第6話 久しぶりに、笑った
※2010.10.30.修正
二十四人の神達――第三世代の神・オリュンポス神らと、第二世代の神・ティーターンの神らは、世界の統治権を巡り大戦争を起こした。
その戦争は、大地と海を炎上させ、暴風を引き起こし、唯一の世界に消えぬ傷跡を残すまでに過激化した。
勝者は、第三世代の神であるためにティーターン神よりも強大な力を手に入れたオリュンポス神。
オリュンポス神は戦争によって粉々に破壊された世界を三つに分け、第四世代の神に託した。
『その第四世代の神っていうのが、俺みたいな三柱神と大神の四人の神様、ってことだ。
第二世代・第三世代の神々は、あまりにも強大な力をもった神が何人もいたから10年にも戦争が長引いた。
だから第四世代の神は、"人数は少なく、トップのみが至高の力を持つ"ということを考えて創られたんだ』
「ふぅーん……。ってことは、やっぱり最後の試練は戦闘ってわけ?」
『その通り、っていうか、全ての試練が戦闘』
戦闘か。知識テストだったらどうしようとか思ってた分、肩の荷が下りた感じだ。
知識なら勝てる気は毛頭ないが、戦闘なら負ける気はしない。これでも月森家直系だ、子供の頃からおじじに刀術の最高峰・真月光を仕込まれてる。
「!」
と、そこで、あたしは扉の前の多数の気配に気付いた。
既に気付いていたらしきフルエルトはニコニコ顔で扉に近づき、カチャリと扉を開けた。
『こるあああああああああああああああ――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!』
その音量といったら、もう。頭がぐるぐる。
『ちょ……ッ、フルエルト様、鼓膜が破れます……『てめぇらが仕事しねぇからだろーがッ! 神様ナメんなよ、盗み聞きなんてしてる部下にはどんなお仕置きが下るか……』……フルエルト様だって普段仕事サボってばっかじゃないですかァ』
ここからじゃあまり見えなかったが、どうやら盗み聞きをしていた天使は3人だったらしい。
ひょこひょことソファーから降りてフルエルトの後ろから天使らを覗いてみると、そこには二人の金髪天使、そして一人の黒髪天使がいた。
三人とも下っ端っぽいが、かなり美形だ。……フルエルトといい、ここは美形の宝庫なのか?
『この方が四人目の大神候補ですね、フルエルト様!』『見たところ大した力の持ち主でもないようだが……』
黒髪天使の言葉に、あたしの脳内血管がぷちっとイってしまった。
「だらァァアアアア!! ヤローてめーぶっ殺すッ! これでも月森家直系だっ、そこらの下っ端には負ける気はしないね!」
刀を抜き放って黒髪天使に切っ先を向ける。脇でフルエルトが慌てる。
『ちょ、琉藍さんカンベンしてくださいお前もマジで謝れ殺されるぞオイコラ聞ーてんのかセイドっ! 琉藍もお願い構えとらないで小声で「ブッ殺す」なんて呟かないでェェェェェェ』
『いつもは荒れまくりなフルエルト様が押さえ役に回るなんてなー』
『暢気なこと言ってねーでお前も琉藍を宥めろォォォォ!!』
フルエルトの慌てっぷりといえば、思わず「ぷっ」と噴きだしてしまうほどだった。
「やばっ……切っ先震えて……ぷふっ、フルエルト慌てすぎだって……ッ」
男四人がぼーぜんとあたしを見ている間、あたしはずっと一人で笑いっぱなしだった。
ここまで笑ったのは、本当に久しぶりかもしれない――。