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LIGHTNING EDGE-神々に挑む剣 -  作者: 金属パーツ
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一話 シーン7『約束』

ユリは急いで地上階に戻り、ギルド館を飛び出した。


「ん?おーいレビアンじゃねえか!!」


「えっ?あ、イベリスさん」


「よお、一月ぶりぐらい?元気してた?」


彼女はイベリス。

このバリサドレを拠点とする20人規模の傭兵団「紅百合団」の団長を務めている。


そこでは、神獣討伐の支援戦闘員の派遣から日中夜間の警邏、他国への荷物運搬

護衛まで活動を広げている、大変活発に活動している傭兵団であった。


「ずいぶんご無沙汰だったねえ?

店に行ってもあんた全然来ないし、心配してたんだよ?」

イベリスは気さくにユリに近づくと、人目も気にせずその腰を掴んで抱き寄せた。


「あっ・・・すいません、このところずっとゴタゴタしてて・・」

「ふぅん、大変なんだねぇ。勇者の仕事ってのも」


イベリスの手がユリの顔に触れると、その耳元に唇を近づける。

そして他者には漏らせないとっておきの情報を囁くように伝えるのだ。


「それだったらこの街の『私ら向けの店』情報も、

最近は仕入れられてないんじゃないかい?」

「ああ、そうですねぇ。私も行きたいんですけどこの所、全然でぇ」


「だったら一つデカいネタがあるよぉ。

スミレが経営してる『Violet lips』あるだろ?

あそこさ、久々に『例のイベント』開催するってよ?」


「!!それほんとですか!?」

ユリの目が輝きだす。それは是非とも行きたい、逃せない。

「ただ、予定が急でね・・・明日の晩なんだ。大丈夫かい?」

ユリの口の端からヨダレが一筋零れる。

「・・・じゅるり、ぜーったい行きます!行ってみせます!

あ、その時にはもしかしたら、もう一人連れてけるかも知れないので、

そしたらヨロシクです!!」


ユリの反応を見て、イベリスは二ヤリと笑顔を浮かべる。

そしてまた耳に唇を近づける。

「溜まってきたら、またいつでも私らの所に来な?

うちの団の皆、気に入ってんだぜぇ?

あんたのテ・ク」

イベリスはペロリとユリの耳を舐め上げる。そしてゆっくりと手を放した。

「んっ、あぁ・・・はい、時間が出来たら、是非」

ユリの頬がほんのりと赤らむ。


「あの・・その・・・じゃあ、すいません。ちょっと急いでるので、これで」

名残惜しそうにユリは二歩三歩とイベリスから離れる。

そしてペコリと頭を下げると、時間がないと思いだしてまた駆け出したのだった。


「ふぅん、また新しい子を見つけたのかい?

寂しいねぇ、私達だっているってのに・・」

その小さくなる後ろ姿を残念そうにイベリスは眺めていた。



ユリが目指したのはバリサドレ南側商業区であった。


その中央近くには先述した、数々の商店が並んでいる区間があり、

そこを更に町の外側へ向けていくと倉庫区画がある。

そこを抜けた先に、庶民達が自由に出店しているバザー区画が存在していた。


皆、畳二枚ほどのスペースに木組みの店を構え。肉や魚類〈港は運送業の船が独占しており漁船が殆ど出られないため、主に川魚がメイン〉、甘味から格安の日用品や古着など幅広く売られている。


本当なら、その探し人を見つけることに時間が掛かるかと思われたのだが、

今日は驚くほどスムーズに見つけることができた。


「レインさん、ヤッホー!」


店番をしていたその人に話しかけると、直ぐにユリのことを見てくれた。


「あら、ユリちゃん。

いらっしゃい。今日はどうしたの?」

彼女がレイン。

肩に触れる程に伸ばした髪は金色に輝きを放つようで。

今日の髪型は三つ編みを後ろで纏めて巻き上げた「シニヨン」にしていた。


そのため顔が隠れずに、しっかりとその透き通るような白い肌とコバルト色をした瞳が一層、際立っている。


ほっそりとした腰つきなのに、胸部や臀部など出る所は出ている。

それらがストマッカーやペティコートですら隠しきれない程の肉の暴力が隠れ潜んでいることは、ちまたでは秘かによく知られていた。

その魅惑の肉体美はいつも、ユリや他の男性客をムラムラさせる。

なのに本人に自覚がなく、そして誰に対しても明るく接する人当たりの良さと、

まさにこのバザーでは知らぬ者が居ないほどの看板お姉さんなのだ。



冒険者をしている旦那さんは現在、高報酬だからという理由で、中西戦線に長期

派遣されており、その間、一人で六歳と3歳になるお子さんを育てる

2X〈女性に年齢を訪ねてはいけない〉歳のお母さんだ。


生計を助けるためにとバザーの日雇いとして働くのは週のうち五日ほどで、最低二日は子供達のために時間をとっているそうな。

今日は果物屋であった。


品ぞろえはリンゴが6割、あとはオレンジが三割で残りは店主の趣味なのか、

わずかばかりの海外から輸入された干し柿やイチゴなどを使ったドライフルーツ、ベリー系のジャムの瓶が並んでいる。


「今日は何がご要り用かしら?」

「えっと・・・レインさんのおススメはなんですか?」

照れくさそうにユリが尋ねる。

「そうねぇ・・・・今日はその干し柿なんてどうかしら?

たしか、ユリちゃんのおばあ様は極西の方だったわよね?

懐かしいんじゃない?」

レインは腕をうんと伸ばして店の端にひっそりと置かれたそれらを指した。

ユリはそちらの方を


見ない。


ユリはボーっとしながらレインの顔を見つめていた。


その瞳、その鼻、唇、顎から首筋、服の襟元から除く鎖骨、その全てがユリの

ハートを高鳴らせる。


「わかりました、それ全部ください!」

即答だった。

もしも正気であったなら、その一個でリンゴ五つ分ほどの価格になる高級食品を

買うのをためらったかも知れない。

しかもそれがざっと10個は在庫があった。つまりリンゴ50個分もの出費である。


「あ・・ありがとうございます。

そんなに買って頂いて、何かわるいわねぇ」

レイン自身、まさかそこまで気前が良い返事が返ってくるとは想像もしなかった。


ただユリはレインと知り合った日から、度々会いにきては商品を何かしら

買ってくれるお得意様であり、そのノリで一つぐらい買ってくれたらな、と思っていた。


すこし悪い気がしたが、だがその売り上げはそのままレインの評価や収入に直結する事柄。

嬉しくないわけがなかった。


早速言われるがままに大きな紙袋に品々を入れていき、それをユリに渡す。


「はい、おまちどうさま。また御贔屓に、あり・・・・」

ありがとうを言い終わる前、ユリは紙袋を受け取らずにそのレインの手を外側から握った。

「あ、ああの、、そ、その・・・・実は今日は、か、買い物ついでに、

レインさんに、お願いしたいことがありまして・・」

興奮と緊張でユリの口が旨く回らない。

「・・・・お願い?」


ああそうか、よくは分からないけど、この大量購入はその頼み事に対する、返礼の先渡しだったのかしら?とレインは思った。

しかし、けして嫌な気分がしたということはなく、レインはニコニコとした笑顔をユリに向けるのだ。


「私で良ければ、できる限り力を貸すわよ?なんでも言ってみて」


「じ、実は・・・・」

ここでどんな約束が交わされたかは、また次の機会にて

次回の更新は、趣味のちょっとだけエチチな短編を考えています

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