二話 タイタンレ〇プ!G200を超えた老害.mp3
医者帰りなので初投稿です
男はどこにでもいる街の平民だった。
そして全国民共通の強化兵適性検査で最高値を叩き出しただけだった。
たったそれだけで、男の人生は決定づけられたのだ。
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狩人の朝は早い。
どれだけ深酒しようとも、深夜まで騒ごうともいつもの朝の時間にはきっちり起きるように調整されている。
完全に目が覚めた男は、寝間着代わりのシャツとズボンを洗濯籠にぶち込むと、部屋に併設されたシャワーへと赴く。
どうせ今日も狩りで血塗れになると判っていても止める気にはならないのだ。
シャワーで身を清めるといつもの狩り装束に身を包み、旅籠の一階へと降りていく。
「おはよう。よく眠れたかい」
「あぁ、朝食を頼む」
旅籠の女将と短い挨拶をし、朝食を注文する。
今日はパンチェッタとソーセージにパンらしい。野菜はスープで取れという事だ。
運ばれてきた朝食を無言で食す。
昨日焼かれて固くなったパンをスープに浸して食べる。
合間に肉汁たっぷりのパンチェッタとソーセージを食べて肉の欲求を満たしていく。
「馳走になった」
旅籠には一月単位で宿泊料を払っているので特段何もなく終わる。
食事が終われば部屋へと戻り、狩り道具たるノコギリ鉈と散弾銃を取り出して体に固定する。
街中で武装していても狩人なら文句を付けられない。兵士が武装していても咎められないのと同じだからだ。
朝のドライブルグは一応活気がある方である。
魔獣との最前線で有るからこそ多様な物資が必要で、それを送り込む商人達に護衛達と商売相手には事欠かないからだ。
周辺国が一丸となって戦っている連帯があるからこそ現在の膠着が維持されている。
だからこそ商人も利益を求めこそすれ、危険を顧みないのだ。
そんな大通りを男が通り抜けると狩人ギルドに到着した。
殆ど似たようなタイミングでこの街に属する狩人たちも到着する。
彼らの間に会話は無い。精々挨拶代わりに一礼する程度だ。
強化兵への改造手術の際に何らかの人格障害を患う者も多少はいる。だからこそ言葉ではなく一礼が挨拶となっている。
そうしてギルドのラウンジで各自静かに過ごしていると、ギルド職員が狩りの標的を張り出す時間帯がやって来た。
狩人は単身から三人から四人までのグループを作るのが基本だ。
しかし狩る目標に応じて人数を前もって変更するという事はあまりない。
精々が狩りの最中に不測の事態で救援を要請して、それの応援が入る程度になる。
そして男は今日の狩り目標を人狼の群れに決定したらしい。
人狼は確かに危険で狡猾、群れを成し襲い掛かり人に化ける魔獣だ。西方地域なら上位の冒険者が担当するべき獲物だろう。
しかし、中央地域ではごく有り触れた魔獣であり、狩人にとっての簡単な獲物に過ぎない。
それ以上の獲物を探そうとはしたが、単に居なかったのだ。こればかりは時の運としか言いようがない。
「こいつを頼む」
「こちらが資料になります。読み終わったら返却窓口にお願いします」
男は受付窓口へと依頼票を手渡すと、彼の厚い革のグローブに資料が手渡される。
狩場となる場所の情報や群れの情報が掛かれた紙だ。
ラウンジのソファに座り込みながら情報を確認していく。
大森林近郊・近くに村が一個・大型種の移動による大規模侵攻の兆候なし。
大まかな情報が解れば後は狩りをするだけだ。
資料を返却すると、厩舎に向かって移動する。
狩人の主な移動手段は調教した竜に跨るか馬が基本だ。
特に竜は下位とはいえ竜種、その持久力と速度は馬を遥かに超える。
しかしそれ相応に維持費も高い為、遠出か危険地帯への狩りでもない限り大半は馬が使われるのが普通だ。
厩舎で馬を借り、目標の大森林近郊の村までひとっ走りする。
適度に馬を休ませながら走れば昼過ぎまでには到着した。
逆に言うとドライブルグと大森林までその程度の距離しかないのだが。
「村は死んではいないようだな」
遠目から確認しただけでも燃えていたり、濃い血臭が漂ったりはしていなかったので今のところは無事なのだろう
村側でも櫓からこちらを確認していたようで、村長が対応に出て来た。
「狩人様。この度は人狼狩りに来ていただきありがとうございます」
「気にするな。仕事だ」
狩人の紋章を見せつつ正式な狩人が仕事で来たと伝える。
狩人にとってはたかが人狼だが、村人には充分過ぎるほどの死神に等しい。
小鬼程度なら村の若者が追い払ったり殺すなり可能だが、その程度の雑魚が中央地域の競争環境で生存できるはずも無い。
目撃情報は既に資料で覚えているので、後はここで馬を預けて徒歩で現地を調査し、群れを捕捉撃滅する。
「馬を預かってくれ。始末してくる」
「わかりました。どうぞ行ってらっしゃいませ」
しかし男が最初に向ったのは村落の一軒家だ。
それを見てしまった他の村人は悲しい事でも起きたかのように目を伏せ始める。
狩人が一軒家に踏み込む際、既に獲物はそれぞれ抜き放ち何時でも使える状態にあった。
そのまま扉を蹴破る狩人。
家の中にいた若い女性がハッと狩人を見る。
狩人は感覚器官も魔術的に強化されている為、人狼ならばどれだけ清潔にしていようとも臭いで嗅ぎ分けることが出来るのだ。
「獣くさいんだよ間抜け」
狩人の煽りと共に、逃げ場がないと悟ったのか。
若い女性が一瞬で人狼へと姿を変え、襲い掛かって来た。
それを左手の散弾銃で迎撃する狩人。
撃発音と共に散弾が銃身から飛び出し、襲い掛かろうとしていた人狼に命中して怯ませる。
そこで狩人は右手のノコギリ鉈を床に突き刺すと、貫手で人狼の胸部を貫いて、骨を砕き心臓を抉り出した。
「そんな・・・私達は飢えているだけなのに・・・」
心臓を抉られて最後の言葉を残す人狼だが、狩人は無慈悲に言葉を吐いた。
「殺してるんだ。殺されもするさ・・・だろう?」
言葉と同時に床に心臓をぶちまけ、血濡れの右手でノコギリ鉈を握り首を刎ねる。
知性があろうとも敵対しているなら殺す。それが中央地域でのルールだ。
結果的に、村を襲うための算段として斥候としてに村娘に成り代わった人狼は殺した。
あとは斥候が戻らないままの群れに臭いを消して接近し、奇襲で皆殺しにするだけで終わった話。
中央地域ではどこにでもよくある、有り触れた一日だった。
プラベ部屋でうんちみたいな成績をしている人が居たら私です