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新しい友人 前編

アルト視点です

 

 ある時姉に婚約者がいると知った。この家に来てから何週間か経ってるのに全く知らなかった。


「姉さん。何故、僕に婚約者いること言わなかったんですか?」


 僕は、ここにきてから変わった一人称と普段つかない敬語をつかい姉を睨んだ。


「話す機会がなかったし言う必要もないかなと思って」


 いつもと話し方を変えることで姉を怯ませられるだろうと思っていたのだが、僕の顔を見た姉は何故か瞳を輝かせた。

 今の発言に楽しくなるようなものは何もないはずなのだが……。

 このように、僕の姉はよくわからない行動をよくする。もう慣れてしまったけどね。


「そう、まぁ過ぎたことはいいや。で?どんな人なの」


「腹黒王子」


 気を取り直し相手の事を尋ねると、姉は少し不満そうに告げた。

 言葉から相手は美形だけど性格は悪いという事、この婚約をよく思っていないという事はわかった。


「……姉さんはその婚約に反対なんだね?」


「うん。最近は友達としてならいいけど、結婚は嫌だなって思ってる」


 直球で聞くと、はっきりと嫌だと返事をもらう。嫌いなものがなさそうな姉が、こんなにはっきりと拒否するとは、そんなにひどい相手なのだろうか。








「お嬢様! スティード王子がいらっしゃいました」


 その後しばらく姉と雑談していると、彼女の執事であるドミニクが駆けてきて王子が来たと告げた。王子……?


「姉さん。なんで王子が来るの?」


「え? さっき、婚約者って言ったよ?」


「婚約者…? え、本当に王子なの⁈ 例えとかではなく⁉︎」


「え? う、うんそうだけど」


 僕は、王子みたいな綺麗な顔をした婚約者だと思っていたのでとても驚いた。姉は驚いた僕に驚いているようだが、普通は本当に王子だとは思わない。


「この国の王子ってスティード王子だよね? とても聡明で笑顔がとても美しくて、周りを癒すのと薄い赤の髪色から『ユーラトス国のサンゴ』って呼ばれてるあの?」


「美しい? 癒す? 誰それ…」


 本当に王子かと確認したつもりだが、とても胡散臭そうな顔をされた。


「え? 違う?……じゃあ誰なの?」


「ううん、スティード王子だけど……王子なんだけど違うんだよ…」


「ごめん、姉さんまったくわからない」


「うーーん。会えばわかる!」


 姉は説明を諦めたらしく、両手を腰に当て足を肩幅に開いて待ち構えるポーズをとった。迎えに行かなくて良いのだろうか。







「こんにちはシェリー嬢。遊びに来ました」


 迎えに行こうと提案したのだが、姉は待つと聞かなかったので、一緒に待機しているとドミニクと共に王子がやってきた。


「こんにちはスティード王子」


 姉は彼と挨拶を交わし、久しぶりに会ったからか軽く近況報告の様なものをしていたが、僕の頭には何も入ってこなかった。


 僕はこの時彼の雰囲気に圧倒されていた。姉と同じ年なので僕の1つ上のはずなのだが、とても大人びて見えるのだ。

 涼しさを感じる彩度の低い赤の髪と、吸い込まれるような水色のジャケットからは彼の『ユーラトス国のサンゴ』というあだ名が思い出された。



「こちらの方は?」


 姉と話している最中、僕の視線に気づいたようで、王子はこちらに視線をよこした。


「聞いてないんですか? 私の弟のアルトです」


「弟…?」


「はじめましてスティード王子、先日からシェリー姉さんの弟になりました。アルト・アルバートです、よろしくお願いします」


「なるほど、よろしく。じゃあシェリー嬢いつものようにお話でもしましょうか」


 彼はいまの発言だけで理解したようで、僕に軽く挨拶を返し、視線を僕から姉に戻した。


「アルトもどう?」


 王子の『いつものように』の中に僕は含まれていないはずなのだが、それに気づいていないようで姉は僕を誘った。


「では、お言葉に甘えて。よろしいですか?王子」


 本当は断った方がいいと思うのだが、この王子に対する好奇心が勝ってしまったので一緒に行くことにする。


「あぁ」


 突然の僕の参加に戸惑うかと思ったが、予想に反してとても楽しげに王子は微笑みながら許可してくれた。









「姉さん」


「何?」


「いつも2人きりで話してるの?」


「うん、そうだけどどうしたの?」


「……後で話すよ」


 ついて行くと、姉と王子は誰も連れずに当たり前に客室に入っていったので驚いた。

 婚約者とはいえ、危機管理が甘い姉に後で色々言わなければならない事に溜息をつきそうになった。


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