ギフトの名は罠 その3
6/17 一部改変
人形の名前を変更しました。
ギフト 罠 レベル:極
それが僕のギフト。ギフトのレベルは5段階あり、小・中・大・特・極に分類される。
中レベルの人が圧倒的に多く、極に関しては、ギフト事に1人と言われている。
これが、剣術:極だったらどれだけ嬉しかっただろう?
レベルが高いと言う事を、喜ぶべきなのに、素直になれない自分がいた。
「あれ?」
ここで、不思議な事に気づいた。迷宮に入る前に、僕はギフトを使った。浄化の罠と、鑑定の罠を使っている。
ギフトは、開封しないと使えないはずだ。
「それは、私が使ったからだよ」
「!」
誰もいないはずの迷宮に、大人の渋い声が聞こえた。
「危うく、私も消える所でしたよ」
薄っすらと、透明な何かが目の前にいます。
「私の名前は、ミズチ。ギフト知識の持ち主だった男だ」
声は聞こえるけど、姿は無い。この迷宮に、自分以外の存在方ことに、若干驚いている。
「他人のギフトは、ある程度操れます。裏技なので、普通の人には出来ませんけどね」
そう言って、笑う亡霊。
「知識”極”によって得た知識は、私に色々と教えてくれました。その結果、教会に異端認定されて処刑されましたが、消滅せずに生きのびたのです」
「浄化の罠は、不完全だったの?」
「完璧すぎでした。あそこまで威力があるとは思いませんでした。貴方も、極レベルのギフト持ちだったのですね。ある程度予測できたので、助かりました」
「予測?」
「知識のギフトは、知りたい事を教えてくれるギフトです。自分が生き残る方法を問いかけた結果が、今に繋がっています」
「知識のギフトは、頭が良くなるのではないのですか?」
「本人の知らない知識を得る。知力の向上になると言っても良いでしょう。その中でも、個人差があり、動物の知識を集中的に覚える人もいれば、魔物の知識を得る人もいる。政治に関して頭角を出す人もいる。ギフトとは、曖昧な存在です」
「・・・」
「君のギフトは、罠だけど、色々な可能性を持っているはずですよ」
「可能性?」
「私は、あの場所で肉体を失い、死霊となっていました。そうなるのは予測していたので、死霊魔法を習得して、生きのびていたのです。神聖騎士なのに、お笑いですね」
「知識のギフトで、神聖騎士になれたの?」
「私が生きていた頃は、なれましたよ。あれから、100年以上過ぎているから、その間に変わったのでしょう」
「・・・」
「君の記憶を、少し見させてもらいました。あの世界は、悪い方向に変わっているのですね・・・」
「悪い方向?」
「ギフトによって差別される世界。神は、人の幸せのためにギフトを作ったのに、そのせいで不幸になる人がいる」
「・・・」
神聖騎士団に入れなかった自分は、不幸だろうか?
「君くらいでは、まだ不幸ではないですよ。後の行動が、駄目すぎますが、問答無用で殺されたりしてはいませんよね?」
僕がここに落とされたのは、神様に対する不満を抱いたから。ギフト直接関係していない。
「お子様はには理解できない世界があります・・・」
その言葉は、深く暗い闇を含んでいた。
「お子様ですか・・・」
そういわれても仕方ない。僕は、何も知らない。
「君に、色々教えてあげるのも面白そうだけど、私は私の為に行動します」
ミズチと名乗った存在は、何か目的があるようだった。
「君には、あの場所から連れ出してくれたお礼をしなければいけません」
そう言うと、空中に何かが現れた。
「これは?」
「あの場所で、君に縁のあった存在です。これを利用します」
死体の山の中にあった、小さな玩具。確かに、見覚えのあるものだった。
「この子のギフトは、”腐る”私がいた時代に、悲劇を生んだギフトです」
「この子のって、ギフトは10歳にならないと解らないのでは?」
「使えるようになるのが10歳。5歳の時には種が生まれます」
「え?」
だったら、5歳の時から僕は神聖騎士団に入れないと、決まっていたの?
だったら、なんで?
「君の事情はわかりません。ただ、この子は、ギフトのせいで殺されました」
腐ると言うのは、謎のギフト。100年前に、一つの国を滅ぼした伝説がある。
ただ、それ以降この呪われたギフトの持ち主はいないはずだった。
「あれは、悲惨な出来事でした・・・」
現場を知っているミズチは、当時を思い出しているみたいだった。
「じゃぁ何で、神様はこんなギフトを作ったんだ?人を幸せにしていないじゃないか!」
罠だから、戦いに役に立つ。魔物と抱えると言うのは、人を守る事につながり、幸せに繋がるかもしれない。でも、腐るって、何の役に立つ?
「それは、自分で確かめてください」
「確かめる?」
「この迷宮の最奥には、神と呼ぶにふさわしい存在がいます」
「貴方は、神ではないのですか?」
「私は、知識の追求者です。神にはなりません」
それは、なれる可能性がると言う事。本人と、聞いていた人は気づかなかった言葉。
「いつか何処かで、再び・・・」
それだけ言うと、その存在は薄れて消えていきました。
その場所に、残っているのは小さな玩具。小さな人形だった。
「これを、どうしろと?」
それを拾いながら、呟いてしまう。1人だと思うと、寂しくなるせいなのか、独り言が多くなるのかもしれない。
「この迷宮を出るまで、私が貴方をサポートします」
「うわぁ!」
人形がいきなり喋ったので、思わず投げ捨ててしまう。
「痛くないけど、酷いですよ!」
「人形が喋ると思わなかったからね。悪かったと、言っておくよ」
僕は、驚かされた被害者だと思う。
「それなら、仕方ありません。私は、ミズチ様より仮初の命を与えられた存在。この迷宮の間だけ、貴方をサポートします」
「・・・」
「ちなみに、孤児院の子の魂ではないですよ。私は、人工精霊です」
「そうなの?」
「はい。この人形は、依り代として最適だっただけです」
「名前は?」
「名前は、貴方がつけてください」
「僕は正直、名前が思いつかない・・・」
僕の周りに、名前のある人はほとんどいない。孤児院では、色々と適当に呼び合っていた。
僕は、神聖騎士団に入団できれば、騎士としての名前をもらう予定だったけど、黒髪、黒い瞳だからダークと呼ばれていた。
人形を見て、なんとなく思い浮かんだ名前がある。
「コハクで良いかな?誰かが拾ってきた石の名前だったかな?。思い出せないけど・・・」
「・・・」
人形は返事をしない。
「では、それでいいでしょう。私の名前は、コハクです」
少し時間が経ったけど、その名前を彼女は受け入れました。
若干嬉しそうな感情。なんとなく、それが解る。
その反面、彼女の言う事に、偽りがある気がする。これは、罠のギフトが作動しているからだと思う。ただ、まだ未熟だから、完全には解らない。
「サポートって、何をしてくれるのかな?」
「知りたい事を、答えられる範囲でお答えします」
「この迷宮は、どんな迷宮なの?」
あれだけの封印をした迷宮だ。恐ろしい迷宮なのかもしれない。その最奥には、神様がいるかもしれない迷宮。
「この迷宮は、初心者の迷宮」
確かに、敵の数は少なく一直線の迷宮だ。初心者の迷宮なのかもしれない。
だけど、それなら何であれだけの封印をしたのだろう?
「初心者殺し、神を封印した迷宮、悪魔が生まれるとこと言う別名もあります」
「何で、そんな物騒な別名があるのに、それが初心者迷宮なんだ!」
思わず、怒鳴ってしまう。色々と、おかしい。
「事実ですから」
だけど、ホワイトはそれだけ告げて、黙ってしまう。
どうやら僕は、とても危険な場所にいるみたいだった。
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