配達依存症!運び屋と化した先輩!part.11
話を書くのも混乱しているので失踪します
1880年 カリスタル共和国北東部の街 バルセエナ
アドラー帝国軍は南進し国境の山岳地帯を一部突破。共和国の第二の大都市バルセエナで後退中の敵軍を捕捉、包囲下においた。
我々の任務は包囲下の敵軍司令官の暗殺だ。陽動に主軍が攻勢をかけている間に強化兵で首を狩る。
司令部機能を失った軍隊は脆弱性を露わにし簡単に瓦解するだろう。そうすればまだ国境付近で膠着している敵軍の背後を突けるという寸法だ。
「全く、有能な将軍ばかりで嬉しいよ。扱き使われる末端でなければの話だが」
「隊長。それは言いっこなしですぜ」
部下に愚痴を零すと、全員が狩人装備に身を包んでいる事を確認して言葉に出した。
「敵司令部の場所はほぼ城内で確定しているが、念の為我々の他に二部隊が市内の聖堂と物資集積所を襲撃する予定だ。」
「此方に損害を出すことは許されていない。お前達の予備は安易に用意出来ないのだ、それを肝に銘じておけ。」
強化兵は適合する人間がそもそも多くない。10人に1人の割合で、そこから更に強化手術に手間が掛かる。
通常の兵士とて時代が進むほど高価になっていくのに贅沢に損耗できようも無いのだ。
「「「了解!」」」
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黎明前に市内の城壁をかぎ縄で上り、見つからないよう陰に隠れ市内を進む。
勿論敵だって警戒の為に交通の要所には警備を配置して篝火を焚いているが、その為の強化兵だ。
強化された筋肉と重力制御術で三角蹴りを繰り返せば容易く高所を昇れる。
魔術の力で暗闇でもしっかりと見える視界の中、目標地点へと向かう。
場所は大会議室の近くにある倉庫部屋だ。そこで朝を迎えて主軍の攻勢を待って大会議室に突入。内部の司令部要員を掃討する。
壁を走り、よじ登り静かに城の上層階に侵入した。後は朝を迎えるだけだ。
私の配下は三名。装備は変形斧やノコギリ鉈にSMGが主流。全員魔獣狩りが出来る一流ではないが人を殺すには充分な訓練と実践を積んでいる。
突入前の最後の装備確認を各員無言で行っていると夜が明け主軍の攻撃が始まった。
ライフリングを刻まれた複座駐退機付き鋼鉄製後装式砲が次々と発砲され、バルセエナを覆っているコンクリート製の壁を砕く音が聞こえる。
部屋の周囲も慌しくなり、男達の話声と甲冑の動く音が激しく行き来し、大会議室へ集まっていくのが分かった。
「やるぞ」
私の短い一言に全員が頷いたのを確認したら倉庫の扉を錠前が吹き飛ぶ勢いで蹴り開けて飛び出した。
「て、敵だぁ!」
音と姿を確認して素早く叫んだ見張りの兵士を切り殺し、100m程先の大会議室へと駆け抜ける。
ガチャガチャと鎧を纏った警備兵達が集まってくるが、速度で優位が有る為駆け抜けながら切り倒していく。
「帝国の強化兵だ!カベーロ司令官達を守れ!」
彼らの身に着ける鎧も魔法処理を受けていたりして地球の鎧に比べれば硬度は増しているが、強化されているのは此方も同じこと。
寧ろ強化度合いは此方の方が上まである。
配下が適当に後続を処理しながら付いて来ているのを確認すると、大会議室の大扉前まで到着した。
周囲には既に斬殺した死体が転がっている。
「オォッ!」
意図的に重力術式を使い、インパクトの瞬間だけ自重を大きく引き上げて回し蹴りを大扉に喰らわせる。
蹴り脚に走る痺れと共に蹴ったとは思えない音を立てて大扉が砕けながら開いた。
木屑と土煙で一時的に視界が遮られる中煙の向こう側から威勢のいい声が上がる。
「ここで止めます!ヘイズ!一緒に前衛へ!」
「おうともさ!」
「援護します!」
「絶対止めなさいよ!あんた達を抜かれたら終わりなんだからね!」
何という事か。いつかぶつかるとは考えていたが、光の戦士達とここでぶつかる羽目になってしまったぞ。
しかし今更引けなどしない。なまじ情報が与えられる士官だからこそわかる現状、西部方面攻略は絶対条件だ。魔王に勝つ為帝国だけでは生産力も人的も足りない。
覚悟を決めろ。英雄譚など起こさせない、ここで将来の禍根を摘むのだ。
「久しいな貴公ら。だが挨拶する暇も惜しい。君ら含めて全員死んでくれ」
「「「「なっ!」」」」
破壊された大扉を背後に素早くヘイズの胸元に飛び込み、右腕を振るって拳を当てる。
鎧で防御されている箇所すらも平然と砕きながらめり込んだ拳はそのまま振りぬいて大柄な体を部屋の反対側まで吹き飛ばす。
石壁に叩き付けられて血を吐くヘイズは直ぐに起き上がりそうも無い。
「ヘイズ!」
「注意をさく余裕があるとは羨ましいな」
移動の全てで重力制御をフル稼働させて常に速度と威力を維持しながらカニンガムへとノコギリ鉈を振るう。
ノコギリに合わせて盾が防御に回されるが、同時に彼の右膝関節をSMGで撃ち抜き部分鎧である弱点を早速突く。
「ぐあっ!」
膝をやられ態勢が崩れた所を、首に向って真っすぐ貫き手を放った。
例え頑強な魔獣の皮膚であろうとも貫く狩人の右手。まともに喰らえば人の首など容易く飛ぶ。
「まだだっ!」
咄嗟に合わせたであろう剣が半ばで砕かれるが、それでも致命を避けたカニンガムは転がる事で死地から逃れた。
必殺の瞬間を逃したか。
「癒しの奇跡を今此処に。"ヒールオール"!」
「三重魔法!"ウィンドカッター"!"スロウ"!"バインドスタン"!」
殺し損ねた事で後衛からの援護が間に合ってしまう。
治療魔法でヘイズとカニンガムがこのままでは負傷から回復し前線に戻ってしまい、
風魔法は致命になりかねないので避け、スロウとバインドは強化兵の抵抗力で無理矢理無効化する。
嵌ってしまえば対人戦闘では即死の酷いコンボだ。抵抗力が高くて助かった。
「危ないな。大人しく死んではくれないか」
「死ねと言われて死んでたまるか馬鹿!」
プリムに逆ギレで返されてしまう。ヒカセンなんていう死にながら相手を殺す陣営なんだから軽く一回くらい死んではくれないだろうか。
三重魔法なんて高等技能連続で飛んでは来ないだろうが、前衛に抑えられている間に飛ばされるだけでも十回は死ねそうだ。
「そうだ。帝国の暴挙に倒れ伏すわけにはいかない」
「俺もそれには同意見だぜ」
倒れていたヘイズが起き上がり前衛として復帰し、カニンガムも折れた剣に魔力刃を発生させ立ち上がる。
理由がもう光の戦士って奴だな。全く持って困った物だ。別に帝国は闇などではないと言うのに。
"詰み"を回避するために全力の帝国、現状を理解していない西部、悪いモノ探しなど意味は無いと言うに。
「どうして帝国は西部侵攻なんてするんですか!」
エイリーの今まで抱えていたであろう疑問に答える位はしてやろう。
万が一にでも帝国が敗れれば次はこいつらが矢面に立つのだからな。
「簡単な事を・・・魔王に勝つ為だ。単に生産力と人口が必要なのだ」
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■■■■の黎明 攻略Wiki
カリスタル共和国編 バルセエナ城ボス 狩人ブラッド①
中央地域同盟編でお世話になったお助けNPCが敵として登場します。
攻撃力と素早さが非常に高いのでまともにやり合おうとすると殆ど攻撃が当たらず一方的に殴り負ける難敵。
一方で体力はそれほど高くないので必中系のスキルや全体攻撃スキルで攻撃するのがお勧め。
低レベルクリアやRTAにおいて非常に苦しい回復アイテムを自己使用してくる敵の上に、素早い為行動回数が多く縛りプレイではこのボスが鬼門。
ストーリーでは共通√において終盤のボスで、帝国の行動指針などを教えてくれる。
√によっては二度目以降も戦う必要がありそちらでも苦戦必至。しっかりレベルと装備を整えて挑もう。
しっかり他の人が面白い小説投稿してくれるだろ、よし!(現場猫)