ジ・アザー・サイド・オブ・ジ・エンド
誰もいない道の脇にエンドローダーが入っていく。
仮面をした彼はエンドローダーを停めると、少し間を置いてから空を見上げた。
天は澄み渡り、太陽の日差しが空気を熱して、そよぐ風が木々にお喋りを促している。
マシンを降りた彼は装備を無造作に脱ぎ捨てた。
隠れるように停められた車の中から四人の男が降りてきて彼を出迎える。体格のバラバラな四人はずっとここで待っていたのだ。
「もういいのか? 直接挨拶してくればいい」
リーダー格らしき、体の大きな一人が聞く。
「これでいい。ただなんとなくこうしたいと思っただけだから、もう十分だ」
仮面の下にあったのは、どこか冷えた顔だった。
誰かに似ているが、誰かとは違い、顔には傷ひとつなく、また、青ざめた顔色をしているわけでもない。
しかし、整っているというよりは無表情が張り付いたような顔である。それはうそ臭い、偽りの顔なのだ。
「後悔するぞ」
「……オレがここでなにをしたのか、彼らがどんな人だったのか、なにも覚えていない。会うだけ無駄だ」
話しかける男も同じだ。彼と同じように、まるでマネキンが喋っているようである。
淡々と、乾燥した、無味無臭の会話だった。
「なら、行こうか」
巨躯の男が車に向かうのを見て、彼は手に持っていた仮面を捨てた。仮面に反射した太陽の光に反応するかのように彼の右の瞳孔が大きさを変える。
だが、それは生体の動きではない。光度と焦点を調整するための機構が動いただけだ。
今の彼はつけていた仮面のように無機質な存在なのだ。
「ああ、行こう……敵が待っている」
光学素子の瞳の奥に、赤い輝きが見えた。