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七宝伝〜今起こったこと〜  作者: nyao
一章 ~始まり~
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十話「詰問、最後の日」






その日のお昼休み、恭一はいつもなら待っているはずの妹の到来を待たずして席を立った。教室を出て、その足取りで上へと向かう。

付いて来ている事を確かに感じながら階段を上り、屋上へと出た。そのまま物陰へと身を隠す。


繋ぎの軋む音と、人影が屋上に現れる。


「・・・・いない?」


彼女が周囲を見渡し終えた一瞬、恭一は身を置いていた屋上の更に上から標的の背後へと躍り出た。


「なっ!?」


気付いたようだが、遅い。

両手を取って捻り上げ更に身体を密着させて頭突きと蹴りを封じ込める。抵抗する間すら与えない。奇襲は完全に成功といえた。


完全に相手の力を奪い獲った後、


「何の用だ」


彼女の耳元に極めて無情な声を押し付けた。


「なっ・・・それは私の台詞だ、出会い頭にこんな事・・貴様正気かっ!?」


つい数日前に出会い頭に斬りかかってきたとは思えない物言い。だがそんな言葉にひるむ恭一でもない。

身をよじって逃げようとする相手に抵抗は無駄だとばかりに更に腕に力を込めて相手を締め上げた。


「何の用だ、と言った。答えろ」


「何の用事も無い、だから離っ!!」


より強く腕を捻る。


「答えろ」


「・・・・・昨日の夜お前がどこにいたか知りたかっただけだ」


「昨日・・」


ふっと昨夜の萌の姿が思い出された。それと同時に昨夜何もしなかったという事実が胸を苛む。


力が抜けたその一瞬、腕を解かれて逃げられる。

その逃げた彼女、凪は恭一と距離を置きつつ軽く肩を振ってから射るように睨んできた。意図した事だが屋上の出入り口は恭一の背後にあるので逃げる事は叶わない。


「まさかとは思うが、初めからそのつもりで彼女を助けたわけじゃないだろうな?」


「助け・・・」


人助けなど、そんな立派な記憶は恭一には無い。だが数日前にそんな事を言っていた者がいたような気はした。


それ以上の応えが無い恭一をどう思ったのか、視線から鋭さが幾分か抜ける。


「そうでないにせよ、お前達は怪しすぎる。何故一般人のはずのお前に彼女を助ける事ができた?

何故数日前のあの時あの場所にいた?

もし偶然だと言い張る気ならどうしてその後に何も聞いてこない?

そうだ、私は彼女ほどお前を信用する気にはなれそうにない」


内容の半分以上、恭一は理解しなかった。

本当にどうでもいい。彼女が何を喚こうが、障害だと判断した時点で駆逐すればいいだけの事。


だから凪の隙を伺って、ふと当然のようにそれに気付いた。


「今の行動からでも分かる。千里、お前は明らかに異じょ」


「それは、誰だ(・・)


「・・何?」


少し戸惑いを見せながら凪は恭一の視線を追って、反射的に胸元を両手で覆っていた。


「ど、どこを見ている貴様っ!!」


怒鳴り声を上げる凪の顔が赤いのは羞恥の為か。

まあ、そんな事。


「それは、」


もう一度同じ言葉を繰り返しかけて、背後の出入り口の止め具が軋む音に恭一は咄嗟に身を反して回し蹴りを放っていた。


「っと」


相手の手がそれを阻む。

初撃を軽く止められた事に恭一は一旦後ろに跳んで警戒の色を強く


「おいおい、俺以外だったらどうするつもりだよ、恭一」


呆れるように肩を落す和佐の姿を見止めて恭一は上げていた両腕を落した。だが警戒、鋭い視線はそのままに和佐を睨みつける。


「何の用だ」


「何の用って・・・・教室に行ってもいないから待ってる萌ちゃんの代わりに俺が探し」


ふと、何かに気付いたように和佐の視線が横に向かった。その先にあったのは胸元を両手で隠している凪の姿。

和佐は何かを心得たように手を打ってみせた。


「ああ、二人であいび」


「違うっ!!」


凪が叫んだ事に対して和佐は意地が悪そうに笑ってみせる。


「冗談だよ。凪ちゃんは兎も角としてこいつは逢引なんて絶対しねえよ」


景気良く肩を叩こうと近付いて来た和佐の腕を掻い潜って恭一はそのまま腹部へと深い一撃を決めた。

手応えは実に軽いものだったが和佐は腹を押さえながら大袈裟に後ろに下がってみせる。


「おまっ・・・今昼食時、だぞ。飯が食えなくなったらどうするつもり・・だ」


恭一が一睨みしてみせると和佐は何事も無かったかのように身体を伸ばした。


「で、萌ちゃんが待ってるからさっさと中庭に行こうぜ?」


「萌が待ってる。そう、か」


懲りずに近寄ってきた和佐にもう一発、とだが流石にそれは軽々と避けられた。


屋上から見下ろすと校舎の間、中庭に僅かな人垣と中央にいる二人を認める。一瞬二人がこちらを見上げたような気がして、そのまま視線を逸らした。

見られていた事で忘れていたが、ようやく恭一はいつもの事を思い出した。


昼食に、中庭に行く事。


またもや昨夜の萌の表情が脳裏にちらついて、今度は他の事がどうでもいい事に変わる。


「な、いただろ・・って、ぅをっ」


今度は自分から近付いてきた恭一に和佐が身構えるがそれをそのまま素通りして恭一は屋上のドアをくぐった。最早和佐の事も気にしていない。


「・・・・・ははっ、小恥ずかしーのね、俺」


残された和佐は照れを隠すように頭後ろを軽く掻く。

凪はどう反応すればいいのか分からないように戸惑いの表情を見せていて、それに和佐も一瞬気まずそうな表情を浮かべた。だがすぐに笑顔が浮かぶ。


「恭一ももう行ったし、そういう訳で俺もお邪魔様」


凪に片手を上げて挨拶、そのまま屋上のドアをくぐって恭一に続き・・・かと思うと、急に後ろを振り返った。


「凪ちゃん、夜更かしはお肌の大敵だよ」


「・・・何が言いたい?」


自然と身体が身構える。

和佐は気付いているのかいないのか、調子は変わらない。


「疲れてるんなら早く寝た方がいいって事。自分の顔、鏡で見てみたら?」


んじゃ、と軽く手を振って今度こそ和佐は屋上を出て階段を降りていった。

最後に残ったのは凪一人。


下から悲鳴のようなものが聞こえて見下げてみると中庭に集まっていた人の一角が見事に崩れていた。そしてその道を通る恭一の姿を認める。


「・・・早いな」


凝った緊張を落として、何かやるせないようにその口から小さなため息が漏れた。







七宝殿〜居間で興っている事?〜


実話「質問、サイコロの火って?」


萌 うーん、とりあえずここで一区切りらしいよ


和佐 へー、そうなのか?


萌 一応ここまでで物語の一章だって


和佐 んな、一章なんて言って良いのかね、この作者


萌 どういう事、和ちゃん?


和佐 そりゃ、一章なんて立派なものつけたら先書かなくっちゃいけないだろ


萌 うんうん、それで?


和佐 それだけ書ける根性はこの作者にはない!


萌 うわ、言い切っちゃった、言い切っちゃったよ、和ちゃん


舞 ま、大丈夫でしょ、事実なんだし


萌 ほえ? …舞ちゃん


舞 はい〜、愛しの舞ちゃんですよ


萌 ど、どこ行ってたの?この前急に消えちゃうから心配しちゃうよ〜


舞 ごめんね〜、急な用事だったから、ちょっとある祈願の舞を舞いにいってたの


萌 ほえ、舞ちゃんってそんなことできるんだ〜


舞 みたいなら今度見せてあげようか?


萌 え、本当!いいの?


舞 ええ、もちろん、萌ちゃんなら大歓迎。それでは、今度二人…


和佐 盛り上がっているところで悪いが話題を戻した方がいいぞ


萌 あ、そうだね



ドコッ


萌 あれ? 和ちゃん、どうしたの、急にうずくまって


和佐 急……に、腹に衝げ…き…が……(がくっ)


舞 で、今回の話だけど……これって前回と次章のつなぎにあたる部分みたいね


萌 え、舞ちゃん? でも、和ちゃんが……


舞 睡眠不足でしょ、それに構っているより早くしないともう時間ないわよ


萌 え、あ、うん……


舞 それで尋問って所みたい


萌 そうだね


舞 ……それにしてもお兄さん、なんて大胆な事を…萌ちゃん、羨ましい?


萌 ま、舞ちゃん!! わ、わたしは別にそんなおにいちゃんとみ、みっちゃ……く…


舞 真っ赤になった萌ちゃん……ああ、可愛すぎるわ


萌 あ、と…もう終わりみたい……ね、舞ちゃん


舞 もうもう、理性が………え、そう? …ええ、では………せーの、





萌&舞 ではでは、次回二章、十一話で遇いましょう〜



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