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七宝伝〜今起こったこと〜  作者: nyao
三章 ~意味~
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三十一話「道程は遠く近く」







学校からの帰り道、鞄を両手に提げて佐久弥は商店街の中を歩いていた。

もうすぐ夕時、店のあちこちで店主が客引きに必死になっている中を冷やかしではなく眺めていく。


「今日の夕食・・・今日の夕食・・・」


呟きの原因は突然の母の宿直にある。その為に急遽白羽の矢が立って、だからいつもは通らない道を歩いていた。


冷蔵庫に残っているだろう中身。今日の朝食時に覘いたものを思い浮かべる。

うん、あれとあれと、わたしの献立で作れるもの、まだ足りないものは、


「はろあ~?」


綺麗な澄んだ声。それは何処か聞き覚えのあるような気も、でもやっぱり知らなくて多分わたし以外の誰かにかけた声だろうと思いもう一度途中だった献立を組み直してみる。


「えっと」


「へい、彼女。君の事だよ、そこの美和女子の制服を着た髪の長い可愛い子!! ・・・・・って、自分で言って非常に恥ずかしいですね、これは」


「?」


ふと気が付いた。周りを見回して、でもやっぱりその通り。周りにはわたしと同じ学校の人はいなかった。どころか周りにはおばさんばかりで、それに髪の長い子ってもしかして。


振り向いてみて、驚いた。


「・・・どうして?」


一人の女の子が立っていた。


やっぱり呼ばれていたのはわたし。そしてわたしを呼んだのは彼女。つい先日初めて会った、正確にはわたしを誘拐しかけた張本人、弧月真衣と名乗った少女。


「お久しぶりです。後、先日の事はさらりと水に流しておいてください」


そんなこと、言われて出来るわけもない。そしてそんなわたしを見透かしたように彼女は笑った。害はない、と言うように。


「あは、そんなに警戒せずとも大丈夫、何もしませんですよ。そもそも今日は先日のお詫びに来ただけです」


真っ直ぐな視線に浮かぶのは苦笑い。

見える笑顔は嘘だとは思えない。でもお詫びと言われても、彼女の真意が見えてこない。また凪さんを狙って、と言う事も十分に考えられるのだから。


「・・どういう事、ですか?」


「う~ん、そうですね。まぁ有体に言えば軽くお茶でもしませんか、って事です、もちろんわたしの奢りで。しかも何とその間っ、漏れなくあなたの疑問質問に答えちゃうという驚愕のおまけ付きですよ?」


嘘はない、と思う。彼女は全てを本気で言っている。些か言動が派手過ぎの気もするけど。


でも、それは。


“それ以上”の事を含んでいてもおかしくないのではないか、と思う。例えば凪さんの様子を探りに来た、とか。

疑問に答えてくれると言う事、わたしの知らない何かを確実に知っている、と言うのもまた確か。


正直どちらを選べば良いのか、


「ふぅ・・・やっぱりわたしを信用は出来ませんか?」


息を漏らした彼女の姿はとても、それこそ嘘だろうと思われるほどに悲しそうで、つい否定の声が出かけるも喉元まで上がった言葉を何とか飲み込む。


正直、答えかねる。どちらも後一歩の答が出ない。


彼女はそれを、肯定と取った。


「そうですよね。例え理由がどうあろうと所詮わたしは既に罪を犯した身、こんなわたしの事なんて誰も信じてくれません。はい、仕方ない事ですよね。こんな人様畜生にも勝るわたしの言う事なんて所詮は真実しか語れないのですから。ええそうです、そうですとも。

・・・・・それでは、大変心が悼むのですが恭一さんにもよろしくと伝え置いて下さい」


遠ざかっていく背中に、どうしようもなく哀愁を誘う。

その背中がそうさせたのか、それとも別の理由かも知れない、言葉が漏れていた。


「待って、下さい」


「はい?」


彼女に振り向かれてから、自身驚いた。どうして声をかけたのだろうか、と。

憐れみに思ったか、違う。彼女を信じたのか、といわれればそれも違う。なら、想いは一つだけだった。


急に彼女の話を聞きたい、と思った。だから応えた。理由はよく分からない。


「分かりました。付き合わせてもらいます」


一時彼女に似合わぬような呆けた表情が浮かび、言葉を理解したのか次第に喜びが、すぐに満面に笑みが浮かんで力いっぱいといったように頷いた。


「はいっ!!」





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





二人で何処に行くか、と彼女は初めから決めていたようだった。向かったのは内装が可愛らしい、今ちょっと学校でも話題になっていたお菓子屋さん。

実は前から少しだけ興味があったりしたけど、入ったのは今が初めて。


時間が微妙なのか店内は空いていた。

店員の女の子に案内されてあいている席に彼女と向かい合って座る。


「ささ、どんと頼んでくれてもいいですよ。お金には余裕があるつもりなのです」


目の前には実に上機嫌そうな笑顔があった。

取り敢えずメニューを取って一通り眺めてみる。ふと、一つだけ眼に留まった。うん、これにしよう。


「決まりましたか?」


「あ、はい」


「それでは・・・店員さ~ん、お願いします」


傍にいた女の子が寄ってきて、何にしますか?と聞いてくる。彼女は何も見ずに注文をした。案外、彼女馴染みのお店の系統なのかもしれない。


「あ、わたしはこれを、お願いします」


女の子に見せるように一つの品名を指す。


「はい、それでは繰り返しますね。ミックスフルーツジャンボデラックスパフェ(1.5リットル)一つにチーズケーキが一つ、でよろしいでしょうか?」


「はい、それでお願いしますね」


少々お待ちください、と言い残して女の子は踵を返していった。けど、何だかあの子の目が驚いているように見えたけど、どうしてだろうか。


・・・考えても判るはずもなかった。


気を取り直して。

前を向き、丁度ぴったりと彼女と視線が自然と重なってしまう。


「「・・・・・・・」」


気まずい。今更だけどどうやって切り出せばいいのか。と、彼女が少しだけ苦笑いのようなものを浮かべた。仕方ありませんね、って感じで。


「別にわたしを信用してくれたからじゃなくて、聞きたい事があるのでしょう。何ですか? わたしに出来得る限りのお答えはしますよ?」


「あ、その・・・」


「言いにくいですか? それとも・・・いえ、何ならあなたの聞きたい事を当ててみましょうか。そうですね、ずばり!!」


まるで殺人犯を見つけた探偵のように、勢い良く立ち上がって人差し指でわたしを指す。その仕草がものすごく愛らしく感じるのは何故だろうか、と。


お待たせしました、の声に彼女の動きがぴたりと止まった。お待たせしました、の声に彼女の動きがぴたりと止まった。後、表情も。

取り込み中と察してか、もしかすると関わりたくないと思ったのかもしれないが、後は無言でパフェとケーキ、請求書を残して去っていってしまう。


無駄な、というよりも余計に気まずくなる心遣いだったと思うけど。


気まずそうに、彼女は腰を下ろす。


「ま、待っていました。あなたもどうぞ、遠慮せずに食べてくださいね?」


頬が軽く桃色に染まっているのが何だか微笑ましく感じてしまう。


目の前のパフェを見て、すぐに彼女は嬉しそうな笑顔に変わった。そしてすぐに一口。

でも思うのだけど。


「大きいですね、それ・・・」


全長三十センチほどはあるか、と思うほどの大きな容器。当然一杯に生クリームやら多々の果実果物が入っている。


パフェは嫌いじゃないけど、流石にこの量はわたしもちょっと・・いやかなり引くと思う。


「そうですか? ん~、やっぱり美味しいです」


彼女は気にした様子もなく、実に幸せそうな表情で次々と中身を減らしていった。

こんな、幸せそうに食べられると作った人も満足するだろうな、と思いながらわたしも気を取り直すと自分のケーキに一つフォークを入れた。


「・・・ぁ、美味しい」


口に入れて思わず声が漏れる。うん、これだと偶になら来てもいいかもしれない、と思う。頻繁だと、その・・・・太るから。


「あ、そういえば話が途中でしたよね」


思わず夢中になっていたのか、口に入れようとしていた二口目の手を止めて顔を上げる。


「・・・・・・」


「どうかしました?」


彼女はなんでもないようにしているけど、思わず唖然としてしまった。というよりも現実が受け入れられない事って本当にあるんだなと思う。

パフェの容器の中身が、その、もう半分以下になっていた。その速さだけでも驚きなのに食べ方は普通、腕だってそれほど早くはないし食べ零しだって勿論ない。


ああ、わたしまだ驚いているって分かる。


「食べるのが、早いですね」


「そうですか? まぁ、食べる早さは人それぞれですよね」


「そ、そうですか・・?」


人それぞれで済ませられる早さでないと思うのはわたしだけなのかな?


わたしが浮かべたものが引き攣っていたのか、彼女に場をとりなすみたいに苦笑いが浮かんだ。ほんの少し、恥ずかしそうに頬が染まっている。


「まあ、それはそれと置きましてね。先ほどの続きですがずばり、あなたが聞きたいのは恭一さんの事ですね、違いますか?」


「―ぇ」


どくん、と。

一瞬心臓が高鳴る。手に持っていたフォークも落しそうに、慌てて掴み直した。


にこにこと嬉しそうに微笑みながら残りのパフェを口に運んでいる彼女に、目を向けられない。

どうして、と思う。今の言葉にわたしが動揺するのはおかしい。だって、わたしは別に恭一さんの事を聞きたくて彼女の誘いに乗ったわけじゃないのだから。


なら、と。どうして動揺なんてしたんだろうと思う。けど分からない、知らない。


「あれ、違っていましたか?」


「あ、いえ・・・でもどうして、わたしが恭一さんの事を知りたいと思ったんですか?」


「だって、そうでしょう? あなたはわたしに同情出来るわけでなく、何より恭一さんの名前を出した瞬間目の色が変わっていましたよ。隠し事をするのならもう少し表情に気をつけた方が良い、と忠告しておきましょう」


彼女の瞳は自分を疑っていない、ただ澄んでいた。


「そう、ですか・・・?」


「ええ、はい。それはもう、って感じです」


断言されてみれば確かにそんな気がしないでもない、かもしれない。うん、確かに内の一つにそれはあったように思える。

そう、客観的にわたしがあの状況で恭一さんの事を気にかけても何もおかしな事はないはず。


意を固めるように、息を吸う。


「なら聞かせてもらいます」


「はい、どうぞ?」


「・・・あの時、あなたは恭一さんの事を『囚われの王子様』と。初めから知っているみたいでした」


「みたい、ではなく知っていたと断定してもいいですよ。見たのはあれが初めてですが確かにわたしは恭一さんの事を知っていました」


「それは、どういう事ですか?」


彼女が僅かに苦笑を浮かべて、何だろうか、今この時彼女が含んだものは。


「慌てなくても答えますよ。あの人は・・・・そう、言葉にすると言い難いのですが、囚われています。あなたには“視える”はずですよ?」


わたしには見える?

自然とあの瞳が思い浮かんだ。何も映していない、ただ空虚なだけに視えた瞳。


「わたし、には何もないようにしか見えませんでした」


「なるほど、確かにそうとも取れますね。しかし見方に裏表はあっても所詮は同じものです。実際会って確信もしましたが、あの人の言動全てには隙がない。自由、と置き換えてもいい」


自由がなかった、と彼女は言う。

彼の言葉を思い出し、ああ、そうか。瞳には何もなかったはずなのにそのことばだけが酷く心にこびり付く。


「・・・みずき」


「ええ、そう。そして経緯はありますがわたしが彼の事を知っていた理由はそこに収束します。あれはある意味人の目を引く・・・目立ちますからね」


目立つ、といえばそうだろうと思う。あれは確かに逸脱したものだった。それだけは否定しても嘘になってしまう。


「っ!?」


急に痛んだ胸を押さえつける。理由は、でも、だって、どうして。


「優しいですね、あなたは」


「?」


ふと、顔を上げると彼女が微笑みを浮かべていた。今までと一線を賀する、一瞬彼女の表情に違和感を覚えた。けどその意味を探すよりも先に違和感が消える。


「でもその優しさは彼には必要ない」


絶対の拒絶が伝わる。あの時、手を取ろうとして彼が浮かべていた表情と同じもの。


「・・どうして?」


それは自然と口から漏れていた。


わたしは別に優しさのつもりなんてない。放っておけない、でも押し売りのつもりもない。ただ――拒絶の訳が解らない。

拒絶は何か持つものがあるからこそ、でも。何もなければ拒絶はない。


「似た子を知っていました」


考えが止まる。顔が上がった。

目の前の彼女を、視た。


「差し出した優しさがあの子の均衡を壊した。知らなければ現実も絶望になりえなかったのに。優しさは時として現実を引き裂く鋭利な刃にもなりえるのです」


彼女の視線が鋭さを増す。刃のような、殺意とも敵意とも違う純粋な圧力、その存在力。


「だから、これは忠告。誰の為にもこれ以上彼に・・千里恭一と言う存在に関わってはいけない。関われば今のあなたは確実に、死にます」


左胸に杭が打ち込まれた。


頭が内から弾け跳んだ。


眼球が飛び出して皮膚が裏返った。


全身の血が干物のように抜けた。


「―ぇ?」


全てが幻想だった。向けられた力にただ死のそれを連想しただけ。


「と、まぁ恭一さんについてはこの程度ですか。もとより彼に詳しい訳でもないですからね」


おどけるような笑顔。それだけで全身の力が抜けた。今はもう悪夢は夢想しない。

遅れて恐怖が来る。身体の震えを押さえられない。


「わたし、は」


「大丈夫ですよ」


それは慰めるように。


「大丈夫、何も気に病む事はありません。幸せなんて所詮は人それぞれのものなんです、ね?」


それは認めさせるように。


彼女が微笑みを浮かべる。“まるで”幸せそうに。


「おぉっと、そう言えば手が止まってましたね。ささ、遠慮せずに食べてくださいね。わたしのおごりですから」


言うなりまた凄い勢いで彼女はパフェを食べ始めた。あ、と言う間もなく容器の中身は減って、口に運ぶ手も全然衰えない。


何・・だろう、この気持ち?

わたしは彼女が見せたそれが、そして思い浮かぶあの瞳のそれが、どうしても――


「どうかしました、食べないんですか?」


「ぇ、あ・・いいえ」


一口、ケーキを含む。


甘かった。


「で、ですね。あなたの知りたいもう一つの事、お友達の事ですけど」


お友達・・・・そうだ、凪さんの事。

思わず身体を少しだけ乗り出してしまう。


「安心して下さい。彼女についてはしばらく様子見にしようと思います。いえ、油断させるためなどでなく、彼女にもそう伝えてもらって構いませんよ」


嘘は、多分ない。でも、それなら。


「どうしてですか?」


「どうして、とは?」


「あなたの目的は七宝・・・じゃないんですか? でもそうするとあなたは・・」


言って、淀む。これ以上言っていいものか。もしかすると何かの勘違いで彼女が凪さんから目的のものを奪ったと思っているのかもしれないし、そもそもあの首飾りが彼女の目的だという事自体がわたしの勘違いなのかもしれない。

けど杞憂だった。


本当に、彼女は全部を見透かしたように口を開いた。


「様子見、といった理由は別にあるんですよ。そうですね・・・それなら彼女に助言でも頼みましょうか」


「助言・・?」


「そうです。これはわたしの理由としても重なるんですけどね、彼女、実に厄介な男に目を付けられたようですから気をつけるように言っておいてください。あの時わたしが邪魔されたのは偶然じゃない、といえばきっと気付けると思います」


「・・はい、分かりました」


男、とか邪魔をした、とか言っている意味はよく分からなかったけどきっと凪さんに言えば通じるんだろう。



「ま、現状のあなたでは聞ける質問はこの程度だと思いますよ。他にも何かあれば気軽に聞いてくださいな。今のうちですから」


そう言って彼女はまたパフェを食べ始めた。


考えてみる。

わたしが、彼女に聞きたい・・いや、聞ける事は何だろうか?


うん、そもそも彼女がわたしの前に現れたのは、七宝の事だった。そしてわたしはそれを持ってはいなくて、凪さんをおびき出した。でも凪さんはあの首飾りを取られては、いなかった。


「あ、定員さん。これ、もう一つお願いしますね」


ふと顔を上げると、彼女の容器の中身が空になっていた。でも、もう一つって。


「あ、その目は呆れてますね。でも言うじゃないですか、甘いものは別腹です」


「そ、そうです・・よね?」


別の胃が本当に存在しているわけではないから限度があるとは思うのだけど、彼女はまだにこにこ顔なので気にしない・・・・・・うん、気にしちゃいけない気がする。


「それで、わたしに尋ねたい事の考えは纏まりましたか?」


「ぇ」


「いえ、考えているようでしたから。それで何か質問はできましたか? ないならないでわたしとしては全く構いませんよ」


「え、と。その」


「はい?」


店員さんがまた無言でやってきて、巨大なパフェを置いて去っていく。待ってましたといわんばかりに彼女がスプーンを伸ばして、ものすごい勢いでその中身は減っていった。


わたしは考えてみる。彼女に聞きたいと思う事。

凪さんの事は聞いた。恭一さんの事も聞いた。ならもう彼女とわたしの接点はない、と思う。つまり、聞くべき事もない。


なら何を、と。


「ぁ、の」


「ふぁい、何ですか?」


一つ、あった。これを聞けばきっとわたしは彼女を納得できる。

緊張しているのがわかる。思えば彼女に会うのはこれでまだ二度、三度目。それもわたしが全く敵わないほどの実力差がある、と思う。


でも、と。


「あなたは、何の為に戦いますか?」


彼女が初めて手を止めてスプーンを置いた。

見詰める瞳が真剣実を・・・・帯びない。彼女はその満足そうな笑みのまま口を開いた。


「わたしの望みのために。“そして”・・」


最後、何かを呟いたがそれが何かは聞こえなかった。でも聞き返そうとする気は起きない。そうしてはいけない、気がしたから。

彼女は再びスプーンを手に取るとにこやかにパフェを食べ始めた。わたしも、それ以上は何も言えずにケーキにフォークを落とした。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





結局何も聞けないまま彼女とは別れる事になった。


わたしがケーキ一つを食べ終わる頃には彼女は計五回ほど再注文をして、完食していた。勿論全て同じあのパフェを。実に、満足そうだったのが印象に残っている。

確実に許容量を超えている気がしたんだけど、やっぱり謎は謎のまま・・の方がいいよね、きっと。


最後に彼女は楽しそうに、


「楽しい時間でした。ありがとうございます。水月佐久弥さん」


と笑顔で教えてないはずのわたしの名前を言って、止める間もなく人ごみの中に混じっていってしまった。

結局彼女が何をしたかったのか分からないままだった、という事になる。


あの後で夕食の材料を一通り買って、今はやっと家へと着いたところ。でも夕食を作るなんて久しぶりだったからついつい買い過ぎ、たかもしれない。お陰で手が少し疲れた。

両手の荷物を一旦地面に下ろして、ドアを開ける。


「ただいま・・・・て、あれ?」


玄関に見慣れない靴が二つ。それもどちらも男物だった。

弟の友達、かとも思ったけど違うはず。弟は滅多に友達なんて呼ばないし、それに何よりその本人の靴はなかった。まだ帰ってきてないか、それとも帰ってから出かけたか。


もう、どうしているのか。偶にお母さんのいない今、夕食作りを手伝ってくれてもいいのにと思う。


疑問はあったけど取り敢えず靴を脱いで家に上がる。荷物を持ち上げて、先ずは台所へ。


「佐久弥?」


台所に入りかけ、後ろからの声に振り返った。


「凪さん?」


「ああ、やっぱり。丁度いいところに帰ってきてくれた」


「どうか、したの?」


「うん、まあ。帰ってきたばかりで済まないと思うが少し時間を貰えないか?」


「え、はぁ・・いいけど」


何だろうとは思ったけど一旦荷物を冷蔵庫の前に置いてから引き返し、凪さんが進むまま後についていく事にした。

向かえばすぐに分かるだろうと。


すぐに向かう先は奥の道場だって分かったけど、一体なのだろう?


修行、をわたしに付き合って欲しいのだろうかと思うけど、今まで一度もなかった事だし、分からない。


考えるうちに道場へはもう着いた。


「待たせた」


凪さんが先に中へ入っていく。

誰かいる、というのなら靴はなかったけど弟でもいて、それで稽古をつけてもらっているのだろうかと考えながらわたしも道場の中へと続いて足を踏み入れた。


そして、


「・・・・・・ぇ?」


思いもよらなかった人に驚くのは今日で二回目の事。


漏れ出た声は、でも確実に一度目よりも大きなものだったと思う。





七宝殿~居間で興っている事?~



三十路過ぎたら・・・「道程の先は見えた」




萌「ついに三章開始です、やったね~ 」


和佐「って言うか、今のところはまあよくここまで書いたな、って感じだよな」


舞「そうよね、二章の書き上げ時間が長かった(実時間)だけに、ね

萌「わぁ、舞ちゃんに和ちゃん、久しぶりだよ~ 」


和&舞「萌ちゃん、久しぶり~ 」


和&舞「って、俺(私)の真似をするな!!」


萌「二人とも、久しぶりだけどやっぱり息合ってるよね~」


和佐「………」


舞「…」


萌「で、今回の話の事だけど……」


和&舞 (無視しないで撤回させて!!!)


萌「うぅ、また佐久弥さんが最初、なんだね」


和佐「ま、まあこれはちょびっと仕方のない事で… 」


舞「そうよね…と言いたいところだけど、今一この話の必然性が分からないんだけど?」


和佐「それは…確かに」


舞「でしょ? それならそれで私と萌ちゃんのラブラブな日常を書いてもいいと思わない?」


和佐「思わん、ってか、それは手前の願望だろうがっ!!」


舞「何よ、開始早々私と張り合おうって言うの?いいわよ、受けて立ってあげる」


和佐「その台詞、そっくりそのまま返すぜ」


舞「いい度胸じゃない、和の分際で本当に私に向かってくるなんていい無謀よね」


萌「ふ、二人とも、駄目だよ、行き成りこんな事しちゃ、まだ話の説明もしてないし…ね?」


和佐「ああ、萌ちゃん、ちょっと待っててね、すぐ終わらすから」


舞「そうそう、すぐにこの世界不必要者を滅ぼすわ、萌ちゃんの為に」


萌「で、でもまだ話の説明が……」


和佐「ああ、それ? 今回はな、佐久弥ちゃんと真衣ちゃんが会う場面だな」


舞「それでパフェとケーキを食べる、って感じの場面ね」


和佐「でもあの大きさを五杯ってのは食いすぎだよなー」


舞「ふん、私ならまだ楽勝よ」


和佐「ならそれ喰ってさっさと豚になっちまえよ、ええ?」


舞「和で、屑で、塵の分際にそこまで言われる筋合いはないわよ」


萌「あぅ、せっかく仲良くなったと思ったのにぃ~、いつの間にかまたけんかしている」


和佐「さっさと終わらせて、今度こそ、裏で勝負つけるとするか、舞…?」


舞「そうね、屑と意見が一緒って言うのは厭だけど…いいわ、望むところよ」


萌「あうあう、ふ、ふたりともぉ~じょ、冗談だよね、これって…?」


和&舞「次回、三十二話、生き残った方で会おう!!」



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