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七宝伝〜今起こったこと〜  作者: nyao
二章 ~仲間~
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十一話「今日来た猫はいつ去るか」


この作品ってどのくらいの興味で読まれてるんでしょうね?








「はぁ」


学校帰りの道のりで少女は一つ重いため息をついた。


それにしても、と思う。

公園で襲われたあの日以来何だか凪さんの様子がおかしい。時々ぼっと自分の首飾りを見てはため息をついて、心ここにあらずといった感じでとっても心配になる。鼎は何も気付いていないみたいだけど・・・


それにあれの事も気になる。一体どうしてあんな事が起こったのか、絶対にありえないはずなのに。

でも、と偶に思う。もしあの時・・・


「凪さんが来てくれなかったら」


ぞくっ、と寒気が奔った。

わたしは今頃生きていないだろう。いや、それだけじゃない。もっと嫌な・・・・・ううん、浮かべる事もしたくない。


「王子様、か・・」


あの時アレが言っていた事は後になってようやく彼の事を言っているのだと気付いた。

勿論そんな都合のいい王子様なんていないのは分かっているし、そこまでの少女趣味でもないつもりだけど。

もしあの時また来てくれていたらと思うと、


「・・・・・・・・・・・・・ぅ」


わ、わたしったら一体何を考えて・・・彼は王子様でもなんでもなくて、そもそもそんなのじゃないし勝手に思っちゃ失礼で・・・


「あの〜、もしもし、ちょっといいですか?」


「っ!?」


出かけた声を何とか呑み込む。


・・・突然の事でかなり驚いた。胸を撫でつつ軽く息を吐いて心を落ち着ける。

ほっと最後に息をついてから後ろに振り向いた。


「こんにちは」


そこにいたのはわたしとさほど歳が変わらないであろう子。整った顔立ちをしているけれど、綺麗というよりも可愛らしいという言葉が最初に思い浮かんでくるようなそんな印象のある女の子。それが第一印象だった。


状況から考えるに彼女が話しかけてきたと思うのが普通だと思う。

でも、そう。わたしが彼女に抱いたのは第一印象(、、、、)。会った事はないはず。


「なに、ですか?」


「ん〜」


勇気を出して声を出したけど返事はなかった。

彼女は何か考えているようで考えていないような瞳でわたしの瞳を見返してきている。


じっとしているだけで逸らす事も、話す事も、それ以外何もしてこない。ただ見詰めてくるだけ。


一瞬、その瞳の中に映る色がとても澄んでいて綺麗だと感じた。

我を忘れたのは本当に一瞬で、彼女の視線にもう一度勇気を出してみる。


「あ、あの・・・・」


「ん〜」


反応無し。も、もう一度


「あ、あの・・・・・」


「ん〜」


再び反応無し


「あ、あのっ、すみません!」


三度目で思わず大声を出して、彼女が応えてくれた・・・のかどうかは怪しい。


「ん、大丈夫! ・・・かな?」


・・・どうやらわたしの声に応えたというのではなく観察が終了したといった感じだった。


「あの! わたしに何か用事ですか?」


「ん、あー。ごめんなさいね〜」


ようやく彼女がわたしの事に気付いてくれたみたいだった。今まで見詰め合っていたはずなのにそこではじめて彼女と顔を合わせたなんて、変な気分。


「もうあんまりにも無防備で・・・・・ちょっとこっちも戸惑っちゃいまして〜」


そう言って笑顔を向けてくる見た目普通の少女。出来得るならその言葉で気付いておくべきだったと思う。


「昨夜、公園にいましたよね?」


何の前触れもなく、突然彼女がそんな事を聞いてきた。


『昨夜』と『公園』の二つに『あの出来事』が思い浮かんだけど、目の前の少女にはおおよそ無関係であったので自然と除外した。

他には・・と考えて、止めた。

だってこの近くの公園は唯一つ、風戸公園だけ。だから彼女が言っているのは昨夜いた公園の事になる。


なら昨日の事を知っている彼女は・・・・・


「蓮華の、方・・・?」


弟の所属している組織に自然と行き着いた。

けど口に出してから少しだけ不思議に思う。蓮華はそんなに大きな組織じゃない。だけれどこんな子は今まで見たことがないような気がする。


「んー、そんな感じ、かな〜」


「それなら鼎を・・・?」


「いやいや、用があるのは現場にいたあなたか、もう一人の彼女、だ・け・ですから」


「わたしか凪さ・・・」


口に出しかけてある事を思い当たる。


わたしは確かに昨夜公園にいたしもう一人、凪さんもいた。つまり二人。でも昨夜蓮華の人――つまり鼎が電話で報告していた人物には『あの時起きた事』だけで、誰が何を、まではまだ伝えていなかったのではなかったか?


軽い問答をしながら隣で聞いていたから、よく覚えている。間違いは、ない。


そう思ったとき瞬時に顔がこわばった、それが分かる。

警戒を見せちゃいけないと思ってすぐに気を引き締めた・・・つもりだけど、彼女は気付いたかどうか・・・・・・変わらない楽しそうにしている様子からは読み取れない。


「一体どっちが持っているのか判らなかったのですよ〜。中りだと嬉しいんだけど・・・・・・もしかして、違ってました?」


探るような瞳。でも、それ以外は本当に何の含みもなさそうな笑顔。思わず緊張が和らいでしまって、


「持ってるって、何を・・・・・?」


「やだな、とぼけないでくれますか。七宝ですよ、七宝。・・・・それとももしかして本当に知らなかったりします」


「七・・宝・・・」


それは聞き覚えのある単語。

確かわたしの家、つまり水月家が代々守っている家宝の『緋槍ひそう』と『金碑きんひ』がその中の一つと(、、、)昔聞いた覚えがあった。そして凪さんの実家、渫槁家も七宝を保持しているらしいと聞いたことがある。でも同時にそれは秘密事項で門外不出であるとも聞いていた。

わたし自身見たことは一度もない、そんなあやふやな物・・・のはずだった、けど。


実在している?


「あ、知ってます? わ〜一発で当たり、かな?」


目の前には嬉しそうにする普通の少女。

でも、普通に見えたその笑みの意味はもう―――


「はい」


満面の笑みを浮かべたままで彼女の手が差し出される。


戸惑いと、困惑と、頭の中がぐちゃぐちゃになる。

と、彼女が不満そうに頬を膨らました。可愛い、とこんな時でも思わず見入ってしまう。


「だ・か・ら、持っているんですよね、七宝のどれか。剣か、それとも珠か。ね、渡してくれます?」


「・・・・・・」


頭の中で危険と信号が鳴っているはずなのに、体がそれに反応しようとしない。むしろ緊張が抜けてしまうように彼女は自然体で。


「あはは、そんな警戒しなくても悪いようにはしないですよぅ。むしろわたしはあなたたちに危害が加わらないように動いているつもりですから。だから、ね?」


思わず後ろに下がりかけたわたしに彼女はさらに間を詰めてきた。


彼女の言っている事は嘘だとは思えない。真っ直ぐに見詰めてくる瞳は真剣だけど澱みのないものだって分かるし人を騙しているような後ろめたさもない、と思う。


そもそも七宝なんてお祖母ちゃんから聞いた事があるだけで実物があるのかどうかも疑ってしまうほどのものだったのだ。それを出せといわれてもできるはずもない。


でも、そうすると昨日・・・?


思い当たる節は、ある。凪さんの家は渫槁。持っていても不思議ではない。そしてそうだとすると多分凪さんが最近見つめているあの首飾り。


でもどっちにしてもわたし、持ってない・・・


困惑が伝わったのか、彼女は手を引っ込めると初めと同じようにわたしを見詰めるような、観察するような表情になった。心なしか唸り声が聞こえる気もする。


自分に向いているはずの瞳に直感的に視ているのは瞳じゃなく、もっと奥のものだと思えた。

濁りのない視線に思わず何処かに吸い込まれていくような錯覚を覚える。


何か・・・・見透かされている?


「う〜ん、何か・・・・違・・・・うような・・・」


彼女に見惚れていたのはどれだけか。一瞬にも思える長い思考の結果そう言って彼女は手をぽんと一つ打った。何が分かったのかは知らないけど何かに納得したようで何度も頷いている。


「そっか、そっか〜、昨日見たのは『真紅ほのお』だったのにあなたは今時珍しいほど綺麗な『白光ひかり』だもんね〜。ちぇ、ハズレか」


そう一人で言って道端にある石を蹴るような動作をしていじけてみせていた。それが自然とわざとやっているという感じでなく本心からやっているという様に感じてしまってまた思わず口元が緩んでしまう。


「あ・・・でもよく考えれば素直に渡してくれる確率って今みたいにずいぶんと・・・・・」


だからその動作に見惚れていて彼女が何かぶつぶつと独り言を呟きながら同じ動作を繰り返しているのにも気を向けられなかった。


「多分もう一人ってミツキかサラシマのどっちかだと思うし・・・・・」


彼女から漏れた言葉に身体が固まる。


そうだ、わたしじゃなかったら次に狙われるとすれば凪さんになる・・・!?


凪さんにこの事を伝えないと・・・


何か良い案を思いついたようでまた手を一つぽんと打ってから彼女は突然わたしに向き直った。

向けられたのは余りにも無邪気な笑顔。どうしてわたしが怖がっているのかが分からなくなってしまうほどの。身体の緊張が勝手に緩む。


「協力お願いしま〜す、ね」


彼女が向かってくる気配はちゃんと分かっていたと思う。でも緊張が途切れ、言葉に対する反応が鈍っていたのは確か。


え・・?


けど、一度。

あまりにもその動作に違和感がなくて鮮やかで、避けようとする気すらも起こす間がなかった。たったそれだけで足の感覚がなくなって視界が暗くなっていく。


「ほんと、ごめんなさいね〜。ちょっとだけ我慢、して。大丈夫、誰も危険な目になんてあわせませんから・・・絶対に」


腹部に感じるはずの痛みも何故か感じず、それほど不快でない気分で遠のく意識の中、彼女の腕に抱かれる感触を感じながらそんな言葉が微かに耳に届く。

間も無く、わたしの意識は完全に闇に沈んだ。



七宝殿〜居間で興っている事?〜


銃一羽「北極の猫は生きているか?」




萌 萌;新キャラ?


和佐 どうだろうな、何処かで見た気もするようなしないような…?


萌 う〜ん…でもそれはそれとして、またお兄ちゃん、また最初に出てこなかったよ


和佐 ま、どうせ一章でそうしたからこれからもそうしようって作者の下らない魂胆だろ


萌 でもそれならどうしてまた『少女』さんが主になってるのかな


和佐 この章は仕方ねぇんじゃない? 一応、始めからこの展開だったようだしさ


萌 う〜ん、じゃ、いつかはわたしももしかしたら出れるかな?


和佐 いつかは……出れるんじゃ、ない…かなぁ?


鼎 あんた達、一体何和んでるんだよ!!!


萌 あれ、鼎君?


和佐 おう、どうした生意気坊主


鼎 だ・か・ら・姉さんの一大事に一体あんた達は何をしてるんだ、って聞いてるんだよ!!


萌 何…って、いつも通りの物語の解説だよ?


和佐 少し落ち着け、シスコン


鼎 黙れ、この物語中不幸率ぶっちぎりで一位決定野郎


和佐 …ほう、いい度胸じゃねえか、坊主、骨の二、三本は覚悟できてるだろうな…?


萌 落ち着いて、和ちゃん……で、本当にそんなに慌ててどうしたの、鼎君?


鼎 そ、そうだよ、だから…ね、姉さんが…


萌 う〜ん、そう言われても……


和佐 なぁ…?


萌 うん


和佐 俺ら彼女とまだ面識ほとんどないし


萌 わたしって普通の女のひ・せんとういんなんだって?


和佐 って、萌ちゃん、それを言っちゃ……第一、確か俺や恭一と…


萌 もう、それは言わない約束だよ、和ちゃん?


鼎 くっ、またほのぼのしやがって…お前等に頼ろうとした僕がバカだったんだ、くそー


和佐 …あらら、行っちまった


萌 一体何しに来たんだろ、鼎君


和佐 このコーナーの場所潰しだろ、きっと、それで役目終わったから帰ったんだ


萌 え! …ということは……もしかして今回はもうおしまい?


和佐 そうなるな、というよりちょうどそんな時間か…


萌 あ、ほんとだ、丁度良かったね〜


和佐 じゃ、いくぞ


萌 うん、せーの……





萌&和 またまた次回、十二話でお会いできるときをお待ちしていま〜す


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