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いけめんとは何か

 私はギルバートの入れた紅茶を優雅に飲みながらも内心は動揺していた。

 彼を前世の乙女ゲームつまりシーラブデで見たときは、ヒロインであるマリアンナちゃんの執事をしていた。つまり私の執事になっているのはおかしいのだ。


 何が原因なんだろう? いままでは多少は違ってもおおよそ知っている展開になっていた気がするんだけどなぁ。

 ゲームで眼帯なんてしていなかったし一体彼に何があったんだろう。

 ……眼帯? それだ! 聞いたらなんかわかるかもしれない。


「そういえば、ギルバートが左目に付けているそれはどうしたの?」


「あぁ、これは前のお嬢様からいただいたんですよ。昔、前髪で怪我をしていた目を隠していたんですけど、それを見て髪が目に入って痛いだろうからと」


 ほとんどが事実だけど、怪我をした目という部分は嘘だなと前世の知識を持っている私はわかった。

 でも知っているのはあり得ないから驚いたふりでもしておこうかな。気が進まないけど。


「え! 怪我したの! 大丈夫?!」


「大丈夫ですよ、今は醜い姿なだけで見えますから」


 彼の困ったような笑顔を見て、私はなんとも言えない気持ちになった。

 彼が言った言葉に対してにではない、彼が嘘をついていることについてだ。初対面の私に嘘をつくのは普通なんだけどモヤモヤする。



「そういえばあの方は私のこの姿を見て『まぁまぁいけめん』と仰っていたのですが、お嬢様は『いけめん』とは何かご存知ですか?」


 彼はふと思い出したようでそう言った。イケメン? 私は知ってるけど、この世界にイケメンって言葉存在したっけ? ギルバートが知らないだけ?

 何はともあれ知っていると答えるのはやめておこう。


「ううん、知らない。どういう意味なんだろうね?」


 すっとぼけた。うん、余計なことは言わないほうがいいよね。





 私はその後アルトくんと父様に「イケメンって何か知っている?」と聞いてみたが、二人からは知らないと言われた。


 ………面倒ごとの予感がする。

 気が重いが、ここで問題を後回しにしない為にギルバートに前のお嬢様の名前を、スティーに会った際はイケメンとは何か聞くことにした。

 頭がいいスティーにも分からなかったら不味い。確実に面倒ごとになる。





 結果、スティーは知らなかった。ついでに眼帯についても聞いたがこちらも同じ。

 そして前のお嬢様の名前はマリアンナだそうだ。嘘の可能性もあるけど、今回はたぶん合ってる。

 なんでかって? ヒロインも転生者って展開よくあるからね!!


 またしても訪れた面倒ごとに疲れたので、私は部屋に戻ってとりあえず寝た。こういう時は一度気持ちをリセットするのが大切なのだ。


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