表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

溢れ出して、好き

作者: 咲紫

あなたの好きなところ。

普段はクールなのに私には見せてくれるやわらかい笑い方、猫を呼ぶみたいに優しくて甘い私を呼ぶ声、髪が乱れるくらいくしゃくしゃと私の頭をなでる少し骨ばった手、一緒に選んだシトラスの香水がふんわり香る首筋。

どれもこれも愛しくて好き好き

「好き」

「俺もだよ」

「え?」

ずっと隣で雑誌を読んでいた彼が急に顔をあげて微笑むものだから面をくらった。あ、私の好きな笑い方。

「好きって言ったろ?だから、俺もだよ。俺も好き。」

なんてことだ、声にでてたなんて。

無意識の内にもれていたと思うと恥ずかしい。

一気に熱をもった顔をどうにかかくすためクッションに顔をうずめた。

「どうしたの。」

彼がくすくすと笑う。

「なんでもない。」

言えるものか、あなたの好きなところを挙げていたら声にだしてましたなんて。

からかわれるネタを作るだけだと目に見えている。そんな恥ずかしいことはできない。

「そう?」

クッションでいっぱいの視界からは見えないけれど雑誌を机に置く音。どうやら本格的に私で遊ぶつもりのようだ。

「ね、教えて、どうしたの」

声がにやついている。感のいい彼だから私が恥ずかしくなっている理由にうすうす気づいているのだろう。わかっていて聞いてくるんだから意地が悪い。

「教えない。」

「ふうん。じゃあいいや。さっきのもう一回言って。」

「……なにを」

わかっているけれどあえて聞く。悪あがきが伝わるように小さな自己主張。

「好きって」

「さっき言った」

「うん。だから、もう一度言って。」

「……」

クッションを取り上げられた。

ああずるい、私の好きな笑顔で好きな声でそんなこと。


「好き」

「俺も、大好きだよ。」


ゆっくり覆いかぶさる彼の体。食べかけのままおいていたせいで溶けだした苺のヨーグルトアイスを視線の片隅に映しながら、ソファに横たわる。

いま視界は彼でいっぱい。



一回二回と軽やかに重なる唇。鼻をくすぐるシトラスの香り。好きがまた溢れ出す。


好き、好き


「好き。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ