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突然の訪れ



「こんにちはシェリー嬢。遊びに来ちゃいました」


 スティード王子と婚約した数日後、私の屋敷に王子がひょっこりと遊びに来た。何故だ、約束なんてしてないはずだ。


「こんにちはスティード王子。急にどうしました?」


「遊びに来たと言ったじゃないですか。とりあえずお邪魔しますね」


 王子は、ドミニクやメイド達が困惑したのを見て、玄関で立ち話は良くないと思ったのかそう言った。たぶん玄関から移動しても、困惑度は変わらないと思う。


 それにしても、遊びに来たとは建前で、実は何か用事があるのかと期待して質問したが、何もないようで残念だ。



 せっかく来て頂いたが、彼は苦手なので早々にお帰り願いたい。……私のせいで今は婚約者という立場になっているので、そんなこともちろん言えないが。

 でも、好きな人を早く作ってね! とは遠回しに早く言いたい。


「シェリー嬢どうしました?」


 王子を客室に案内しながらそんな事を考えていると、彼は何かに気づいたのか、にこやかな笑顔をこちらに向けてきた。笑顔だが目が笑ってないように見えるのは、私の幻覚だろう。


 そういえば、彼は外にいるせいか猫かぶりモードだった。笑顔で何かを訴えられるのは怖いので、猫かぶりモードを早く解除して欲しい。


「いえ、別に」


「そうですか?」


「そうです。……着きましたよ」


「ありがとうございます。そうだシェリー嬢、2人で話したいことがあるんですけどいいですか?」


 凄く嫌だったが、彼に無言の圧力を受けるほうが嫌だったので、ドミニク達に部屋を出るように指示した。





「これでいいですか?」


「うん、ありがとう。あーこれでやっと普通に話せるよ」


「良かったですね」


「本当にね、やっぱりこっちの方が落ち着くよ」


 彼は心の底からそう思ってるようで、1つふっと息を吐いた。


「では、普通に話せる城は落ち着く場所ですか?」


「さぁ、どうだろうね」


 世間話の一環として聞いてみたが、聞いた途端彼の表情が歪み、曖昧な言葉で返されたのでこれは触れてはいけないものだと思った。


「この前、城でお会いした時にいたメイド達には普通に話す姿を見せていましたよね?」


 この前のメイド達の前では、普通に話していたので彼女らは信頼できる人だろうと思ってそっちに話を移したが、彼の顔は更に暗くなった。


「……この前部屋で話すときにいたのは、俺が生まれたときから仕えてた人達で、彼女らは俺に対して仕事以上の気持ちは持ってないよ」


 彼は、何か吐き出すように重々しく話した。なんて声をかけるべきか迷ってると、王子は今までの重い空気なんてなかったかのような笑顔で口を開いた。


「それよりもっと楽しい話をしようよ。ほら、俺に何か聞きたいこととかないの?」


 彼は私が微妙な気持ちになったのを感じ取り、話を逸らしたようだ。なんて聡い子なのだろうか。城の環境が彼にそうさせたのだとすると寂しい。これから少しは優しくしようと思う。


「では聞きますけど、スティード王子は今日1人でいらしたのですか?」


 彼が明るく話しかけてきたのに合わせて、私も明るく会話を続けた。


「ちょっと待った。それより前にさ、そのスティード王子ってのやめない?」


「それは…」


 それは、よくあるタメ口で話そうぜ! ってやつだろうか。急に投下された爆弾に私はひどく混乱した。


「スティーって呼んでよ」


「ス、スティー王子!」


 どうするか迷ったが、どうせ呼ぶのならできる限り軽いステップで踏みとどまろうと努めることにした。


「…………」


 だがまったく効果がなかった。ならこれはどうだ!


「スティー様!」


「…………」


「あの、スティー様…」


「…………」


 呼び捨て以外許さないらしく、ずっとこちらを見つめている。もうどうなっても知らない!


「スティー!」


 半泣きでやけくそに名前を呼んだら、彼は満足そうに頷いた。


「よく言えました。あとその堅苦しい喋り方もやめてくれると嬉しいな」


 よく言えました? もしやこれは子供扱いされてるのか? 無理やり名前を呼ばせたうえに、子ども扱いをされてイラついたので、仕返しのつもりで彼の言葉を最後まで聴き終える前に、タメ口で挨拶した。


「よろしくね、スティー! これからよろしくね!!」


 私がしてやったりという顔をしていると、予想が裏切られたのか彼は驚いた顔をした。だが、それはほんの一瞬で、すぐに今日1番の笑顔になった。

 それを見た私は、また衝動的に行動してしまったことに気づいた。これは乗せられたのだろうか。


「今のは作戦?」


「どれが?」


 彼は、本当にわからないのか首を傾げた。今のを無意識にやったのなら、私の彼に対する苦手意識がさらに深まる。さっきの優しくしようという思いはこの数分で消え去った。


「…なんでもないです」


「あ! さっきの質問忘れてたけど、俺は今日1人で来たよ」


「それ周りの人が許可したの?」


 それを許可するとはこの国大丈夫かなと思ったが、次のスティーの言葉で別の方向に不安になった。



「え? もちろん抜け出して来たけど?」


 これはつまり今、城は大騒ぎということだ。


 ……今日は長い1日になりそうだと思い私は頭を抱えた。



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