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第6話 戦闘

俺達が避難したのは亡くなった前国王がまだ中にいるという住居の前。

この町の中ではここが一番安全らしいけど・・。


「王よ、どうか皆をお守りください。兄様を、お守りください」


エイダも、避難してきた皆も一心に祈ってる。

今できることはそれしかないと。

その中で俺は、ただ混乱して、焦って、頭のなかがいっぱいいっぱいで。

今も戦っている人たちがいると思うと俺も何かやらなきゃって思うけど、何も思い浮かばない。

こんなとき、前の王様だったらなんとかしてあげたのかもしれない。

それほどの力を持ってたんだ。

皆を守ると言ってたブラッドさんは今戦ってる。

俺は何をしている?何もしていない。

俺は何を思いあがってた?何も力のないままこの国の王様になろうとしてたのか?


「皆!!」


あれは、さっきブラッドさんについていった獣人さんたち。

皆傷だらけで今にも倒れそうだ。


「大丈夫か!傷の手当てをしなければ!」


「兄様は!?」


「オーガの勢力が予想以上に多く、退けることは不可能だと判断された。ブラッド様は少数の精鋭部隊と共に足止めに残られた。今のうちにこの地を捨てて逃げよと」


「そんな!!」


「今にここにもオーガが来る!今のうちに早く!・・っが!?」


目の前で赤い血が飛ぶ。

ゆっくりと倒れていくその後ろで、不敵に笑うオーガ()がいた。


「見つけたぞ獣共。忌々しい人間のおかげでここを侵略できずにいたが、とうとうくたばったようだなあ。やっと獣臭いここに入ることができたぜえ?」


鈍い刃から赤い雫がしたたり落ちる。

恐怖と絶望に染まる皆の前に、さらに追い打ちをかけるようにどさっと重いものが投げられる。

ぐったりと四肢を投げ出した、血に染まった・・


「兄・・様・・?」


「最後まで抵抗してくれやがってよお?まあ、あの人間の王がいなけりゃこの町なんてこんなもんだ」


ゲラゲラと、不気味に笑うオーガの集団。

鎧に身を包んで、でかい体にでかい武器を手に持った相手に、負傷者と戦えない者達しかいない俺達。

終わった―。


「さあて、狩りの始まりだあ!」


嘲け笑いながら、一歩、また一歩とオーガたちが近寄ってくる。

抵抗する気力もその力もない皆は、逃げることもあきらめたかのようにその場に立ち尽くしている。

死が、近づいていた。


「まず一匹」


最初の見せしめにと近くにいたエイダに向かい刃を振り上げるオーガ。

エイダはブラッドさんの方を見たまま動かない。


「エイダ逃げろ!!」


俺が叫んでもエイダは動かない。


「エイダ!!」


気が付いた時にはエイダの前に出ていた。


「なんだあガキ、一番に死にたいようだなあ。だったら要望通りに殺してやるぜえ!」


ああ、死んだ。

一度ならず二度までも、しかも今度は絶対痛い。

結局王様になれなかったし、神様との約束まもれなかったな。

目の前に刃が来て今までのことが走馬灯のようにかけめぐる。

前の世界での18年間と、この世界での1週間。

そう、1週間だ、1週間しか生きてない。

せっかく生き返ったのに1週間・・。


「1週間しか生きてないのに死んでたまるかあああ!!セミじゃねえんだよ俺はああ!!」


火事場の馬鹿力ってこういうことを言うんだろうね。

直前も直前で刃をよけて後ろにいたエイダをかついでできるだけ後ろに逃げる。


「ほお?抵抗するかガキ。今死んでりゃ楽になれたのによお?」


「確かに圧倒的デッドエンドなこの状況だけど、何もしないで死ぬのはいやだ!」


「何かする気かあ?」


「何もできない!」


「できないんかい!だが人間のガキにしちゃあその威勢、気に入ったぜえ?」


「じゃあ俺に免じて今回は退去していただいて・・」


「まあ結局殺すから意味ねえんだけどなあ!」


「ですよねー!」


はい、今度こそ終わりました。

でも精一杯抵抗したし、これで死んでも悔いはない。

いや悔いは大ありなんだけど。


「あばよガキ!」


逃げた俺を追ってオーガがやっきて今度こそ仕留めるために刃を振り上げた。

逃げ場はない。

さようなら、今世。


『死ぬのはまだ早いのよ』


「え?」


キーンと、耳鳴りのように頭の中に声が響いた。


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