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LIGHTNING EDGE-神々に挑む剣 -  作者: 金属パーツ
3/42

一話 シーン3『ギルド長』

ピンポーン ロクカイ デス


独特な電子音が響く。

それを聞いて直ぐにカティル達は転送先のポータル室を飛び出し、

バランスを失って雪崩のようにガラガラと崩れた。


一番下に居るのはカティル、その上にベロニカやイツカがのしかかり、

ユリは性懲りもなくベロニカの乳を揉んでいた。


その後ろから、のそりのそりとレルとロックの二人が、何食わぬ顔で室内から顔を出す。

「何をやってるんです・・・皆さん。はしたない」

「修行がたりんな、お前ら」


出た先は廊下などない。

扉を開けるとその先は、ギルド長室の中であった。

広さは20畳はあろうか。

入って左側に関係書類を保管する棚が、右側に10畳ほどの来客用のスペースが

あり、長いガラス板のテーブルを挟むように、五人掛けのソファーが二つ向かい合わせで置かれている。

そしてその中間の奥まった所に、上品で大きな机が置いてある。

ギルド長の席だ。


「ようこそ、勇者御一行。お待ちしておりました」


そういうと、ギルド長はカティル達の無様な姿など見慣れたものと気にも留めず、椅子から立ち上り、礼儀正しくお辞儀をするのだ。

それに続いて、窓際で待機していた秘書も同様に一礼する。

「本日はご多忙の中、よく来てくださいました」

やや襟にかからない程度に、切りそろえられた髪と白い肌、広げた小鳥の羽のように真っすぐに伸びた長い耳を持つエルフ。

膝上ほどの長さのペンシルスカートと体のラインが浮き出るようなレディース

スーツをしっかりと着こなすその女性こそ当ギルドの長。

このギルド登録者数10万人、各国のギルドスタッフ1万人、ここ本部スタッフ

全1000名を束ねる女主人である。

名を『ルー・ルマ・モレー』といった。

その後ろで控えていた秘書は、ルーと同ブランドのスーツを着ているのであるが、スカートではなくて踝までの長さのパンツスタイルであり、より表情は硬く厳格な印象を与える女性であった。

彼女は犬人族である。

その頭部の両サイドから伸びる垂れ耳は長く、アメリカン・コッカー・スパニエルを思わせる耳毛は胸元まで届くほどだ。

名を「エルザ」という。

未だ苗字を持つことを許されない貧しい家の産まれであったが、その機敏さと

誠実さ、持ち前の頭脳でメキメキと頭角を現し、今ではルーの右腕と護衛役を一度に努めるに至る。


「まず始めに、皆さんをお呼びだてした件についてですが、皆さんが以前の戦に参陣して頂いたおりに

破損した武器防具の修繕、新調が完了したことをご報告させて頂きます」


カティル達はお互い手を差し伸べて立たせ合い、服についた汚れをパンパンと払い落としている最中だった。


「うむ!ようやくですか、自分もこの日がくるのを首を長くしてまっていた所です」

とロックが心躍らせていると

「ええ、我々としても勇者様ご一行の献身と働きには感謝が絶えません」

ルーは心からの笑顔で答えた。


「皆さんの助力の甲斐あって、魔族軍の中心的な最重要目標の一体、フレアロード〈魔炎将軍〉ベベルを打ち倒すことができました」


それは今から一月前のこと。

勇者たちがそれまで装備していた神話級武具の多くを破損し失った大合戦があった。

ユリが言っていた。

『その次がイルマ国南端の中西戦線で下級神のバルキリーと魔族が連携を組んで侵攻してきたのを現地の人防軍〈人類生活圏防衛軍〉の人達と協力して撃退して・・・』の件である。


現在まで魔族、神族はそれぞれ違う勢力であり、コンタクトを取る、連携を

取ることはあり得ないと考えられていた。

後で語られることであるが、現在の魔王が神族を憎んでいる故にだ。

例え人間を滅ぼすためとは言え、この二つの勢力が手を取り合うことはないと思われていた。

だが、そこに一つの例外が存在した。

その例外こそ、魔族軍を率いる3将の一人、フレアロード ベベルだった。


アイスブラストロード〈魔氷将軍〉 マーボル


そして上記の二人を統括するブラックデビル〈悪魔元帥〉 カカオゥ

この三体をして魔族軍の3将と呼ばれており、人類側としては魔王や神に次いで

打倒すべき最重要討伐目標とされていた。


そのベベルが単独で、不思議なことに神族の尖兵たる六柱のバルキリー部隊と

連携し、魔族軍との戦の最前線である中西戦線の城塞に対し、侵攻してきたのだ。


「・・・・ベベルくん」

イツカは他人に聞こえないほどの小さい声でそう漏らした。


________イタイ 痛いよぉ・・・・お姉ちゃん・・・・________


イツカの脳裏にその戦いの日が思い起こされる。

多くの死体が転がる荒野で、1人の少年が致命傷の傷にうめき苦しみもがき、

彼女に血だらけの手を伸ばした。


_________ごめんなさい、助けて、あげ・・・られなくて・・・__________


イツカは溢れ出しそうになる涙を必死でこらえ、その少年が事切れるまで、

その手を握ることしかできなかった。

ベベルがどうやってバルキリーを手なずけたか、何故そのような単独行動をしたのか、その真意は今をもって不明である。

その時の手の感触を思い出すように、イツカの拳にギュッと力が入る。



「ではご挨拶も程ほどに。今回お呼びだてしたもう一つの、皆さんに対処して頂きたい案件に関しての説明に入らせて頂きます。よろしいですか?」

「はい、お願いします」

カティルがそう返事をすると

「では、こちらへどうぞ」

ルーは室内の右側にある来客スペースを指した。

ぞろぞろと六人は並んでその長ソファーに腰を落とす。


せまーい


細身の女性が三人いるとはいえ、4人掛けを想定したソファーに5人はやはり狭かった。

ロックとカティルがフレンドリーに隣り合って座ろうとしたところへ

ベロニカとイツカはカティルと

ユリはベロニカと離れようとしないために起きたことである。

が、仕方ないのでベロニカとイツカは、ルーが座る方のソファーに移動してもらう。

ユリは罰としてロックの傍に座らせた。


「チッ!」


ユリはロックをキッと睨みつけると、大きく聞こえるように舌打ちをした。

六人はエルザに用意させた世界地図と数枚の資料に目を通しつつ、説明に入る。

「まず事の始まりは先日夜半過ぎ、場所はイルマ国とその東にある隣国ルシャーの国境にある森林地帯です。

その地点に、突如として空から『エッグ』が落下してきたのです。場所は・・・」

ルーは資料の中からもう一枚の地図を取り出す。

今度はルシャーとイルマの間を中心点として描かれている周辺地図である。

「大まかに見て、半径10km、地図でいうこの丸の範囲のいずこかに、

エッグは落着したものと推測されています」

「つまり、未だどの辺りにエッグが落ちたか、正確には掴めてないんですね?」

カティルが尋ねる。

「ハイ」

ルーは申し訳なさそうにして首を縦に振る。

「そのエッグが飛来する際、エッグの輝きが何色であったか、見た方はいらっしゃいますか?」

レルが尋ねる。

「イルマ、ルシャー両国で多数の目撃者がありました。その流星は、青く輝いていたと」

「・・・そうですか」


件のエッグであるが、それが地上へ向けて流星のように飛んでくる際、特定の輝きを放つ。

大きくわけて赤か青か黄だ。

青ならば、孵化までにかかる時間が最も長く余裕があるため、準備も万全に整えることができる。

だが赤か黄だとしたら危険だった。赤は最も早く落着直後に孵化が始まる。

黄だとしても、既に中のモノが暴れだしているはずだ。


「エッグの孵化するまでの時間予測はできるか?大まかで良い」

ロックが尋ねた。

「それは私から。

今朝、魔法省の神獣対策本部による予測では、本日の夕刻頃には孵化すると予想されております」

口を閉ざしていたエルザが、そう言って話に入ってくる。

「それって、たしかなんですか?」

ベロニカが鋭い眼差しで尋ねると

「間違いない情報かと。

先日開放された上級占術スキル、星占術スキル〈基礎〉の両方を用いての

予測です。信用できます」

「・・それでも時間に余裕があるとは言いづらいですね。準備でき次第出発した方がよろしいでしょう」

「そう、なの?」

事の状態が掴めていないというようにイツカが尋ねた。

「ええ、これは想像以上に急務です。皆さん分かりませんか?」

次回更新は13日の夕方ごろを予定しております

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