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新しい友人 後編

二話連続投稿です。引き続きアルト視点。

 

「……」


 部屋に入ってからしばらく経ったのだが、2人とも一向に話出さず空気が重い。

 そう思ったのだが、隣の姉を見ると満足そうに笑っていたのでこの空気の重さは王子からだけのようだった。


「シェリー嬢。なんでこうなったのですか?」


 王子が自分の重い空気に耐えられなくなったのか、詰まった息を吐き出すかのように話した。


「たまにはこちらから意地悪をしようかなと」


「なるほど。 じゃあ俺はその期待を裏切らせてあげるよ」


「「えっ」」


 先程の重い空気が無かったのように、軽い調子でそう言うと、途端に纏う空気が変わったのに気づいた。僕らはその変化に驚き声を出すと、王子は先程の整った笑顔ではなく悪戯っぽい笑顔で微笑んだ。


「リーは俺が慌てると思ったみたいだけど残念だね。彼なら大丈夫だ」


 僕には全く何の話をしているのかわからなかったのだが、姉には分かったようで不満そうな顔をしていた。


「からかってたの?」


「もちろん。困ってる彼と楽しそうなあんたが面白くてついね」


 僕はこの発言を聞き、雰囲気が変わった彼に対する評価を下げることを決意した。


「アルトくんごめんね」


「あ! ひぃえ、大丈夫です!」


 僕が決意を固めたと同時に声を掛けてきたので変な声が出てしまった。なんでこんな計ったかのようなタイミングで声を掛けてくるんだよ!ビックリしたじゃないか!


「アルトくんがこんなに驚いたの初めて見たかも……」


 話しかけられ動揺するという僕の失敗を見ていた姉は、とても輝かしい笑顔でそう言う。とてつもなくムカついたので睨んでおいたが、全く効いてなかった。


「……君も素の俺を受け入れるんだね」


 その一連の流れを眺めていたらしい王子は、少し考える仕草をしてから、僕を見て呆れたようにそう告げた。


「? 別に拒否する必要もないので」


「そうじゃなくて、噂と違って驚かなかった?」


「驚きましたけど、今の王子の方が人間味があるので少し安心しました」


 そう言うと彼は瞳を大きくして驚いた様子を見せた。それを見て、自分が普段の王子は人間らしくないと言ったことに気づいた。


「あの…すみません。失礼なことを言いましたよね」


「いや、とても嬉しいよ。ありがとう」


 言うと同時に僕の頭をかき混ぜるように撫でてきた。鬱陶しかったので手を払いのけたかったが、相手は王子なので渋々受け入れた。


「どう? 私の弟とても可愛いでしょ?」


 僕と王子のやり取りがひと段落したのを見た姉が、胸を張って王子に告げた。

 可愛いと言われたのと、それが自分の成果だと宣言しているところに腹が立ち、今日何度目になるか分からない睨みを投げるという行動を行なったが今回も無駄に終わった。


「そうだね。羨ましいよ」


 事も無げに言う王子に呆れた視線を送りそうになったが、ギリギリのところで耐えた。



「そういえば、スティード王子と姉さんは随分仲が良いんですね。驚きました」


「まぁ3年の付き合いだからね」


「もう、3年か。懐かしいね」


 居心地が悪い話題を逸らす事に成功し、安心すると2人は思い出話をし始めた。


「俺に真顔で挨拶したのは後にも先にもリーだけだよ」


「まだ覚えてるの?」


「もちろん、君との運命の日だからね」


 こんな美形にそんな事を言われると、凄く恥ずかしいだろうなと思い姉を見ると、とても胡散臭そうな顔をしていた。


「姉さん、顔」


 思わず指摘したが、その顔は全く変わらなかった。


「スティーのそういうところ、むかつく」


「それはどうも」


 僕の睨みを軽くかわす姉のように、彼はこの発言を受け流したので、僕は普段の仕返しができた気がしてとても楽しくなった。


「リーあのさ、アルトくん借りていい?」


「聞かれる前からスティーは話してたし、いまさら許可取らなくていいよ。というかいくら姉だからって私に許可取らなくていいよ」


 姉は珍しく心底呆れた様子で王子に告げ、気を利かせたのかお茶を取りに行くと部屋から出ていった。


 すると、王子は何故かとても緊張した様子で近づいてきた。こちらにもその緊張が伝わり姿勢を正した。


「あの、アルって呼んでいいかな」


「どうぞ」


 身構えていたが全く予想外の質問をされ驚き、思わず素っ気ない返事をしてしまった。

 それに全く気づく様子もない王子は更に驚きの発言をしてきた。


「友達になってくれないかな?」


 思わず溜息を吐きそうになった。本人は気づいてないだろうが、もともと王子である彼の要求を断れるわけがないのだ。


「いいよ。よろしくスティード」


 一瞬、罠かと疑いもしたがその考えはすぐに消えた。姉のあの雑な対応を咎める気がない彼は、僕が敬語をやめたところで断罪したりはしないだろうと思ったのだ。


「……意外とあっさりだね。あ、スティーでいいよ」


「姉のあの接し方を見るとね。はいはいスティーね」


「その対応あんたの姉より酷いよ。俺王子なんだけど」


 嬉しさと悔しさと困惑が入り混じったかのような複雑な表情をした彼はとても王子には見えなかった。


「知ってるけど、今のあなたはとても王子とは思えないよ。最初に会った姿はとても王子に見えたのに不思議だな」


「そっか…」


 僕の言葉を聞きながら頷く彼を見ていると、不意に聞きたいことができた。


「スティーってさ、姉さんの事好きなの?」


「えっ! なんでそう思うの!」


 突然の質問に焦ったようだ。その今までにない動揺っぷりに自分の予想は当たったなと確信した。


「姉さんと楽しそうに話しているのと、姉がいる時といない時の違いからそう思った」


「リーがいる時といない時そんなに違う?」


「そうだね。いないと少し子供っぽくなるかな。無意識にカッコつけてるんじゃない?」


「カッコつけてる? 俺が?」


 僕は思った事を言っただけだが、全く予想外のようでしばらく唸りながら考え込んでいた。





 その後、姉が僕らが友人になったと知るとまた権力で脅したのかと怒り始め、それに対し今回は全く無意識だったという姉にとって火に油を注ぐ発言をスティーがして、収拾が大変だった事を述べておこう。



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