飢えているだけで御座いますよ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
全てが全て、抽象的な小説です。
でも意味はあります。
どれ程心が大丈夫だと感じて居ても、体というのは正直で、真っ先に悲鳴を上げる。
最初の違和感は毎月訪れるものが来なくなった事からだった。まぁそのうち来るだろうと高を括った数日後、高熱を出して倒れ伏した。その間、訪れるであろうものは一切来なかった。ただ全てが過ぎ去るまで、体の全てが満ち足りるまで、巣穴に隠れた様だった。
そうしてただただ自らの体を甘やかした後、漸く顔を出した。今ならどれだけ自分を甚振っても、大して構わないだろうと、そう判断した様だった。全くもって虫が良い。
あぁ、ところで、喉が渇いたなぁ。
「はてさて、君はこの節、体を壊したのではなかったかな?」
目の覚める白髪、踝まで。女性ならば誰もが惹き付けられる様な顏の殿方は、鷹揚に笑って首を傾げられた。簡単な確認問答だった。
「ええ、今は落ち着きまして。ですがまた新たな波が、嵐が体を襲っております。故、大変畏れ多くも、御足労願った次第で御座います」
ハーブの香り漂う特製のブレンド紅茶一杯に、飲み明かしたグラス三杯の水。新たに杯を満たす為、無口なマスターが水を注ぐ。それに小さく礼を申し、また煽る。舐めるように、体を満たす様に、性急に貪る。まだ、足りない気がする。も一つ欲しい。
それを黙って殿方はご覧になっていらした。浅葱の目が、『手に負えない』と詰る。
「夢枕を這った白蛇が、腹を天に向けて、舌を出しておいでだったのですよ。丁度、『今のお前を救えない』とでも仰る様に。全くもってその通り。神をも見放す病で御座いました」
体の熱が下がらなかった。毎晩、毎晩、日照りの様な暑さを味わった。その、神をも見放す病故、全てが機能不全になるほどに。でも今は大丈夫。本当に、全てが全て解放された様な万能感。あぁ、水が美味しい。
私の恍惚とした表情に反し、殿方はこめかみを押さえ、静かに溜息をつかれた。
「……君は本当に手に負えない。誰かが歯止めをかけなければ、すぐにでも蔑ろにしだす」
「蔑ろにしても構わない程に、飢えているだけで御座いますよ」
マスターが気を使い、また新たに杯を満たす。それをまた煽る。口の端から垂れても構わない。も一つ、も一つ欲しい。渇いて仕方がない。
「困ったものだ」
人間の体って上手く出来てるんですよ。
なるべく限界を迎えない様に、上手く調節するんです。
これが冒頭文です。
体が比較的まともになったから、新たな難を受け入れた。
けれども彼女はまた、平気で甚振る真似をします。
それこそ、体の調整をぶち壊す程。
休んでなきゃいけないのに、外に出て紅茶飲んでます。
水をやたらに煽る事からもお分かりで、実際に今もかなり限界。
とゆか、紅茶の利尿作用は有名なので、喉を渇かす為にわざと飲んでそうですね。
じゃあなんでそこまで自分を蔑ろにするか。
という疑問。
それは多分、構って欲しいからだと思います。
自分が大切な人がボロボロになりながらも、平気な顔して動き回っていたら、恐らく周りが止めると思うんですよ。彼女はそれを望んでいる気がします。
でも多分、心で分かってない気がします。
分かってないけど、体では多分、分かってる。
そんな状態は『救えないよね』という話。