第3話 歯車が廻り始めた
バサァ・・・・・・
フルエルトが大きく広げた翼は、フルエルトの体全体を包んでも余りあるほど大きな一対の翼だった。それはとても神々しくて、羽根があたしの頬を優しく撫でた。
「ちょ・・・・・・なんか、スゴいんだけど・・・・・・」
あたしを世間一般的にいうお姫様抱っこで抱えたフルエルト。お姫様抱っこなんて初めてだから、心臓がバクバクいってる。
『神ナメんなよ。因みに大神はコレが二対だ』
「すごっ」
ということは、あたしはこんなもん抱えて飛ぶことになるのだろうか。
いやいやいや、でもまだなるって決めたわけじゃないし。
と思うものの、心の中では何かやっぱり面白そうな、好奇心が疼いているのも確かだった。
『そんじゃ、飛ぶぞ。しっかり掴まってねーと、落ちるからな!』
「えっ、飛ぶって・・・・・・まさか・・・・・・」
『ご名答だ。そら、行くぞ!』
「え、え、え・・・・・・えええええええええええ」
飛行機すら乗ったことのないあたしが初めて空を飛んだのは、なんと翼によってでした。科学文明ばんざーい。
フルエルトは元々宙に浮いていたのに、地面を蹴るかのような軽さでトンッと宙を足の裏で叩いた。すると、ふわりとした浮遊感があたしを包み込み、次の瞬間フルエルトが翼をはためかせた時に既にあたし達は飛んでいた。それも、物凄い速さで。
思わず腕を緩めかけたが、フルエルトが耳元で『ちゃんと掴まってろ』と囁いたせいで慌ててフルエルトの首にまわした腕に力を込める。フルエルトの顔が近くなる。
うわ・・・・・・コイツ、案外カッコよかった、かも。
最初に見たときにも少し思ったが、コイツ、実のところ折り紙つきのイケメンだ。
西洋人かと思うくらいに眩い短めの金髪に、切れ長でツリ目気味の碧眼。背も結構、高い。多分180くらいだ。に対しあたしは170前半。
じーっと遠慮もへったくれもない視線でフルエルトの横顔を眺めていたせいか、フルエルトは横目でこっちを見た。気恥ずかしさに思わずつい、と顔をフルエルトの肩に埋める・・・・・・って、あれ。マズくね? この状況。
『ちょ・・・・・・、どうした?』
「・・・・・・なんでもない」なんでもなくはないだろ自分! と突っ込むものの、顔が赤くなるのを見られたくはなかった。くだらないプライドだ。
あたしの様子を、フルエルトは高速で空を突き抜けていくことへの恐怖と受け取ったのか、あたしを抱える腕に更に力が加わった。それも、あたしが痛くない程度に。
『もう少しで雲を抜ける。手前が少し苦しいから、目ぇ瞑って息止めてろ』
言われたとおり、目を固く瞑って息を止める。すると、ほどなくして上からのGが更に強力なものになった。
「(うわっ・・・・・・マズい、押しつぶされる・・・・・・!)」
実際は、フルエルトがあたしのために障壁を張っていたらしいが、それでもダメージは結構大きかった。
少しすると、突然強力なGの元から開放された。
『・・・・・・目、開けてみろ』
フルエルトに囁かれて恐る恐る目を開けてみると、そこには、
とてつもなく巨大な、神殿があった。
はい、読者の皆様はきっと琉藍ちゃんの感情に気付かれたと思います。
が、今はそれを言っちゃあいけません!