一話別れ旅立ち
よろしくお願いいたします。
「これから、夏休みに入る。くれぐれも、怪我や事故にきおつけること。それと最近児童の誘拐事件が起きている。きをつけて遊ぶように」
担任の先生が言った。眼鏡をかけている二十代男性の先生だ。大学のことは分からないが、いい大学を卒業したようだ。クラスが騒いでいた。
僕は席から立ち、階段を降りて、玄関に向かった。靴を置こうとしたが、たまには洗ったほうがいいと思ったので、持っていくことにした。」
「雅弘くん。一緒に帰ろう」
外用の靴を履いて歩こうとしたときだった。幼馴染の綾香が僕に言った。物静かな僕に親切にしてくれる。優しい人だ。
「え…。ああ。いいよ」
僕が言った。一人で帰ろうとしていたので少し驚いてしまった。
綾香は靴を履き替え、内用の靴を靴の形にあった袋に入れた。僕と綾香は並んで歩き、校門を通り過ぎた。
何も話さずに並んで歩いた。僕は、何か話をしなければいけないと思い考えた。
考えがまとまらず空を見た。空にはとても大きい入道雲がひとつ浮かんでいるだけで青空が広がっていた。
「突然だけど、私。海外に行くことになったんだ」
綾香が言った。
「そうなんだ。」
僕が言った。もう少し何か言ったほうがいいと思ったが、思いつかなかった。
「私の父がバスケ選手だからね。海外のクラブに移籍することになったんだ」
「親がバスケ選手だったの?知らなかった」
「知らなかったの?」
「知らなかった」
僕が言った。僕たちは何も話さずに、踏切の前に来た。
「それじゃあまたね」
綾香が言った。
「ああ。さよなら。それと…元気で」
僕が言った。
「うん。元気でね」
綾香が言った。
僕は綾香が歩いて、家に帰る為に歩いている後姿を眺めていた。そして踏切が鳴り、遮断機が降りた。そして電車が通り過ぎた。遮断機が上がった時には綾香の姿はなかった。その時に不思議な感覚がした。世界の流れが変わったようなきがしたのだ。
僕は昔見た映画を思い出した。二人が踏切の向かいにいて、電車が過ぎたらいない。叶わない恋の映画だった気がする。今は2012年だ。小学校六年だ。誕生日は9月13日12歳だ。5年前?6年前か?まあ、どっちでもいい。五センチメートルだったか?秒なんだろう。思い出せない。星を追う子供か。いや違うあの映画は見ていない。いや、二つの映画は見ていないような気がする。なぜこんな気持ちになるのだろうか。ゲームのようにセーブデータを保存する機能が僕にもほしいとおもった。一年後の2013年新作が公開される。その映画でも見てみよう。一年後は中学生だ。綾香がいない世界。なんだろう変な感じがする。
「僕はどうなるのだろうか?」
小さい声で僕は言った。
ありがとうございました。