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婚約者

 

 距離を取ると決めたが、礼儀はきちんとするべきだ。


「失礼しました、大丈夫です。シェリー・アルバートです。こちらこそよろしくお願いします」


 とりあえず真顔で無難な挨拶を返しておいた。表情が乏しい子供でいれば、興味を持たれないと思う。

 私だったら、真顔の子供と関わりたくない。


 私が少し素っ気なく返事をすると、スティード王子は少し考える素振りをして、口を開いた。


「…私何か悪いことしましたか?」


「何故?」


「笑顔ではないから…ですかね?」


「笑顔じゃないと不味いのですか?」


「いえ、そんなことはないですよ?」


 すると彼は、何を思ったのか顔を近づけて目を見つめてきた。

 え、何? 急にどうしたの?! そんな真顔で見つめないでください、恥ずかしいんだけど!


 端正な顔に見つめられ恥ずかしくなったのを、悟られないように目を逸らそうとしたが、それより先に王子が両手で顔を抑えてきて逃げられなくなった。

 ひぇぇやめて! 近いよ近い!


「こっち見て?」


 彼は首を傾げ、可愛らしく微笑んだ。


 前世で男子と話すことが少なかった私は、キラースマイルにやられ、口をぱくぱくさせるだけになってしまった。末恐ろしい、本当に同い年の子供だろうか。


「っぷ、ふはは! あんた面白いな!」


 私の行動がツボにはまったのか、王子は急に爆笑し出した。爆笑で気が抜けたらしく、年相応な顔と言葉遣いになっていた。


「……なにが面白いのですか?」


 彼の爆笑により、距離が離すことができた私は冷静を取り戻した。

 すると面白いと笑われた事が、不愉快に思えてきたので不機嫌な顔で尋ねた。


「あーいや、ごめん。そんな怒んないでよ。からかった時の反応が、意外すぎて笑っちゃっただけだって」


「そんな意外でしたか」


「うん、凄く」


「…口調変わってますけどいいんですか?」


「あんたも顔の表情崩れてるけどいいの?」


 ニッコリと挑戦的な笑顔で、目の前の王子は言いやがった。真顔で挨拶したのも、その表情を崩したのもお前せいだと言いたい。言わないけどね。


「別にいいです」


「ふぅーん……。ねぇ、なんで初め笑顔じゃなかったの?」


「忘れていたからです」


「そんな事ないでしょ? 普通王族に会うときは愛想良くしようとか思うでしょ? 俺が言うのも変だけど」


「いえ、そんな事思いませんでした」


「変わってるね」


「……」


 そんな発想が思い浮かぶ君の方が、変わってるぞと言いたい。4歳児とは思えない。


「うん、決めた。君さ、俺の婚約者になってよ」


 王子は、何の前触れもなく婚約者になってと言った。どうしてこうなった。


「スティード王子は、わたくしよりも良い方と巡り会えると思います。それにわたくし達は、まだ出会ったばかりですし…」


 勝手に話が進む前に、遠回しでお断りだと言った。何度も言うが君とは、よろしくしたくない。


「そう? 俺、君は運命の相手だと思うけどな。あんた以上に面白そうな子とは、なかなか会えないしね」


 王子は、嘘か本当かわからない顔でそう言った。運命と実際に言う人は初めて見た。恥ずかしくないのだろうか。


「いえ、まだまだわたくし達は子供ですし、これからの人生もっと長いではないですか。そう簡単に諦めてはダメだと思うんですよ!」


 このままだと、流れをもっていかれそうだと焦り、つい熱弁してしまった。

 私の熱弁を、王子は笑顔で頷き、聞いていた。勢いで熱弁したが、しっかり聞いてもらえたようで安心したら、王子は言った。


「まぁ、王子である私のお願いを断れるわけないんですけどね?」


 見惚れるような綺麗な笑顔。しかし、今の私には悪魔の笑顔にしか見えなかった。


「……また、からかってますか?」


「少しここまでのやりとりではからかったけど、今の言葉は本当だよ。断らせるつもりはない」


「何故ですか?何故わたくしを?」


 深く考える前に尋ねていた。

 こんなに大人びた彼が、どうして初対面の私を選んだのか理解できなかったのだ。


「さっきも言ったけど、運命だと思ったからだよ」


「…わたくしは運命など信じません」


 運命。さっきは受け流したが確かに、前世のゲームとかの話をすれば運命だろう。

 でも、私はそんなものを信じたくない。未来が決まってるなんてつまらなすぎるし、悲しい。


「そうなんだ。でも、俺は信じてるし、あんたを婚約者にしたい。ダメかな?」


 王子は断れないと言いながらも、もう一度ご丁寧に尋ねてきた。

 それが私に選択を委ねさせてくれたものなのか、私にYESと言わせたいからなのかは、わからない。


「………いいですよ」


 彼がどんな意図を持って私に、この疑問を投げかけたのかはわからない。断る事もできたかもしれない。でも私は承諾した。正確に言うと、捨てられそうな子犬みたいな顔で聞かれて断れなかったのだ。






 帰ってから後悔した。時間を元に戻したい。

 よく考えれば、保留にする選択肢もあったかもしれないのに、私はなんて迂闊なことを…。



年齢よりも、大人びた二人の会話でした。

こんな4歳児いたら、ちょっと嫌だなと思いながら書いてました。笑

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