ギフトの名は罠 その8
「そろそろ、進むべきだと思いますよ?」
「もう一度は、流石にやりすぎかと・・・」
僕の行動を、2体のゴーレムが制止する。
「僕は、慎重に行動しようかと思ってね」
「これ以上は、不要かと思います」
「大丈夫」
別の2体のゴーレムも、僕の行動を否定する。
コハクと分かれてから、しばらく時間が過ぎた。
あの子は、僕が罠にかかったと思っているけど、僕は知っていて扉を潜った。
最初からやり直し。1000階層の迷宮を、繰り返し効力した。
途中で、色々と試しながら自分を鍛え、魔石をゴーレムに投入することで特殊な進化をしたゴーレムを手に入れた。
これが、その4体。過去の英雄の能力と記憶を持つ、特別な存在で、色々と恐ろしい存在になってしまった。
「われらよりも、恐ろしい存在のマスターに言われたくない言葉ですね」
「人の心を、読まないで欲しいです」
「我々とマスターは繋がっています。細かい事は気にしてはいけません」
かつて、一つの大陸を滅ぼした存在。腐り姫と取れた彼女は、名前をグリーンと名付けた。過去の名前で呼ばれたくないらしい。
本人ではなく、記録のコピーではあるが、糸角自我を持っているので、彼女の意思に従う事にした。
「流石に、3回も繰り返すなんて、おかし過ぎます」
グリーンは、10歳で死んでしまった当時の姿を再現する事に成功していた。大国のお姫様で、お人形さんのような可愛さと言う言葉が似合う少女だ。
彼女の出来事を詳しく聞いたけど、色々とギフトに関して考えさせられる出来事だった。
「魔王にでもなるつもりですか?」
あらゆる魔法を極め、世界最高峰の魔物討伐数の記録を持つ男。それが彼ヴァーミリオンの生前の評価だ。
真っ黒の前進鎧で身をまとい、巨大な戦斧を背負っている。とても、魔法使いに見えない。ちなみに、鎧の中身は無い。本体は、エネルギー生命体になっていて、鎧に憑依している。
実際の彼は、消滅していないので、ここにいる彼は別の存在と言う状態でもある。オリジナルとは、ここから出たら話し合う予定だ。
「魔王と呼ばれている貴方に、そう言われたくありませんね」
「魔王なんて、面倒だからな・・・」
鎧になっているけど、声には感情がある。実際、彼は魔王と呼ばれる存在になって、大陸の一部を占拠している、色々と、事情があるらしい。
「それで、マスターはこの先どうするつもりですか?」
伝説の薬師リーフ。聖教会の始祖とも言われ、今でも世界中に信者がいる存在。一番活力があった時代の姿と言うことで、40代の女性の姿をしている。
彼女のギフトは、薬を作ると言われていたが、実際は違っていた事が判明した。
彼女は、薬の材料と作り方がわかる。だから、効率のいい回復薬の作り方を見つけ、それを広めただけ。
この草が、毒消しになると解ると、栽培して解毒剤を生産したなど、色々と薬を作り続けていた。
目的は、金儲け。彼女の作った薬は、莫大な利益を生み出した。それを元手に、薬つくりの基礎を作り、弟子と言う名目の作業員を集め、薬の販売に力を入れて、お金を得ていた。
彼女が世全集めたお金は、ある大国の国家予算の数年分になったと言う伝説がある。
もっとも、彼女がなくなったときには、全て使い果たされて、遺産は残っていなかった。
そのおかげで、遺産をめぐる争いは無かったと言う。ただ、その使い道は謎だった。
「稼いでも、大所帯だったから、食費にほとんど消えただけなんだけどね・・・」
どれだけの人がいれば、それほどの資金を使い込むのだろう?
彼女の弟子たちは、各種ポートンを広め、人類と魔物との戦いに貢献した。
ただ、聖教会と彼女とは関係は無い。教会が勝手に名前を使っているとのこと。外に出たら、文句を言う予定らしい。
「ここから出たら、色々とやってみたい事はある」
色々と、この迷宮で知る事ができた。ギフトに関しては、色々と考えた。3回も迷宮を繰り返したのは、自分のギフトの限界を知りたかったから。
「それは、方便」
「・・・」
「慎重なのと、臆病は紙一重、その姿勢は嫌いじゃない」
伝説の存在、インフィ。彼女もギフトに目覚めて過ぎになくなってしまったので幼いままだった。
空間転移と言うギフトを授かり、自在何処絵でもいけるはずだった少女。
「限界を、知りたいと言うのは、本当だよ?」
「限界なんて無い。ギフトの、極と言うのは、そう言うもの」
「流石に、それは理解したよ・・・」
ここにいる4人は、いずれも極のギフト持ち。その恐ろしさを、僕は学んだ。同じ、極のギフト持ちだから。だからこそ、不思議な事も色々と見えてきた。
これだけ恐ろしい能力があれば、今この地上に魔物はいないはず。僕が考えるだけでも、ヴァーミリオンとインフィにはそれが出来たと思う。
しかし、現実がヴァーミリオンは魔王になって、インフィは幼くして死亡した。
「私が死んだのは、私を恐れた人のせい」
ゴーレムだけど、彼女には生前の記憶がある。グリーンとインフィは人に殺された。
その力を有意義に活かせば、魔物を滅ぼせる存在を、人の手で殺したなんて、愚かとしか言えない。
「何かが、間違っているんだ・・・」
ここで学んで、そう思えるようになっていた。
間違えたのは、神様だろうか?
人間が間違っているのか?
この扉の先ではなく、通路を進めば、神のいる場所へとたどり着く。
迷宮を繰り返す事で、僕は力を得た。
だから解る。
この先にいるのは、化け物だ。
後何回繰り返しても、力を得ても超えられない存在がいる。
だから、物凄く怖い。
「いい歳した大人になったのだから、頑張れ」
グリーンが、僕を励ます。
ここに来て、どれだけの時間が流れたのか、正直判断できない。
体は、大きくなっているのは解る。魔石による強化で、成長は成人した辺りで止まってしまった。
「そうそう。怖かったら、一緒にいてあげるから」
僕の左右の腕に、グリーンとインフィが抱きついてくる。
最初は、無機質な素材のゴーレムだったけど、進化を繰り返し人そっくりの存在になっているので、暖かい。
「我等も、一緒ですぞ」
「そうそう」
表情が見えないのに、からかうようなヴァーミリオンと、子供を見守る母親のようなリーフ。
「覚悟を、決めるか・・・」
1人だったら、迷わず進んだんだけどね。
この先にいる存在が、少し待ちくたびれたと怒っている気がしてきた。
怒らせたら怖いので、先に進もう。
恐怖と言う感情を抱きながら、僕はゆっくりと先に進む。
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