第4話:偶然
「…きて、起きてください」
暗闇の中に一筋の光が指すように、俺の意識が覚醒していく。
瞼を開けると蛍光灯の光が目を刺激してくる。
知らない天井だ。
白い蛍光灯に同じく白い天井。
見知らぬ白衣の女性。
「早く起きないと遅刻しちゃいますよ〜、まぁもう高校なんですけどね」
高校…?
高校ってことは、俺の転校先の……まぁそれはいいか。
まだ頭が回らないな、変な夢でも見たせいだな。
そうだよ、偶然変な夢を見て、偶然誰かが俺を高校のどこかに飛ばした。
ただそれだけのことだ。
だるい体を無理やり起こす。
先生と思しきその女性が俺の身体を見て赤面する。
俺の腹には包帯が何重にも巻かれていた。
これも夢だ。
偶然ってもんは意外と連続的に起こるもんだなー。
「私は川澄 芽衣。この破紋高校で保健室の先生をしています」
「まぁ薄々そう思ってました」
ここは保健室ってことね。
納得納得。
「現状を把握してないように見えるので教えて差し上げますね♪」
現状か…、偶然死ぬ夢を見て、偶然誰かにこの保健室に飛ばされ、そのときに偶然腹に怪我をしてそれをこの川澄先生に看病された…ってことじゃないくらいは流石にわかるさ。
「昨晩あなたは魔獣の群れと遭遇し、瀕死の重症を負いました。その後、我が校が誇る最高戦力『六柱将』に保護され今に至ります!」
「六柱将ですか…、ということはこの高校の最高戦力と呼ばれる凄い部隊がちょうど死にかけてた俺を偶然タイミングよく助けてくれたってことですかね?」
「そういうことになるわね」
つまり、俺ってかなりの幸運の持ち主ってことか?
死にかけたわけだからむしろ不運か…。
「今日は月曜だから朝イチで全校集会があるの。
翼くんはそこで転校生として紹介されることになってるから、一言なんかお願いね!」
転校初日で全校生徒の前に晒されるわけか。
この風習考えたやつ死ね。