表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/31

閑話 : 間違えの先

今回は、シェリー父視点です。

 

 昔から間違えてばかりだ。





 私は幼い頃、記憶力が良く、人よりも勉強ができる賢い子だったらしい。

 そのおかげで沢山の人に可愛がられた。特に、屋敷にいる庭師のお婆さんによく可愛がってもらった。


 仲よかったお婆さんは、たくさん褒めてくれた。しかし私は、それに褒められる回数と自分の結果が見合ってないと罪悪感を抱いていた。

 その罪悪感は、いつしか相手への怒りに変わってしまい、気づいたら鬱陶しさからお婆さんに悪態をついていた。別に彼女の事が嫌いなわけではなかった、少し距離をとって欲しくて言った、いっときの嘘だった。だからすぐに謝ろうと思った。

 だが、お婆さんは想像以上に怒った。図星だったのか、驚きのあまりだったのか分からないが、兎に角すごい勢いでまくしたてられ拒絶された。


 拒絶されても、諦めず追いかけ謝るべきだったのかもしれない。

 しかし私は怖かった、嘘の言葉でこんなに関係が変わるなんて知らなかったのだ。私の発する言葉で1つで、相手に嫌われる可能性があると思うと怖かった。

 そして幼い私は、嫌われる前にこっちから距離を取ればいいのだと考えた。


 それから、周りの人に罵倒と侮辱をし始め、皆は私から距離をとり始めた。初めのうちは、上手くいったと喜んでいたが、徐々に上手くいきすぎてしまったと後悔した。

 誰も彼も私の元から去っていき、私は想像以上の苦痛を伴ったのだ。



 いっときの感情で嘘をつき、いっときの考えで行動を起こしたのは間違った選択だったのだ。そう気付いた時にはもう何もかも終わっていた、遅すぎたのだ。


 前回は諦め、追いかけなくて失敗をしたから、今回は彼らとのよりを戻そうと思った。彼らに嘘だったと謝罪をしに行こうと計画した。

 しかし、思うようにはいかなく、彼らは「あれがお前の本当の姿なんだろう? やっと化けの皮が剥がれたな」と嬉しそうな顔で口々に言った。彼らは、いつも褒められている私を貶めるチャンスだと思ったのだ。






 どの選択を選んでも、上手くいかなった。もう、私は人と関わるのが嫌になってしまった。

 だから今度は本当に『距離を取る』ということを実行した。


 お婆さんについ言ってしまったのが1回目、嫌われる前にこちらからと行動したのが2回目、そして今回だ。

 3回目だからか、人が去っても苦痛なんて感じなかった。仲良くして嫌われるほうが怖いし、自分の時間が増えるのは良いことだろうと思っていたからだろう。



 そうして、人と距離を取る日々を過ごしていた私の前に1人の少女が現れた。

 彼女は、私の悪態を聞いても顔色ひとつ変えず言い返してくるような変な人だった。


 そんな彼女は、私と会って早々に、「あなたは寂しがりやで、お馬鹿さんなのね」と言った。私は、今までそんな事を思ったことなんてないし、彼女が何故そう言うのかわからなかった。


 でも彼女と一緒に過ごすうちにその言葉の意味が少し理解できた。そして、悔しかった。

 颯爽と現れた見ず知らずの少女に、私の蓋をしていた心と、行動理由を見抜かれたからだ。





 そんな彼女は私と結婚し、子を産んでしばらくしたら亡くなった。一瞬だった。楽しい時間ほど早く過ぎるのは本当なのだなと思った。




 妻が必死に産んだシェリーを見て、自分の子供というのは可愛いものなのだなと思った。そして、妻のぶんも大切に育て、守ろうと決意した。

 でも、私に人と接する能力がない事を思い出してしまった。そんな親に育てられた子はどんな子になるのだろうか、シェリーは私をどう思うのだろうか……考えても言葉を覚えたばかりの娘は答えてくれない。


 どんなに仲良くしていても、私が間違った選択をしてしまったら、その時娘は傷つくだろうと思った。

 だから今まで通り初めから距離を取り、こんな親にならないように伝えようと思った。娘の為ならば寂しくはない。娘が私と同じになってしまい、生活に不自由を感じてしまうほうが辛かったのだ。


 ……そんな事をした結果、娘は傷つき、寂しさを感じた。また間違えたのだ。

 私は妻の言った通り『お馬鹿さん』だったのだ。数々の理由を娘の為だと挙げていたが、それらは結局、自分が傷つきたくないという逃げから挙げたものだと気付いてしまった。



 ここまでくると、自分に怒る前に呆れてしまった。何度やっても自分は、正解を引き当てられないお馬鹿な人間なのだと。


 そう考えると、少しだけ気が楽になった。間違えるのが怖いという気持ちは変わらないが、間違えたとしても今更だと思ったからだ。





 ならばもう、私の本当にしたい事をしよう。

 まずは、娘と仲良くなろう。喧嘩したりするかもしれない、拒絶されるかもしれない。それでも、向き合う前から諦めるのは寂しいし、相手を傷つけてしまう。



 自分の気持ちから目を逸らしていたが、私は自分の娘と仲良くしたかったのだ。当たり前だ。娘と仲良くしたくない親など、どこにいるのだろうか。



 たとえ間違えたところで諦めたりなんかしてやらない。

 子供のような考えだなと、自分らしくない思考に、少し笑ってしまった。


父様もシェリー同様不器用すぎる人間です。

いつか、シェリー母の話もしたいですね(希望)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ