第2話 まずは立候補だ
まぶしすぎる光のせいで目が開けられない。
もはや目を閉じててもまぶしいんだけど。
光の輪の中に入った後は体が浮遊感に包まれた。
ジェットコースターに乗った時みたいな激しいものじゃないんだけど、ああ落ちてるんだなって思えるぐらいの。
どれくらいの間まぶしすぎる光と、浮遊感のなかにいたかな。
なんか、遠くの方から音が聞こえてきたんだけど。
なんの音だろ?声、かな?
だんだんと大きくなってきたんだけど・・。
「うわっ!」
声に夢中になってたらいきなり体が重くなった。
それに足の裏が地面についてる。
あんなにまぶしかった光もないようだからそーっと目を開けてみると・・。
「おお・・。」
人、人、人。
いや、人?
なんか、人にはないはずの頭に耳・・これは俗にいう獣耳というやつでは・・?
え、ここって獣人いるの!?
神様よ、あんたの世界って人間以外もいるのかよ!
というか人間なんているの!?俺以外獣人しかいないんだけど!!
なんか居心地悪いなあとか思ったけど、獣人の皆さんは前方に視線を向けてて俺のことに一切気づいてない。
皆何見てるのかな?
「同胞たちよ聞け!」
!!びっくりしたな何事!?
いきなり前から大声張り上げられたら驚くでしょうが!
「我らが王は崩御された!我らに平穏と繁栄をもたらしてくれた王が、いなくなってしまったのだ・・しかし、悲しみにばかり暮れてばかりはいられぬ!主の遺言により、これより新たな王を決める儀式を行う!」
前の方の高台に立っている凛々しい男の人(人ではないんだけども)が、ここにいる皆に向かって話してるのか。
男の人が言った言葉に涙流す人もいる。
王様が死んだって言ってたな。
そっか、大切な王様が死んじゃったんだからそりゃ悲しいよな・・・ん?王様が死んだ?
神様も友達の王様が死んで新しい王様を探してたって言ってたよな?
それで俺は次の王様に選ばれてこの世界に来たんだよな?
ということは・・・俺が王様になるのってもしかしてこの獣人の国!?
「次の王の選定方法は、生前王より承っている!この中に、我こそが王だというものはおるか!」
なんか次の王様決めてるっぽいし、やっぱりこの国なんだ。
獣人の王様が俺(人間)でいいのかって思うけど・・。
「王の意志を継ぎ、我らの国を治める新たな王になるものはおらぬのか!」
ざわざわざわざわ。
周りからは無理だとか、前王の代わりなんてできないとか、荷が重すぎるとか、そんなネガティブなことばっかり。
ああ、なんかこれ、見覚えあるなあ。
あれは中学1年生の時だ。
新しい環境、新しい人間関係、小学校から上がったばかりで緊張と不安が大きい中、これから1年間のクラスの代表を決めるという一大イベント、学級委員長決め。
誰もがやりたくない、面倒くさい、責任負いたくないって、声には出ないけど顔に出まくりだったなあ。
そんな中で、先生が立候補ある人って言ったとき、案の定誰も手を上げなかったっけ。
でも、そんな空気の中で一人だけ、そう俺だけが手を挙げた時のあの一斉に集まった視線、たまらなく気持ちよかったのを覚えてる。
「そっか、同じだ」
誰もがやりたくないって、手を上げずに顔をうつむかせる中、
「今一度聞く!我こそが王だと、胸を張って言えるものはおらぬか!!」
たったひとり、俺だけが手を挙げて、
「はい!!」
皆から集まるこの視線。
「俺がこの国の王様になります!」
ああ、すっごく気持ちいい!!