ギフトの名は罠 その1
異世界ものを書いてみました。
神聖騎士団。
帝都を守護する最強の騎士団。
貴族だけでなく、平民からも幅広く人材を受け入れ、凶悪な魔物と日々戦い続ける存在。
「何で・・・」
そこを目指し、毎日修行をしていた。
「何で?」
孤児院の仲間と、一生懸命頑張ってきた。
「・・・」
僕の望みは、絶望となった。
罠
それが、僕のギフトだった。この世界は、10歳になったとき、神からギフトという能力を与えられる。
幼年時は、基礎を鍛え、ギフトを授かれば、ギフトを鍛える。
憧れの、神聖騎士団に配属されるには、戦闘系、もしくは魔法系のギフトが必要だった。
罠と言うのは、迷宮を探索するのに役立つ能力。ギフトは人によって特性があり、罠だけだと、細かい部分はわからない。実際に使ってみるしかない。
だけど、僕が望んでいたのはこれではない。毎日、剣を振って走りこみ、魔法の基礎を勉強していたのは、神聖騎士団へ入りる為だった。
悔しいのは、これだけじゃない。
同じ孤児院で過ごしていた仲間が、剣聖という強力なギフトを得た。今まで、僕に一度も勝てなかったのに、あいつは力を得た。
その後で、模擬戦をしたけど、結果は僕の勝ち。まだ、ギフトに馴染んでいないのだろう。でも、自分が負けたのは、僕が罠を使って、卑怯な手段で勝ったと言う。あいつから見て、僕は卑怯者らしい。
剣聖を得た事で、あい津は神聖騎士団の下部組織への入隊が決定した。何を言っても、あいつのほうが正しいと言う事になってしまった。
こんな、馬鹿な話は無い。僕は、罠を使っていない。卑怯者じゃない。
何で、あんな奴に、剣聖というギフトを神様は与えたのだろう?
僕が今までしてきた事は、無駄な事だったのだろうか?
そもそも、神様はいるのかな?
悩み続けて、出た疑問を、孤児院の園長先生に聞いてみた。その結果、次の日僕は、迷宮へ捨てられた。
神様に対して、疑問を抱いた異端者として、処分されてしまった。
寝ている間に、迷宮の落とし穴に投げ捨てる。
口減らしに、ずっと行われていたらしい。僕は、知らなかった。
普通なら、穴から落ちて、そのまま死ぬ。穴の深さは、かなりあった。
下から見て、上は光さえ見えない。その高さか落ちても、僕は死ななかった。
寝ている状態で、助かる確率は、無いはずだった。でも、生きのびた。
穴の下で見つけたのは、同じ孤児院にいた仲間の死体。白骨化していたけど、見覚えのある玩具を見つけた。
僕が、騎士になるといって、訓練に明け暮れている間に、孤児院に何があったのかは知らない。
僕は、色々と知らない事が多すぎた。
でも、これだけは言える。
「神様はいない」
「いるよ」
「え?」
僕の出した答えを、直ぐに否定する声。
「まぁ、君の思う神と言うのと、僕は多分違うけどね」
姿形は見えないけど、存在だけは感じられる。不思議なものが目の前にいる。
「君の想像する、人に都合の良い神様はいない。でもこの世界には神と呼べる存在はいる」
「・・・」
「君が、あそこから落ちて助かったのは、僕のおかげと言ったら、信じる?」
普通の人なら、まず助からない。人の身で、出来ない奇跡を起こすのが神。確か、教会の神父さんが言っていた。
「違う・・・」
あそこから落ちて助かったのは、目の前の存在のおかげではない。自分の力だ。僕の罠は、罠では死なないと言う加護がある。落とし穴に落ちても、僕はなぜか死ねない。ギフトとは、そう言う理不尽な力を持っている。
「そう、君が助かったのは君の力。ギフトは、不思議で、怖い能力。そして、神は理不尽で残酷な存在」
次の瞬間、頭の中に色々な知識が流れ込んできる。膨大な量の、罠の知識。
「ぐ。ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
情報の多さに、脳が悲鳴を上げます。
「僕は、知識のギフトを授かったんだけどね。色々と知りすぎて、処分されてしまったんだ・・・」
「うぎゃが、ぐるるぎゃぁぁぁ・・・」
「全部は無理だけど、ある程度の知識を君にあげるよ。強引だけど、これは死者の罠だから、君は死ねない。罠と言うギフトに関して、僕が知っている事を、刷り込んであげる」
「な、何が望みだ?」
「解るでしょ?」
「・・・」
頭の中を、色々な情報が駆け巡る。
「範囲指定、ここを中心に50メートル」
落とし穴を包み込む広さを指定。
「罠設置、浄化!」
指定したエリアの、いろいろなものを浄化する罠を作成。
「ありがとう・・・」
そう言って、その存在は消えていく。霊体を浄化する罠。そんなものまで、僕は作ることが出来るようになった。
あの存在は、知識と言うギフトの、極上のレベルを受け継いだ存在。それだけで、亜神と呼べる存在までなったけど、それの知識が邪魔になった存在によって、落とし穴に落とされて、殺された。
死後、霊体となってこの場にいたらしい。
罠と言うギフトの知識だけを、僕に刷り込みで教えてくれた。目的は、自分の浄化。
罠と言うギフトは、色々な可能性を秘めていた。
「みんな、消えていくんだな・・・」
穴の底に積み重なっていた死体は、浄化の影響で消えていく。
長い年月を経た遺体は、灰となって消えていく。
比較的新しい遺体も、同じように消えていった。
後に残ったのは、衣服や道具。見覚えのなる玩具も、足元に落ちている。
その中から、使えそうなものを、拾い集める。
鑑定の罠を、設置すると、足元に落ちているものの詳細が、見ただけでわかるようになった。
この罠は、隠し事をしている存在を暴くための罠だ。こういう使い方も出来るらしい。
道具の中には、マジックバックと言う容量の大きな特殊な鞄もあった。
この穴は、迷宮にも繋がっていて、そこで死んだ冒険者の遺物もあり、色々と入手できた。
帝都の大穴と呼ばれ、色々な組織が、同じ目的のために使用していた場所。
死体処理場となっていた場所には、もう一つ、別の意味があった。
巨大な迷宮の入り口の一つ。巨大な、遙か過去に封印された場所。
死体が消えたことで、その迷宮の入り口が出現した。
死体を追加する事で、封印されていた場所。
この奥に、神様と言うのがいるらしい。
それなのに、人は入り口を封印していた。
今先に何があるのか、解らない。罠の能力を使えば、この穴から出る事は出来ると思う。
でも僕は、この迷宮へと、招かれるように進むのだった。
ゆっくり更新予定です。