇宙旅客機で、CAさんが履いてたやつだ!

「月面での重力は地球上の60%ですので、ご注意ください」

なるほど。だから体は軽く感じて、足だけ床に吸いつけられているみたいなんだ。


「基地の外へは出れないの?」

「装備を着ければ、可能です」

ここで、こいつと話してるだけじゃ、

ここが月面基地なのか、映画のセットなのか、

本当のことが分からない。


「外に出てみたいんだけど?」

「いずれ許可が出たら、可能です。その前に、司令官がお呼びですので、別室までご案内いたします」

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