ギフトの名は罠 その6
それは、理不尽な存在だった。
死にたく無いから、生きのびる方法を問いかけた。
その結果、状況からアンデットになる方法を手に入れたらしい。
死体だらけの穴の底、それはアンデットの上位存在まで進化した。その途中、思念の欠片を見つけ、何かに使えると言う思い付きから、保存されていた。
その結果、私はコハクという名前の人形になった。
ダークと言う少年の知恵袋として、迷宮探索を続けている。
このダークと言う少年も、理不尽な存在だと思う。
ミズチ様は、知識を現実に変える能力を持っている。これをやりたい、こんな道具が穂いいという事を、実現させてしまう。
世界の全ての知識を得るために、異世界へと旅立つのが目的らしい。そんな彼でも、自力でこの場所から抜け出すのは困難だった。その方法を、知識のギフトから得た彼は、長い月日を待ち続け、実現させた。
結果を知っているから、待つ事は苦行ではない。その間に、色々と調べられると言って、色々な実験をしていたのを知っている。
結果的に、利用した少年のために、私をサポートに使用したのではない。
私の望みをかなえるために、こうした方が良いと、彼は知っていた。だから、私を一緒に迷宮に行かせたのだ。
その迷宮で、別の理不尽を見た。
罠のギフト、ここまで強力でいいのでしょうか?
魔力を消費する魔法とも違う仕組み。どうして、底に落とし穴が出来るのか、物理法則と言うものを無視しています。
ミズチの眷属的な使いなので、私には色々な知識があります。それで、彼をサポートするのが私の使命。
それなのに、彼に質問される事もなく、ただ黙々と迷宮を踏破していきます。
孤独と言うのは、時に人の心を狂わすと教えられました。だから、彼に付き合って迷宮を進んでいるはずでした。
この男は、苦戦すると思っていた300階層を、あっという間に突破しました。
敵は、魔法使いです。
魔導人形と言う、魔法を使うゴーレムの集団。1階層で12体の集団でした。
階層に付いた瞬間に、魔法使用禁止という空間を彼は作ってしまいました。これは、基本的に迷宮の主設置できる特殊な罠です。
普通の罠使いでは、設置できないはずです。魔力動く魔導人形が、魔法禁止エリアで活動できるはずがありません。
少しに見せ場も無く、退場です。しかも、完全に無傷の人形は、彼によって収納されてしまいました。
後で使えるかの知れないと、恐ろしい事を言っていましたが、実現してしまったで、恐怖でしかありません。
人形の私ですが、粉の魔導人形が哀れに思えました。
「お前の目的は?」
迷宮の途中で、聞かれました。
階層は既に900階層の後半。終わりが見えてきました。
ただひたすら、彼は前に進んでいます。孤独の中で狂わないのは、的確な意思があるからだと気づきました。ミズチ様と同じですね。私も、一緒いるのに何も出番が無く、孤独でしたが狂っていません。
「転生する事・・・」
私にも、目的があります。魔力を集めて、一定の基準を超えれば、ミズチ様の作ってくれたこの体は、ある魔法を発動します。
ここに来る間、彼に少し魔石を分けてもらいました。もう少しで、目的が達成できます。
ここまでは、長かったです。
400階層は、知識を学ぶ場所。たくさんの本に埋もれました。魔力によって、底上げされたのは頭脳も含まれていて、彼は本の知識を大量に吸収していました。
500階層は、集団戦闘の対人偏。魔法だけでなく、武器も使う魔導人形との大規模戦闘。
各階層に、100体の魔導人形がいましたが、魔法禁止エリアになった事で、全部彼の所有物になりました。
600階層は、勢作に関係した試練の間。ここまでに、魔力から道具を作るアイテムを手に入れていたので、それを使って、一定レベルの物を造るというものでした。
素材は、用意されていて、薬草から武器や防具、少し変わった魔法の道具まで、少し時間がかかりましたが、突破できました。
700階層は、鏡の間。ひたすら、自分と同じ能力の敵と戦うと言う、狂った階層でした。
ただ、この改装は迷宮の製作者が、油断しました。。能力は同じ相手です。相手の能力をコピーする魔物。ただ、装備しているものはコピーできませんでした。
複製を禁止と言う能力を持った武器を、彼は製作していました。600階層で、何故そんなものを造るのか、不思議でしたが、これを見越していたのかもしれません。
結果、武器の優劣で勝負はあっという間に終りました。同じ事を繰り返すほうのが辛いと、彼は愚痴を行っていました。私から見れば、能力だけでなく、外見も似ている、自分自身とも言える存在を、躊躇無く倒し続けたこの人が怖かったです。
800階層は、過去の英雄との戦いでした。
この世界の、勇者や魔王と呼ばれた存在。それと一対一の戦いでしたが、ここまで魔石による強化を続けた彼の敵ではありませんでした。この階層だけ、次の敵の強化は無く、当時の強さを再現したものであり、既に人としての領域を超えてしまった存在には、及びませんでした。
彼が言うには、英雄たちが使っていた武器が欲しかったらしいですが、倒してしまうと、一緒に消えてしまいました。
ただ、何代目かの聖騎士王を倒した時に、ドロップアイテムとして断罪を入手しています。
そして、最後の900階層は、龍が相手です。
人類の天敵。
巨大で偉大なる、魔物の帝王。
だったと思っていたんだけど・・・。
「第3小隊は、側面から矢を放て!」
彼は、手にした魔導人形を、改良して配下にしました。600階層の勢作の結果、ゴーレムを操る技術を習得しています。
それを使い、魔導人形の軍団を作りました。
龍相手に、軍団を使って戦っています。しかも、かなり上手に部隊を運営しています。
遠距離から、魔法や弓を使い、的確にダメージを与えます。龍の意識をコントロールして、攻撃を分散させ、味方の被害を防ぎます。
ある程度、ダメージを与えると、伏兵を投入して、的確に龍を狩ります。地面の中だったり、空中から現れたりと、伏兵は何処からでも現れます。
普通の攻撃でも、毒を使ったり、痺れ薬を使ったりと、罠を絡めて有利なるように戦っています。
効果的な反撃も出来ず、消えていく龍の姿は、哀れに思える時もありました。
「これがあれば、転生できるかな?」
もう少しで、最後の階層と言う所で、彼は巨大な魔石を私に差し出しました。
「・・・」
恐らく、これがあれば充分です。
これが目的ですが、それを目の前にして、私は動く事ができませんでした。
1週間に、1か2回の投降予定です。