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コロンシリーズ異聞

LUNA:???? -A PIECE OF THOSE DAYS-

作者: 三角まるめ

※この作品は志室幸太郎様主宰のシェアード・ワールド小説企画「コロンシリーズ」参加作品であり、拙作「LUNA:2016」のスピンオフ作品になります。

 CHAPTER EXTRA:「ひとりじゃないだろ。」


「君へのプレゼントだよ、ルナ」

 そう言って研究員の男は自分の左肩に乗っている赤い鳥のメカを示した。

「……?」

 ルナは訳がわからず首を傾げる。

「プレゼント? 私にですか?」

「ああ。君が寂しそうに見えたから、話し相手を作ってあげたよ。ガルダっていうんだ」

「ヨロシクナ」

 機械で作られた音声で一言喋るとガルダは彼の肩を離れた。

「……それじゃ、仲良くするんだよ」

 男は出て行き、部屋にはルナとガルダだけが残された。

「……あ、よろしくね」

 パタパタと目の前に滞空している鳥を一瞥した彼女はベッドに乗り、壁に背を預けて縮こまる。自室にいる時はほとんどこうして過ごしていた。

「……何ヤッテルンダ?」

 不審に思ったのかガルダが尋ねる。

「何って、何もしてないよ?」

「オ前、イツモソウシテルノカ?」

「うん」

「ハッ! 暗イ奴ダナ」

 馬鹿にした様な笑い声を出すとガルダは部屋の中を飛び回り始めた。

「別に暗くないよ。これが普通だよ」

「ズイブンツマラナソウナ顔ヲシテルンダナ」

「つまらなくないよ。何も考えてないだけ。思考を働かせると熱が溜まるし、その分エネルギーも消耗しちゃう。プログラムを休ませてるの」

「ソレガツマンネーンジャネーカ」

「……」

 ガルダの言葉の意味がよくわからなかったのでルナは無視する事にした。その後もガルダはずーっと翼を動かして彼女の周りを飛んでいた。ややうるさい。

「……ごめん、静かにしてくれない? センサーがいちいち反応しちゃうんだけど」

「ソウハ言ッテモ退屈ナンダヨ」

「……退屈……する事が無いから充足感を覚えられないんだね……じゃあ……」

 と彼女は立ち上がり、机の引き出しから液晶画面が付いた端末を取り出す。

「これでもしていれば?」

「……何ダ、コレ?」

「パズルゲーム。研究員の人が暇潰し用にくれたの。もう200回以上クリアーしたから飽きちゃったんだ」

「面白ソウダナ」

 ガルダは器用に(くちばし)でボタンを押し、端末を起動させた。同じ要領でタッチパネルを操作していく。

 これで静かになるかな……と思い、ルナはまたさっきの位置に戻った。だが。

「……オシ、クリアーシタゾ…………マタ簡単ダナ…………コレモ楽勝……」

 独り言が多い鳥だ。これはこれでうるさい。出て行って欲しい……。

 そして一時間が経った頃。

「ウーム」

 先ほどまで軽い声を上げていたガルダが初めて悩み始めた。

「ココヲコウスル……ン? 違ウカ……コレヲココニ持ッテイッテ……アー違ウ!」

「……どうしたの?」

 放っておけなくなったルナはベッドを下りガルダへと近付く。

「ステージ524ダ。解ケネー」

「ああ、そこは初めて見せかけのトラップが出てくるから……」

 ガルダの目の前でささっとパネルにタッチし、ルナはあっさりとパズルを解いた。オオ、と感心する声が聞こえた。

「オ前、頭イインダナ」

「戦略兵器だし」

「ヨシ、次ノステージダ。オ前見トケヨ。俺ガツマズイタラヒントクレ」

「……別にいいけど」

 それから、時折助言を与えながら彼女はガルダのプレイを見守り続けた。そういえばこの部屋でこんなに喋るのは初めてかもしれない。ここにいる時はいつもひとりだ。何だか奇妙な感覚だ。

 ステージ872をちょうどクリアーした時、スピーカーから男の声が鳴り響いた。

LUNA (ルナ)緊急出撃(エマージェンシー)だ。すまないが第一指令室に来てくれ〉

「ウオオビックリシタアッ!」

「……行かなきゃ」

「チッ、ゲームノ途中ナノニ……」

「終わったらまた見てあげるから」

 ルナが机から離れようとするとガルダが羽ばたき彼女の左肩に下り立った。

「あの、私これから戦場に行くんだけど」

「アア、だから俺モツイテクンジャネーカ」

「?」

「言ッテナカッタカ? 俺ハオ前ノ実戦デノサポーターダ」

「そうなの? ……でも、危ないよ?」

「オ前、俺ヲ心配シテルノカ?」

「え……?」

 ……そうなのだろうか。よくわからない。

「作ラレタカラニハ俺モ壊サレタクネーカラ、オ前俺ヲ守レヨ? ソノ代ワリ作戦中ハ現場デ俺ガ全力デオ前ノサポートヲシテヤル」

「あまり目障りだったら撃ち落とすかも」

「フザケルナ!」

「ガルダ……だったね。さっきはちょっと楽しかった。作戦中でもないのにひとりでいる時にあんな気持ちになったの初めて」

「オ前ヤッパ馬鹿カ? ヒトリジャナイダロ。俺がイルダロ」

「あ……そっか」

「サッサト行ケヨルナ。遅レルト何カ文句言ワレルゾ」

「うん……早く終わらせてまたゲームしようか」

「オウ」

 扉を開けた彼女は指令室へと駆け出した。部屋には電源をつけっぱなしのままのゲーム端末のBGMが流れ続けていた。

「LUNA」連載中に頭の中に浮かんではいたんですが、結局書かなかったお話です。つい最近 Twitterでこの話題に触れた事もあり、気が向いたので書き起こしました。本当は終わった作品についてあれこれ後から付け足したくないんですが。

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