第1話:紋章術
「くそがッ!」
俺の名は、綾辻 翼。
引っ越しに次ぐ引っ越しで元に住んでた街に戻ってきたんだが…。
現在進行形で死の瀬戸際です!!
よりによって魔獣の群れに出くわすなんてついてなさすぎるぜ…。
外観は狼のような個体…、オーソドックスな四足歩行の魔獣だ。
「俺は犬よりも猫派なんだよ…!!」
全国の犬派の皆さんには悪い(厳密にいえば狼科じゃないし、むしろ動物かどうかも怪しいから大丈夫…だよな?)が、倒させて貰うぜ!
死にたくないしな。
両手のひらを魔獣の群れの先頭の個体、多分リーダー格の奴に向ける。
「赤き門よ、我が前に開け」
手のひらの前に赤い魔法陣"紋章"が出現する。
内側の小さい円と外側の大きな円、その間を羅列してる文字が回転してる、簡素なⅠ型紋章だが、魔獣相手には充分だろ。
文字の回転するスピードが上昇するにつれて紋章の輝きが増していく。
力が充填されていくのがわかる。
「炎弾!!」
初級の術式だが、直撃ならひとたまりもないぜ?
赤い軌跡を描いた炎の弾丸が、先頭の個体に直撃する。
ッし!
リーダー格さえやっちまえば、あとは統率の取れない雑魚を片っ端から倒すか、蜘蛛の子を散らして逃げてくれれば尚良しだ。
…ってあれ?
全く慌ててないんだけど?
ってか、リーダー格ピンピンしてんだけど!?
魔獣の目が鋭く光り、一斉に飛び掛ってくる。
死んだわこれ。
半ば悟ったように、突き出していた両手を下げる。
すげーな、周りがスローモーションに見える。
自分に襲いかかる魔獣5体。
そしてその横から姿を現した銀髪の少女。
「斬風…」
少女が西洋刀を一振りする。
緑色に輝いた刀身から、同じく緑色に輝く斬撃が
魔獣を纏めて真っ二つにする。
「あんた、そんなチンケな紋章術で何やってんのよ?」
-to be continue…