神との対話
それは、何かの集合体だった。
高密度の情報。
目の前に存在すのは、理解不能な何かだと思う。
「これが、神さ、ま?」
こんな、理解不能な存在に、僕の人生は狂わされたのだろうか?
僕だけじゃない。コハクみたいにギフトのせいで命を失った存在も多数いる。
その元凶が、これなのだろうか?
全てを拒絶しているようで、全てを包み込むやさしさを感じてしまう。
「教えて、ください・・・」
何を言っても、返事は無いかもしれない。それでも、僕は聞きたかった。
「何を、知りたいのかな?」
僕の問いかけに、後ろから返事聞こえた。
この場所には、他には誰もいないはずだったのに、聞こえた声。しかも、何処かで聞いたことのある声だった。
「私でよければ、お答えしますよ」
振り向けば、見知らぬ男性が立っていた。目の前にある、理不尽な存在ほどではないが、恐ろしい気配をそれは持っている。
「貴方には、恩があります。それを返さないほど、私は白状ではありません」
「恩?」
「それと、お詫びもしなければいけませんあらね。貴方に付けた従者が、役目を果たしていないみたいでしたから」
それを聞いて、目の前の存在が何か理解できた。
「ミズチ?」
迷宮の入り口で、遭遇した存在。知識のギフトを持っていた亡霊。
「これでも、神の眷属になれたのですよ。ここまで来ても、知りたい事は山のよう。世界は、面白いものです」
そう言って、不気味に笑う。
「貴方も、神なのか?」
「その末端に、籍をかろうじて置いている存在です」
「神様は、1人じゃないのか?」
「何を持って、神と言うかで、色々と難しい話になります」
「・・・」
「貴方は、どの神と話がしたいのですか?」
「どの?」
「貴方が知りたい事は、何ですか?」
「ギフトのこと。何故僕は、望むものを手に入れなかったのか?僕は、神に見放された存在だと言うなのか、教えて欲しい」
毎日、厳しい修行をした。お祈りもたくさんした。神の名の下に、魔物を殺した事もある。
僕の努力が足りなかったのか?何が、不足していたのか、それが知りたい。
出来るなら、ギフトを入れ替えて、神聖騎士になりたかった。
「なるほど・・・」
ミズチと名乗るものは、それを聞いて考える。
「神は、あくまで公平な存在です」
「公平?」
「人にギフトを授ける。それを人は選ぶ事は出来ません」
「・・・」
「最初に、ギフトを望んだ存在は、神に魔物と戦い、勝てる力が欲しいと願いました」
「それが、ギフトなのですか?」
「それは、失敗しました。神が与えたのは、強力な力。人はそれを使い魔物を滅ぼしああと、人同士が争い力を望んだ存在以外が滅んで消えました」
「そんな事が・・・」
「はるかな、過去にあったのです。その後も、人を造る存在がいて、魔物を造る存在がいて、滅んでは産まれる事の繰り返しです」
「それも、神様の仕業ですか?」
「世界は、そう言うものだと思ってください。この世界は、動かすルールみたいなものです。その繰り返しの隙間から、色々と世界を変えようとしている神もいれば、流れるままの神もいます」
「神様は、一つではないのですか?」
「これだけは、はいと言えます」
「じゃぁ、僕はいったい今まで何をしていたのだろう・・・」
「ギフトで、将来が変わったのなら、それを受け入れるべきでしょうね」
「受け入れる?」
「貴方は、別の力を手に入れた。それを使って、やりたい事をやれば言いだけのことです。ギフトが、貴方の人生の全てではないのですから」
確かに、全てではない。だけど、僕の今までを否定したのはギフトだ。
「なんで、ギフトなんかあるんだろう?」
「それは、昔神にあった存在が、願ったから」
「願った?」
「当時の人間は弱く、魔物の強い時代だった。だから、魔物と戦うための力を願った」
「それが、ギフト?」
「そう。人間が、魔物と戦うための力」
「それなのに、人を不幸にするのか?」
「それは、人しだい。時代が流れ、人が強くなり、人の社会と言うものが、ギフトの意味を変えてしまった・・・」
ミズチの言う事は、少しだけど解る気がする。
「人が神に願ったのは、魔物と戦う力と言うのは、間違いないのか?」
「間違いない」
「解った」
それが真実だろう。魔物と戦う力を、紙と言う存在が人に授けた。それがたまたま、僕には罠と言う力だった。
その力のおかげで、僕は生延びる事が出来て、新しい力を得た。
「僕は、何をしたらいい?」
「それは、自分で考えなければ行けない」
「僕に何かをさせたいのではないのか?
ミズチがここのいる理由。それが解らない。
「君と別れて50年。僕は神の眷属になった。今は、この世界の事にかかわっていない。
「50年?」
「君は、色々と規格外すぎる。あれからそれだけの年月が経っている。それなのに、君は衰えることなく、あの当時のままだ」
魔石を、大量に取り込んだ影響だろう。
「大体、魔石を食べるなんて、何処でそんな非常識な事を教わったのですか?」
「え?」
冒険者は、緊急時に魔石を食べて飢えを凌ぎ、生きのびると教会で教わった。
「魔石を食べる事は出来ますが、普通はしません。何も処理してなければ死にます」
「処理?」
「小さい時から、細かい魔石を食べて、抵抗を付ける事です」
と言う事は、孤児院の食事には、魔石が含まれていたと言う事になる。
「何故?」
「それは、私には解りません」
「神様なのに?」
「神と言っても、所詮この程度です。だから、私は上を目指します」 そう言って、ミズチは笑う。
「私が貴方にあったのは、そのための一つ。ここに来るために、外の世界で色々とやっていました。その時の協力者に頼まれたのです。彼の願いを叶えるために、ここに来ました」
それを聞いて、一つの予感が生まれる。
「行きますか?」
「いつまでも、ここにいても意味が無いからね」
「解りました。貴方が出れば、この迷宮は消滅します」
「そうなのか?」
「私が消します。この迷宮は、色々と失敗です」
「神様が作る迷宮でも、失敗する事なんてあるのか?」
「全て完璧なら、この世界で悲しむ人はいません」
そう言うミズチの姿は、光に包まれて消えていく。
「御武運を」
その言葉と共に、迷宮は消えていく。
僕は1人現実へと戻る。迷宮の外は、広い空間になっていた。あの時と変わってない気がする。
たくさんあった死体が無い。この場所は封印された場所。
50年過ぎたというのなら、新しい死体の山が出来ていても不思議ではない。
「あれがいれば、封印の必要は無いのかな?」
空間の中央に、1人の戦士がたっている。
巨大な剣と盾を持つ男。
剣は、見覚えのある断罪だ。神聖騎士団の団長クラスが持つ聖剣。
ここを守護している騎士だろうか?物凄い重圧を放っている。
その男が、こちらに気づく。気配を消しているのに、的確にこちらを捉えたのがわかる。
そして伝わる、歓喜の感情と、狂気の激情。
その感情に導かれ、音も無く近づいた男は、巨大な剣を一瞬で距離を詰め、振り下ろすのだった。
1週間に1回くらいのゆっくり更新の予定です。