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桔梗は今日も開かない。

ツイッターでお話したのを書きたくなってしまいました。

よろしくお願い致します☆

深い山奥木々が生い茂る森の中…。

銀の長い髪を高く一つにまとめた水干によくにた姿の男性が目を閉じたっている。


風が吹き抜け音を運んでくる。

バシャッと水音、ブーンとした羽音と共にドタドタというトロい足音がしてバタンと何かが倒れた。


「ふぇえええ~ん、あっちゃーん。」

俺を呼ぶ声がする。

清界師井草敦也はピクリと瞑想から覚めた。


奥深い山の細い林道小柄な女の子が必死で頭を抱えて身を縮め伏せていた。

そこに巨大な…この世のものとは思えない一メートルはある…茶色の物体…。


どう見てもセミにしか見えない生き物が女の子に突撃しようとしていた。


「あっちゃーん、助けて~。」

「優香里!」

ちっと舌うちして敦也動き出した。

この静かな空間で力高めようと瞑想していたのに…いつものごとくかと敦也は思う。

ミーンミンミンとセミが何匹も優香里(おんなのこ)に襲いかかる。

「バカ!結界をはれ!」

優香里のところまで駆けながら敦也が叫んだ。

「ふぇえええん、張れません~。」

優香里が伏せたまま泣いた。

一メートルのセミ突撃されれば小柄な優香里はひとたまりもない。

「このバカ!能無し!」

敦也は叫んで印を結んだ。


はっという気合いと共に力が辺りを覆い、セミが弾き返された。


優香里が泣きながら身を起こした。

押さえていた手を外れると茶色の三角のみみがピョコンと飛び出た。

よくみると着物のスカートの裾からくるっとしたしっぽが見えている。

同色のゆるい癖毛はお団子にされフワフワ、紫の瞳は涙に濡れている。


明らかに愛らしい少女は獣人である。


「ふぇえええん、あっちゃん。」

うるうるした目で見上げる優香里を敦也は冷たくみた。


長身の敦也は清界師の武器…人によって違うが敦也は錫杖のような杖を持ち直した。

みみが茶色にとがっているのは獣人だからである。


「なんだって化けセミの群れに襲われているんだ?」

敦也は巨大セミに更に錫杖をひとふりして攻撃印を発動した。

炎がまだ激突してきていたセミの群れに襲いかかり焼きはじめた。

「み、水の清術印が暴走してぇ。」

優香里が紫の瞳を潤ませた。

「それが化けセミどもにぶつかったと?このど阿呆!!」

敦也は優香里を怒鳴り付けた。

優香里が耳を押さえる。


獣により近い優香里は耳が敏感なのである。


「ふぇえええん、怖いよぉ。」

優香里がわめいた。

「まったくなんだって老師は俺にこんなへっぽこの面倒を任せたんだ!」

いらだたしく術の精度を敦也は上げた。


こいつのせいで俺の人生設計台無しと敦也はいつものごとく思った。


化けセミの丸焼きが出来上がる。


紫世界はかつて光の神レーホヘルトを残してすべての神々が眠りについた滅びかけた世界だった。


しかし…闇と空間の魔王の出現により世界は再び活気づき蘇った。


今…世界は神々と精霊に魔族の復活により力に道溢れ活性化しすぎている。


活性化し過ぎた力を受けたのは主に自然界の生き物や植物だった。

有るもの巨大化し有るものは変質して動き出した…。


清術師はそのいわゆる『化けた』生き物植物を浄める技を納めた一族である。


敦也はそこのいわば優秀な若き清術師である。

藤森(フジモリ)優香里(ユカリ)は一族のお嬢様で秘めたる力…があるかどうかはしらないが…。


とりあえず優香里の祖父で一族の長老、藤森(フジモリ)紫園(シオン)に押し付けられたのである。


敦也は同期から逆玉とか羨望の眼差して見られているが間違いなく貧乏クジを引いたと思っている。


彼の人生設計は清術を極めて一流の清術師として稼ぎと名声を手に入れてこの国『ハテノヤシマ連合国』に名をとどろかせること…あわよくば世界に名を売る事である。


今にところお荷物な優香里のせいでその第一歩すら果たせていない現状にイライラしている敦也であった。


「ほら、化けセミの丸焼きができた、食え。」

敦也が焼けた化けセミの丸焼きを木の枝にさして差し出した。


明らかに原型を保っている。


「い、いらないですぅ。」

優香里が座ったまま後ろに下がった。

「力がつくから食うのが常識だろうが、偏食せず食え。」

敦也がセミの丸焼きを優香里に押し付けた。


力溢れた化けたものは摂取すると力になるので退治後の処理は食べるのが清術師の常識である。

食べきれない時に不味い部分だけ処理して専門業者に持ち込むのである。


「ふぇえええん、虫嫌いですぅ~。」

優香里が泣き真似した。

「うるさい、黙れ。」

敦也はそういいながら自ら化けセミの丸焼きに食いついた。


力が身体に入ってくるのを感じた。

ためらってる優香里を睨み付けるとおずおずと口をつけだした。


優香里の紫の瞳が色を増した気がした。

額にうっすら桔梗ににた紋章が浮かび上がる。


なんだってこいつに清王()術師の印が出るんだ。

不機嫌そうにセミをかじりとった。


桔梗清王紋が有るものは稀有なる清王()術の使い手のはずである。


しかし優香里にはその片鱗すら見えない。

紋章詐欺だと敦也が思うのも当然であろう。


むっときた敦也は優香里の桔梗清王紋の薄く浮き出た額にでこぴんした。

「いたいぃ~あっちゃんひどいよ~。」

優香里が額を両手で押さえて涙ぐんだ。

「呑気すぎ。」

敦也はプイっと横を向いた。


「食ったら帰るぞ。」

立ち上がって服をはらいながら敦也が辺りを見回した。

騒ぎしすぎたせいか辺りが騒がしい。


木陰に大きな化けたもののしっぽがチョロリと見えた。


「ひゃん。」

毒々しいピンクの化けトカゲが優香里のしっぽを狙っているのをはたきおとして。

「全くお前のせいで修行が進まない。」

敦也は乱暴に優香里の手首を持った。

懐から転移符を取り出して発動言をとなえると紫の光があたりを覆って視界が暗転した。


次の瞬間には紫の瓦屋根が連なる町のような建物郡が目の前に現れる。


「帰るぞ。」

ひときわ大きいお屋敷の門をくぐろうと敦也は優香里を引っ張った。

「ええ〜怒られるよぅ。」

優香里が嘘なきをした。


修行してこいと出されたのにこんなに早く帰ったらおじいちゃんがぁ〜。

と屋敷の扉をくぐりながらグズグズ言っているのを聞きながら敦也は思った。


本当に貧乏クジ引いた…俺の人生設計台無しだと…。


いずれ銀の清王術師使いと呼ばれる井草敦也はまだまだ己と清王術師ユカリの巻き込まれていく騒動を知らず己の境遇を嘆きばかりの若者であった。


さてさて…どうなることやら…。

駄文を読んでいただきありがとうございます♪

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