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神様は結構適当らしい。  作者: 月森 薫
第1章 神様の日々の始まり
11/12

第10話 刀に懸けた誇りを賭けて

ついにラスボス的なアノ人、センド君ですよ。

この子は書くのが結構楽しかったりする・・・・・・((


※2010.10.23.修正済

「次は俺だ」


 あたし同じくして刀を手にしているセンドは、サクトが下ったのと入れ替わりにあたしの前に立つ。

「まずはちょっち待ってね。刃毀はこぼれしてるからサ、強化させてもらうよん♪」

「チッ、しゃーねーな」

 そこで少し離れたところで見ていた男三人が「おおぅ!?」という顔をしたのは何故だろうか。

なんてことは全く気にせず、あたしは刀を前に構える。

真月光しんげっこう破壊閃光ハカイセンコウッ!」

 柄の根元に指を当て、呟いた後に一気に切っ先まで指を滑らせた。

そして、滑らせた後の刃には、眩いほどの蒼白くも神々しい、月の光が。

 刃の切れ味が蘇った。

「……、いくぞ」

「いつでもどうぞ」と言いつつも、あたしの背中には冷や汗が流れていたし、顔にも少し汗がにじみ出ていたのだが。

 両者共にダッシュで切迫する。

至近距離で鍔迫り合いを起こし、刃がこすれるたびに忙しなくカチャカチャと音が鳴る。その音の切れ間には、この場には不自然な「リィィィン」という、鈴よりも透き通った音が鳴る。

「……この音は」

「疑問形になってない疑問形で問うのやめれや。

 これはなんつーかな、あたしは便宜上"月の音"って呼んでるけど……効果音みたいなもん」

 説明になってない説明をすると、センドはぷいと顔を背け、ボソッと呟いた。

「……綺麗な音、だな」

ぽかん、とするあたし。その隙を縫い、センドの刀が懐まで入ってきた。慌てて意識を戻し、刀を下段から降ることで撥ね付けた。

「あんた、容赦とかいうもんはないの? こちとら月森次期頭首たる琉藍さんでもさぁ、連戦三戦目なのよ? あんな無茶なこと普通するかね?」

「する」

「ありゃ、即答」

 今の撥ね付け、実はヘタすると自分のことまで傷つけかねないものだった。懐まで深くもぐられると使えなくなるし。

こっちは三戦目で少なからず疲労しているのだ。そこへ、ほぼ切り札といってもいいほどの"破壊閃光"の投下で、戦意は衰えていないものの肉体的には結構参っていた。

「まーいーや。なんならさっさと、勝負をつけるに限るッ!」

 再び切迫するあたしとセンド。今度は幾度も刀を触れ合わせ、正面からと思いきや、次撃は横殴りだったりと、様々な角度で打ち合った。

「いいぜ、これでこそフルエルト様の見込んだ異例の大神候補だ、女」

「女と甘く見てっと、ひっでぇ目にあんぜ」

「ハッ、口調だけ見てると男みてーだな」

「何とでもいいな、これがあたしだ!」

 センドの皮肉なぞ露ほども気にしない。立場上そんな小さな皮肉程度でグダグダ言ってたらすぐに身を滅ぼす人間だしさ、あたし。

センドは一度己の刀をあたしの月閃げっせんに叩きつけて距離をとる。何がくるかと構えると、案の定強烈なのが来た。

「月夜の如き黒に沈め! クロムデスペルッ!」

 センドが刀を真横に一閃すると、センドの身体の前に魔法陣が染み出すように浮かび上がる。その魔法陣に、あたしの本能は危機を覚えた。刀を身体の前に構え、防御の型を作る。

 魔法陣が一際強く輝いた途端、陣の中央から膨大な量の闇が出て来た。物凄い勢いであたしのほうへ向かってくる……ッッ!!

「はッ・・・・・・」

 今までの二人もそれなりの実力者だった。が、コイツの実力はそんなもんじゃなかった。

腕がしびれかけるのを必死で我慢し、あたしを飲み込もうとする闇を受け止め続ける。噴射のエネルギーを最大限に活用し、食いしばる歯の間から言葉を搾り出す。

「月夜の月は、あたしの専売特許なんだよ・・・・・・ッ」

 フルエルトが何か言っていたが、闇の渦の中で聴力もトんだのか何も聞こえない。唯、自分の声だけが響く。


「こんな生温いヤミ、あたしのヒカリで隅から隅まで、照らし尽くしてやんよッ!」


 言の葉と共に――――破壊閃光の光がより一層強くなる。

「だらァッ!!」

 気合の言葉と共に刀を一閃。闇を薙ぎ払い、高らかに叫ぶ。

「月閃奔流ゥゥゥゥッッ!!」

 先ほどまでとは比べ物にならないほどの月光の奔流が、センドへ直撃した――――。




「だいじょーぶ? センド」

 倒れ、へたり込むセンドに、あたしはすっと手を差し伸べた。

先ほどまでの悔しそうな顔が、一転してぽかんという間抜けな顔になる。

「甘くみてっとひっでぇ目にあうつったじゃん? までも。危うくあたしも負けそうになったし・・・・・・また戦おうよ、センド」

 そう告げ、ニッコリと笑む。視界の端で何故かフルエルトが渋い顔をし、サクト&ルクエが相も変わらずにあにあしていた。

「・・・・・・、自分で立てる」

精一杯の強がりなのか、ふらふらなのに自力で立とうとするセンド。その足取りはおぼつかない。よほどダメージがきつかったようである。

 危うく倒れそうになったセンドを支えたのは、もちろんあたしで。

「まだダメージ残ってんしょ。ムリするな・・・・・・って」

 こちらとしても、ダメージは未だ健在だった。思わずフラついたばかりか、やっとのことで支えたセンドまでも巻き込んで倒れる。

「お、おいっ! 大丈夫か!?」

 センドの声が遠く聞こえる。

続いてこちらに駆け寄るばたばたという忙しない足音が地面を伝って耳朶に響いたが、あたしには「大丈夫」というほどの気力体力すら共に残っていなかった。

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