アルトとの初会話
父様はアルトくんを部屋に案内したのち、私に「孤児院で1人だった。よろしく頼む」と言った。
これを私なりに意訳すると、「孤児院に友達がいなかったのでシェリーの方から声をかけてくれ」となる。
というわけで早速私は、アルトくんの部屋に行くことにした。
父様に言われたのもそうだが、ゲーム知識との相違が気になる。
辿り着き、緊張を和らげるための深呼吸を一つして、部屋の扉をノックした。
「…はい」
「シェリーだけど、入っていい?」
「……どうぞ」
彼は少しの沈黙の後、ぶっきらぼうに入室許可をだした。
うん、やっぱり私の知ってる彼とは違う。
「お邪魔しまーす」
まだほとんど何も部屋に入ると、アルトくんはベッドに大の字になって寝っ転がっていた。
さっきも会ったとはいえ、ほぼ初対面の人の前でよくそんなにリラックスできるなと思う。
「アルト…あの、ちょっと話してもいいかな?」
とりあえずベットから1番近い椅子に座って恐る恐る声をかけてみた。
緊張の為か、アルトくんと呼びそうになってしまった。くんを付けても問題はないと思うが、貴族が名前にくんを付けて人を呼ぶイメージがないので、呼び捨てをするように心掛けている。
「なに?」
彼はめんどくさそうな声をしながらも、律儀に起き上がって話を聞く体制に入った。
「いや、特に用事があるわけじゃないんだけど。お話ししたいなぁと」
「俺は話すことなんてないけど」
俺!? アルトくんは確か私って言ってた気がするんだけど…。
「すっごい変な顔してるけど」
「え!! そうですか?」
思わぬ発言に混乱していた時に、急に話しかけてきたので思わず敬語になってしまった。
それにしてもそんなに変な顔をしていたのだろうか。
「うん。こーんな顔してた」
目の前の彼は、人差し指を眉間に当てて険しい顔をして見せた。
私の真似をしたアルトくんが凄く可愛かったので見つめていたがその時間が長かったからか、先ほどより少し不機嫌そうに話しかけてきた。
「変な顔させといて無視しないでくれる?」
「なんて返事すればいいかわからなくて…」
「そう」
彼はそれきり私に興味をなくしたのか、再び部屋に入ってきた時と同じように、ベッドに倒れこんだ。
「………」
会話が終わってしまった。
いや、そもそも彼は話すことなんてないのに私に付き合ってくれたのだ。長く続いた方だと思う。
でも仲良くしようと意気込んだのに、こんなすぐ会話が終わるとなんともやるせない気持ちになる。
だけど話したくない人とそんなにたくさん話したくはな……
「百面相?」
私が様々な思いを巡らせていると、寝転がったまま彼は疲れたような声で話しかけてきた。
「え?」
「話してもないのによくそんな顔の筋肉使えるね。疲れないの?」
さっきは驚いたから変な顔になったものだと思ってたけど、もしかして感情が顔に出やすくなってる??
そういえばあの王子にも顔の表情がどうこうと言われたような気が…。
「あんたみたいな人が姉なんて大変な事になりそうだ…」
原作のままの私だときっとさらに大変だったね、今の私はまだマシなほうだよ。
という感想を抱いたが、彼には全く意味の分からないことなので曖昧に微笑んでおいた。




