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お茶の時間 前編

本日2回目の投稿です。

 

 あんな出来事があったから気まずくなるかもと思ったが、その心配は杞憂に終わった。

 彼の何を映しているか分からない瞳に怯えることもしばしばだが、周りから関係が良好だと思われるくらいには上手くやっている。アルトくんはすこし怪しんでいるみたいだけど。



 そんな私は今、あれからなんとなく恒例となったお茶の時間を過ごそうとしている。


 外の雨の音をぼんやりと聞いて待っていると、ギルバートが部屋に入ってきた。

 彼が私の前に皿を置くと、香ばしく甘い香りがする。今日のおやつはホットケーキかぁ。


 私は鼻歌を歌いながらホットケーキを一口サイズに切り、口に入れた。溶けたバターとメープルシロップが混ざり合い、とても美味しい。

 その後も私の手は止まらなかった。しかし食べているうちに喉が渇いてきた。

 私はホットケーキと一緒に持ち運ばれたミルクティーを少し飲む。


 少し落ち着きほっと息を吐くと何か違和感を感じた。

 その違和感を上手く表現できないでいると、突然視界が歪んだ。


 そして気づけば私は椅子から転げ落ち地面と顔を突き合わせていた。

 しまった。これは痺れ薬…?


 最近安心しきっていたのと、暗殺されるならナイフとかの攻撃手段だという思い込みであっさりと罠に引っかかってしまった。いや、一番の理由はホットケーキだ。あの美味しいホットケーキがいけない。


 私は突然の痺れに混乱したが、痺れを感じたとともに目の前に表示された文字に安心してそんなことを考えていた。

 表示された言葉は『状態異常を回復しました』。フィリップさんに頼んだ暗殺対策の道具の一つで、私のいつものアイマスクに効果を加えたものらしい。暗殺場面で状態異常にかかるなんて想像していなかったから、本当に助かった。


 心に余裕が出てきたので、そっと周りの様子を窺うとギルバートが自分を無表情で見下ろしていることに気が付いた。知っていても実際目の前の人物が自分が暗殺しようとしていると思うと、自然に体が固まってしまう。


 しばらくお互い無言で見つめあっていると、彼は部屋の扉の方向へ歩いて行った。見逃してくれるのかと一瞬思ったが、その考えは違うとすぐにわかった。これはきっと痺れ薬が切れても逃げられないように鍵をするつもりだ。


 どうする、背中を見せているから攻撃できるかもしれない。でももしこれが罠だったら? 

 いや、遠くから攻撃すればきっと大丈夫。


 私はそう信じ、フィリップさんからもらったバレッタを外し、魔法を込めて投げた。その後結果を見ずに窓の方向へ全力で走る。ここは二階なので少し足を痛めるかもしれないが、死ぬよりマシだ。


 バレッタを投げてから数秒と立たずに爆発音が聞こえた。思ったよりも威力が強いけど…大丈夫なの?

 爆発音の想像以上の大きさに思わず足を止める。


 立ち止まり振り返ると、目の前に飛んでくるナイフが見えた。

 その速度の速さに反射的に目をつぶってしまうが、今度は腕輪のアイテムが力を発揮してくれる。


 腕輪から私の体を包むような形でバリアが出来たのが感じられ、それがナイフを弾く。


 バチン


 その音を聞き届け安心して目を開けると、煙の向こうから先ほどよりボロボロになった服を着て、さらに少し血を流しているギルバートが出てきた。

 襲われている側の私が間違えて心配してしまうほどの傷を負ったのにも関わらず、彼は無表情だった。その釣り合わないところはかなり目立ち、ひどく不気味に感じた。


 私が異様な空気に飲まれていると、彼はジャケットの裏からナイフを取り出しもう一度投げてきた。


 今回も反応が遅れてしまったが、腕輪が受け止めてくれた。


 ほっとすると、彼はゆっくり歩きながらまたナイフを取り出し投げようとしていた。

 また腕輪で弾けばいい。そう思ったがこのアイテムを使えるのは永遠ではないことを思い出した。彼はもしかしてそれを狙っている…?


 そう予想してからの行動は早かった。私は手を突き出し氷の盾を作った。いつもの練習より集中できなかった為か、耐久力が低そうな物が出来てしまった。


 カキン


 先ほどより甲高い音が部屋に響き、三本目のナイフは弾かれた。これで腕輪のほうは大丈夫。そう安心したが次に彼が投げたのはナイフではなかった。


 炎。そう気づいた時には私の盾は水に変わっていた。


 ギルバートは、私の前に障害物が無くなった途端に今度は歩くなんて事はせず、こちらに向かって走ってきた。

 どうにかして止めようと思い、足に魔力を込め叩きつける。すると部屋全体に氷の床が広がった。

 突如変わった床に対応できず彼は面白いくらい上手く前に向かって転んでくれた。


 だが、彼のバランス感覚は相当なようで転んでから数秒経ったら立ち上がっていた。

 その立ち上がった勢いのまま上手に床を滑ってくるが、私は普通に歩いて躱す。足に今はほとんど使えない炎の魔法を纏ったのだ。


 何度かその応酬が続いたがギルバートは私の魔法に気が付いたようで、私と一番距離の近い時に同じように炎の魔力をこめた足で地面を蹴り、こちらに襲い掛かってきた。


 彼が今日1番素早くナイフを取り出し、それがバリアに当たった時、弾く音とその音とは別のものが聞こえた。耳を澄ますとその音がだんだん大きく近づいてくるのが分かった。

 ギルバートもそれに気づいたようで、腕に力をこめバリアを破壊しようとしながらも視線は扉に向いていた。


 お願い、早く来て。


 私は無意識にそう願っていた。その音が誰のものか言われなくとも分かっていた。


 だがこのままだとバリアの効果がもたない。そう思い氷のナイフを作って応戦した。

 もちろん、力は圧倒的に向こうが強いのでバリアの速度を遅くする事しか出来ない。




 数分にも数十分にも感じられたその時間は、部屋の扉を突き破る氷の魔法と彼の声で終わりを告げた。


「姉さんから離れてくれないかなぁ、ギルバート」



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