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LIGHTNING EDGE-神々に挑む剣 -  作者: 金属パーツ
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4話シーン6「孤独な戦い」

ドシン!

「あいたっ!?」

底なし沼のようになった床に飲み込まれたロックが底を突き抜けて、新しい空間に出た。

そこには石畳のような地面があり、そこに叩きつけられるように着地する。

「あいってて・・・何がどうなってんだよ・・・ここは?どこだ?」

ロックは打ち付けた腕や頭部を撫でさすり、痛みに眉間を歪ませて辺りを見渡す。

「こいつぁ・・」

そこは明らかに館の内部とは違っていた。

木造で古めかしい質感の先ほどまでとは違い、

ここはいくらかの松明が灯っているものの、どうにも薄暗い。

広さといえば自分達が与えられていた部屋と同程度ぐらいか?

端から端まで十歩ほどで届いてしまいそうだ。心なしか狭い。

そして微かに漂う異臭、石を積み重ねたようなゴツゴツとした壁と

石畳の床はどこか地下室を思わせる。

「これは、まるで牢獄か?それとも・・・」

ロックは見渡す内に、とある一か所が目についた。

壁の一面に特に赤い何かの汚れが目立つ面があり、そこには何かを捕らえるような鎖付きの首輪。

それに繋がれていた何かの骨が一体分。

四つ足の動物というより、二足動物のそれに見えた。

「まるで、監獄か処刑場、なのかもな・・・」

見つめていると、そのドクロの眼孔の奥から闇が手招きをしているように

錯覚する。まるで自分が味わわされた苦痛を伝えようとするようで、

お前もこうなるんだというようで。

その壁を彩る赤い血はそのドクロのモノなのだろうか?

まだ酸化して黒く変色していないそれはつい先ほどぶちまけられた

ようにも思えた。

その痛々しい様がなお強く恐怖心と忌避感を引き立てる。

「見てて気持ちのいい場所じゃねえな」

どこか、出口はどこに?

辺りを更に注意深く見渡す。

ズズズズズッ

その時、天井の方から何か重い物がずり落ちてくるような異音が響く。

「お、おいおい・・・まさか、冗談だろ?」

見上げるロック。その視線に見えたのは、何か白いもの。

何か生き物の背中?

白く細やかな人の肌の一部が覗いている。

だが、その先の部位が見える度に徐々に人外を感じさせる異常な部位が見え始めた。

「ま、まさか・・・アイツが追ってきやがったのか!?」

ロックの悪い予感が当たる。

その何かはズリズリと壁から押し出されるように排出され、ズドンと地面へ落着する。

そしてゆっくりと、そのアンバランスで歪な体を立ち上がらせた。

「・・・るおおおおっくううううううううううううううううううう!!

ずえ゛っだいに゛、に゛がざな゛い゛がら゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「・・・まじかよ」


ズル ズル ストン

「イツカ、無事、着地〈ドヤァ」

イツカもまた、あの床に飲み込まれて新たな空間へと落とされる。

そこはロックの落とされた場所とは大きく異なっていた。

床材や壁材は館とほぼ同じ。

「・・・だんすほーる?」

ただその空間は広く、百人ほどの人間を収容することを

想定しているかのようだった。

壁には蝋燭の灯った燭台などはなく、だが高い天井に取り付けられた

シャンデリヤの明りが眩しいほどにこの空間全体を照らしているのだ。

「おやおやおや?私を引いたのはアンタかい?」

突然響いた声の方を見る。

この部屋へと通じる暗い通路の一つから、誰かが歩いてくるのが見えた。

「お前・・」

それは三人の侍従の一人、料理人のモニンだった。

「まあ今更?余計な芝居を続ける意味もねえよな。

当館の主、女神メティース様の眷属が一羽、朝焼けのモニンだ。

ここから出たけりゃ、私を倒しな」

彼女は厨房に立つ料理人のような白い衣装を身に纏い、

その両手には、長剣のような出刃包丁を二本握られていた。

その一振りをイツカの胸元辺りに向けた。

その瞬間、モニンが通ってきた通路が消し去られる。

「・・・逃げ場、なし。なら、イツカ、絶対に、勝つ!」

それを受けて、イツカは腰に下げた二振りの剣を抜く。

まだ封印が解かれていない、黒い幕に包まれた二刀。

それをしっかりと構え、その内の片方をモニンの挑発に応えるように、

彼女もまたモニンに向けた。

「いいねえ。飲み込みが早い戦士は嫌いじゃないぜ!!」

開始の合図はない。二人、同時に駆けだし、その一撃目を

お互いの刃を激しくぶつけ合った。



「いいいいいいやあああああああああああああああああああああ!!!!!!」

地面に飲み込まれ、新たな空間に落とされたベロニカ。

そこはまるで地上に放り出されたかのように、太陽を背にうけて空の上から落ちていた。

いや、地面から空に向けて落ちている?

もう上下左右の感覚が狂い、自分の向きも分からなくなっている。

繰り返し強い突風が体に打ち付け、自慢の胸部をもぎ千切らんと激しく揺らした。

「イタイイタイいたい!助けて誰か!か、体がバラバラになっちゃうからぁ!!」

しばしの時間、落下し続ける。

それは数秒か数十秒か数分か。

体感ではとても長く感じられる時間を経て、ベロニカの視界に緑に生い茂る木々を見た。

〈まっず!・・・このまま減速できないなら、もうこのまま突っ込むしか!?〉

浮遊魔法なんてない。パラシュートなんてこの世界にある訳がない。

だが底に見えるあの緑の木々のいずれかに止まれなければ自分の命はないだろう。

ベロニカの脳裏にそんな恐怖があふれ出る。

「てえええええええええええええ!!イツカ!カティ!!

だあずげでええええええええええええええええええええええええええええ!!」

この場に居てくれなかった仲間達へ向けて絶叫。

その身に受ける風圧が彼女の体を激しく揺らす。

その摩擦熱は高まり、ベロニカの体が

大気圏に突入したz〇kuかというほど強く赤熱していた。

その間にも少しずつ確実に地面へと近づいている。

このまま何もしなければベロニカに明日は来ないだろう。

〈そしたらもう、カティに会えない・・イツカにも会えない・・・〉

そうして彼女を失った仲間達はきっと激しく悲しみにくれる。

そんな漠然とした妄想が一瞬のうちに彼女の脳内を駆け巡った。

「そんなのイヤ!!」

ベロニカはがむしゃらに手足をバタつかせた。

〈いやだ!絶対に死にたくない!!〉

全力で手足をバタつかせる。どんどんと視界に木々が迫る。

その木々の細かな枝先が視認できるほどに接近している。

もうダメか?助からない!?

そう覚悟してついに両目をギュッと閉じた時である。

__仕方ねえな。ちょっとだけ力をかしてやるよ __

それはどこからともなく聞こえた誰かの声。

ベロニカの両手にはめられた籠手。

そこにそれぞれ取り付けられた二つのオーブが輝く。

それぞれには精霊や地霊などに語り掛ける交信機としての機能と

オーブに込められた術式を発動させるための制御装置としての機能が納められている。

その内、交信機のオーブを通してそれは語り掛けていた。

__あの方の血を引いてる人間をそうそう死なせるわけにはいかねえよ__

それは偶然通りかかったより高位の精霊だったか、地霊だったのか。

只ならぬ力を有していたその誰かは、優しくベロニカを包み込み、

ゆっくりとその身を減速させた。

「・・・え?え?ええ?助かった・・・何で?」

万事休す。

ベロニカは地面から伸びていた木々の太い枝の上に着地し、直ぐに座り込んだ。

だが、訳も分からず、自分を助けてくれたその誰かの姿が見えないので、

ベロニカは単に不思議なことが起きて、何かよく理解できないけど助かった。

としか認識できないでいた。

ミシミシミシミシ  バキッ

その直後、酷く鈍い音をたててベロニカが立っていた枝が折れた。

「いやああああああああああああああああああああああああああ!!!」

助かったと思った所へ新たな不運。

ベロニカはまた落下してしまう。今度はより地面に近い位置で複雑に絡み合うように伸びた蔦に体が引っ掛かり、地面の染みになるのを逃れた。

「あ・・あたたたた・・・・はにゃ〈鼻〉、はにゃうっひゃっひゃ〈鼻打っちゃった〉・・・」

ベロニカは顔面をさすりながら、辺りを見回す。

そこは高い高い木々の入り組んだ地点で、折り重なる枝の影響で

陽の光が届き辛い。

先ほどまで晴天で強い光が指していたのに、ここはまるで夜のように薄暗かった。

「・・き・・・き・・きき・・・」

するとどこからか、何かの声が響いて来る。

少し耳をこらしてみると、その声は自分の真下から響いてるようだ。

ベロニカは蔦の隙間から真っ暗闇で今一つ何も見えない地面の方を

良く見つめてみた。

パカッ

その闇の中で、沢山の目が輝き踊っていた。

暗がりの中、猫の瞳のように微かな光を集めて薄く輝くのとは違う。

まるで深海の生物のように自ら発光する能力を眼に持たせた生物が

居たというように、自らの目をランランと光らせている。

その強く輝く目が、何個も何十何百とベロニカを視認してジーーっと

見つめているのが分かった。

「キキ!危機!!うき木木!」

その何かが続けて鳴き声を上げた。

「な・・・な・・・

なんで私ばっかりがこんなに目に合うのよぉ!!」

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