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四十二話 栗林にクルミを埋めると

 ツバーシャが城なしに爆撃何てするものだから、城なしが、またツバーシャを穴に閉じ込めてしまうかと思ったけれど、そんな事はなかった。


 引きこもりを閉じ込めても、むしろ望むところだと気づいてしまったのかもしれない。


 ツバーシャが持ってきた岩は直ぐには食べないのかな? また半ばまで、めり込んだところで止まってるんだが……。もしかしてじっくり、味わってるのか?


 喉につかえたとかでなければ良いんだけど。


「ラビはクルミ埋めて来るのです!」


 ツバーシャの背中から降りるとラビはさっそく駆け出した。


「ああ、助かるよ。ラビは埋めたところが分からなくなりそうだから、印をつけておいで」


「むむむ。ラビはそこまでドジじゃないのです……」


 そうかなあ。うっかり、忘れそうな気がしてならないんだけどなあ。忘れたら芽が生えてきてしまう。そして、やがて森へ。


「わぁは、薪用の木と木材になりそうな木を分けるのじゃ」


「大変そうだな。俺はそっちを手伝おうかな」


「心配無用なのじゃ。主さまはクルミの木を植えるといんじゃないかのう」


「ああ、それがあったな。栗林の近くにでも植えてこよう」


「それがいいのじゃ。しかし、困ったのう」


「何か問題でもあるのかい?」


「炭を作りたいのじゃが、釜がない。いっそ、火でも吹いて燃やしてしまえば良いのじゃが……」


 ツバーシャにチラチラ視線を送ってないで、直接頼めば良いのに俺に言うのか。二人の仲じゃあ頼みにくいのか。


「ツバーシャ。穴に潜る前に炭を作ってもらえないかな?」


「ふふっ。お安いご用よ。跡形もなく燃やし尽くして見せるわ……」


「いや、跡形は残しておくれ」


 火を吹くのは気分よかったりするんだろうか? そう言えばやたらと色々燃やしたがったりしていた気がする。

 火を吹くって言うのは暴力的な感じがするし、ストレス解消になるんだろうな。


「ルガアアアアアア!」


「迫力があるのう。一瞬で炭になったのじゃ」


「囲炉裏や七輪で使うのにこっちの方が使い勝手が良さそうだ。ありがとうツバーシャ」


 炭火焼きで焼き鳥。炭火焼きで焼き魚。うーん。楽しみだ。


 炭作りを見届けると、俺は栗林に向かった。


 ん? ラビがなにやらそわそわしているぞ? まさか、本当にどこに埋めたのか分からなくなったんじゃあないだろうな。


「どうしたんだいラビ?」


「あっ、ご主人さま! 土に埋めて目印に壺を置こうと思ったのですが……」


「取りに行って戻ってきたら分からなくなってしまったと」


 本末転倒ってやつかあ。しかし、本当に埋めた所を忘れるとは。ちょっと、心配になる。


「んー。土の色がこの辺りが違うから、ここじゃないかな? ほら、棒がスッとはいるし」


「はー。やっぱりご主人さまは凄いのです」


「あはは。また、分からなくならないうちに壺を置くといい」


 しかし、ラビのお手てはまっくろだ。クルミはしつこい汚れがつくんだよなあ。実を剥くのも大変だし。


 まあ、だから土に埋めて腐らせて中身を取り出しやすくする。他には水に浸ける方法があるんだけど臭いが気になる。


 生前一度だけクルミを処理したことがあって、その時は水を使ったが酷いもんだった。だが土に埋めるならその心配はない。


 土には強力な消臭効果があるのだ。


 畑いじりするやつなら知ってるから、大した知識じゃあないが。


「ご主人さまは、何をしに来たのです?」


「クルミの木を植えに来たんだ。ラビはクルミが好きかい?」


「毎日の様に食べていたのです!」


 ウサギなのにクルミが主食とな? まあ、獣人たがらといって、野菜の葉っぱばかりこのんで食べる訳でもないか。


「こうやって……。木を植えて置けば……。いつでも食べられるようになるさ。ふぅ……。こんなもんか」


「ふふっ。ちょっとちょっと木が増えて成長していくのを見るのは楽しいのです」


「そうだな。食いもんの木ばかりだけど、食える方が好きだ。楽しみが多い」


 生前も食える植物にしか興味なかったな。それは子供の頃からずっとだ。給食のオレンジの種や、軒下で食ったメロンやスイカ何かを植えたりね。


 食えるほど育たなかったけど。この辺りもリベンジしたいなあ。


「そろそろ戻ろうか。タマゴもどうにかしないとな」


「ラビが温めるのです!」


「嬉しそうだな。雀はもう一人立ちしちゃったもんな」


「チュンチュン? チチチチ……」



 マイホームに戻ると早速ラビのお腹にタマゴをくくりつけた。


「これで、ラビはまたママになれるのです」


「い、いや、これは一体何をしているのじゃ?」


「タマゴを温めてふ化させるんだ。シノもママになりたい?」


「動きにくそうだからわぁは遠慮しておくのじゃ」


 シノは忍者だしな。身軽じゃないといざというとき困るか。ツバーシャの様にここまでやって来る輩がいないとも限らないしなあ。


「ああそうじゃ。木が手に入ったから何か作ろうかと思うのじゃが何か欲しいものはないかのう?」


「おお、何か作ってくれるのか? そうだなあ……」


 でも必要な時にならないとなかなか思い付かないんだよな。おおよそ、殆どのものは壺で何とかなってしまうし……。


 まな板とか? これも壺をひっくり返して使ってるから、問題ないんだが。ああ、板で思い出したわ。


「洗濯板が欲しいな」


「洗濯板? 洗濯に使うものなのかの?」


「おや? 普及していないのか……」


 結構昔からあるイメージなんだがな。


「板に切り込みを入れて、ぼこぼこした所に洗い物を押し付けて汚れを落とすんだ。あるとちょっと洗濯が楽になる」


「ほうほう。なるほどのう。作って見るのじゃ」


「あと、まな板も頼む。やっぱり、板の方が使い勝手がいい」


 壺じゃ動かしにくいし洗いにくいからな。あった方が良いだろう。ちょっと地味で作りがいが足りないかもしれないけどがんばっておくれ。


「最初は水源しかなかったのに気がつけばだいぶ文明的な暮らしになってきたな」


「ふむ。そう言う割にはまだ先がありそうな口ぶりなのじゃ」


「そりゃあ、まだでっかいのが待ってるからな」


 城が残っている。楽しみにしてそうだもんなあ城なし。しかし、城が城なしに出来てしまたら何て呼べば良いんだろう。


 城あり?


 シロアリ見たいでなんか嫌だなあ──。

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