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能ある鷹は爪を隠す

 

 朝起きたが、全く寝れた気がしない。

 もしマリアンナちゃんが転生者ならば、私の存在を知っていて殺そうとして彼をよこしたかもしれないと考えたからだ。普通の執事に暗殺なんて出来ないけど、なんとギルバートには元暗殺者という肩書きがある。執事という要素が強すぎて忘れがちである。

 自分の身の安全考えるならば、彼を手元に置いておくのが一番安全なのに、なぜ私のところに連れてきたのだろうか。そんなに私を亡き者にしたかった…?



 答えの出ない問題にモヤモヤしているが、こういうのは最悪の可能性を考えて行動するのがいい。

 暗殺されるかもしれないからその対策を考えよう。

 でもそもそも暗殺ってどうやってするんだろう。今回ばかりはドミニクに聞けないしなぁ。





 私はまず、いい考えが浮かびそうな師匠に聞いてみることにした。


「もし師匠が誰かを暗殺するとしたらどうしますか」


「随分物騒な質問だな。お前誰かを殺したいのか? やめろよ? 暗殺の実績を持つ弟子とか怖くて持ちたくない」


 師匠は私の言葉に戸惑ったように見えたが、まばたきした次の瞬間にはわざとらしく体を抱いてこう言った。


「違いますよ! 私じゃないです!」


「ほう? わたしじゃない?」


 私はその動作に少しイラっとしたので反論したら、師匠は周りに暗殺する(正確にはされる)人がいることに目敏く気が付いたようだ。

 かまをかけているかもしれないからまだバレてはない、と思いたい。


「まぁ誰かは分かっているんだけどな。あいつだろほら新しい執事のギルバート」


 え、なんで? 私がそんな分かりやすいの? いやいや普通顔色だけでそんな事分かるわけない。じゃあどうしてだ?


「なんでかって顔してるな? あーゆーやつは雰囲気で分かるんだよ。手練れであればあるほどその気配を隠すのは上手くなるんだが……あいつはまだまだだね」


 驚いて固まっていると師匠はその言葉に補足してくれた。たとえそのことを知っていても実際には暗殺者がいるなんてわからないと思うんだけど…。


「この前に限らず、師匠って凄いんですね…」


「今更気づいたのか? 遅い、遅すぎる。もっとはやく俺の偉大さに気づくんだな」


「そういうところ良くないと思います」


「……真面目な話、強いやつの空気ってのを感じ取れるようにしておくのは必要だと思うぞ。お嬢様である弟子に言うのはどうかと思うが、もともと強くなりたいってことで俺が呼ばれたわけだしなぁ」


 師匠はふざけたりサボることが多いから、色んな人が勘違いしているけどかなり真面目だと思う。お嬢様だからって手加減したり遠慮をしないで指導するのはなかなかできることではない。


 話が大分脱線してしまったな。でも師匠はギルバートが暗殺者だと分かっているみたいだから話が早い。


「えーっと、それでどうすれば暗殺を防げると思いますか」


「お前があのギルバートってやつの興味をひければいいと思うぞ」


「興味? 興味を持たせれば殺されないんですか」


「そうだ。基本的に暗殺者は気まぐれだからな。好意的な感情を持つと殺すのをやめる。依頼の無視とか結構あるぞ。適当かもしれないが、そうでもしないと疲れてしまうからな」


 さっきから師匠は暗殺に詳しい。普通はこんな知識を得る機会なんてない。


「師匠は暗殺者の知り合いでも? それとも師匠は暗殺者だったんですか?」


「それを俺に聞いてもいいが、その場合俺もお前に何故ギルバートが暗殺者だと気づいたか聞くぞ」


 それは聞かれたらとても困る。ということは師匠も聞かれたくないということだろうな。

 ……たまたまそうなったのかもしれないけど、私が本来あり得ない情報を持っている事に気づいてもすぐに指摘しないで、こういう駆け引きの場で聞くって怖くない? 師匠は頼もしいけど敵に回したくない。回さないようにしよう。


「いまの質問はなかったことにしてください」


「興味をひいても殺してくる変わり者がたまにいるし、興味をひけない可能性はあるかもしれないから対策を考えておこう」


 私の言葉に師匠は頷くだけにとどめ、対策を考えを考えることを提案してきた。

 もともとその予定だったので、そのあと2人で多くの可能性を考え、それに対する技を訓練した。



 あれ、私の穏やかな日常は? いやよく考えれば今までそんな穏やかでもなかったな。いつも通りだ。こんなドタバタしているのが日常ってどうなの私…。


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