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LIGHTNING EDGE-神々に挑む剣 -  作者: 金属パーツ
27/46

三話 シーン2「キギクゴ戦」

本当は日曜の内に投下したかったのですが、月曜となってしまいました。

次回はまた、最低でも二週間に一度は更新できる人になりたいのですが

筆が遅くて申し訳ありません。


「フン!」

「ギルギ!」

イツカの渾身の一撃をキギクゴは両腕をクロスさせて防ぐ。

その一撃は重く、その巨体が数cm単位でズズリと押し下げられた。

「でえい!!」

続けざまに二撃目。イツカの左手の剣でガード状態のキギクゴのハサミを

思いっきり横殴る。

「ギギ・・・ギルギルギィ!」

二発の攻撃をしのぎ、キギクゴは一転反撃に転ずる。

己の尻から伸びたケーブルのように細い尻尾を動かし、その先端の針で

イツカの頭部を狙う。

「おそい」

それを難なく交わし、イツカは後方へと飛びのいた。

〈なんだ、どういうことだ。たかが人間の小娘が、何故、

これほどの力を・・・〉

固い殻で覆われて、切れぬとはいえ、キギクゴの体にはジンジンとした

痛みが引くことなく残り続ける。

その久しく味わってこなかった鈍い「痛み」

それを受けて、キギクゴは頭を切り替える。

意識を改め、その目の前の小娘を十分に力を持った外敵として認識することに決めた。

そうして、キギクゴは自分の中に秘めていた、三つの隠し玉と呼ぶべきスキル

全てを開放してその小娘達にぶつけることを決断する。

「ギィイイイイルギイイイイイイイイルギイイイイイイイイイイイル!!!!!」

「なにっ」

「何をしようというんですか!」

その時、キギクゴが上げた声は格別なものであった。

猛獣の威嚇と同じ荒々しく、野太く、そして不快な音が入り混じる、長い長い

奇声。

しかして威嚇のための声であるが、それはどこか不安がる童女の悲鳴のようで

もあり、今の土蜘蛛を失ったキギクゴの精神状態がどんなものか、伺い知ることができた。

キギクゴは突然、自分のハサミを地面に突き立てた。

彼はイツカとレルをギッと睨むようにして姿勢を低くし、逆に尻を高く上げる。

そうして、キギクゴはまるで脱糞でもしようというようにその尻に力を込め始めたのだった。

ムリムリムリムリムリムリ

変化は直ぐに起こり始める。

「これって」

冷静に剣の構えを解かず、イツカはその変化を見守っていた。

突然、キギクゴの細長い尻がパンパンに膨らみ始めたのだ。

その内部では何かがゴソゴソと激しく蠢ていているのが見えた。

その蠢きはどんどん激しさを増していき、それが限界に達した時、

その尻の半分を裂いて中から何かが出てきた。

「新しい、尻尾?」

キギクゴがその身を裂いてまで顔を見せたのは、一本目の尻尾と同様の黒い

ケーブルのような尻尾だった。それが今、一本から三本に増えた。

最初のは勾玉の先端を尖らせたようなカギ爪状の先端部分があったのに対し、

二本目は細いダイヤ型をした結晶体が付いており、

三本目は船の錨のような形で、斧状の鋭利な刃物が付いていた。

これら三本が、第一のキギクゴの隠し玉であるといえる。

「エアスラッシュ!」

警戒を強め、攻撃に転ずることができずにいたイツカよりも先に、今回はレルが

先に動いた。

基礎攻撃魔法とはいえ、レルが放てばその威力は堅牢な城塞をも切断する威力が

ある魔法だ。

しかし、何食わぬ顔でキギクゴはその三本目の尻尾を振るって、安々とその風の刃を切断した。

「そんな、どうやって!?」

あまりのことで大きく目を見開くレル。

そのあまりに呆気なく行われた行為は、レルのそれまでの人生の中でも想定さえ

していなかった現象だったのだ。

ただの尻尾の一振りが、風を切る。風を無効化する。

魔法障壁で防ぐでもなく、同じだけの強風で相殺するでもなく、ああも容易く

無効化することはできないはずだ。

「エアスラッシュ!エアスラッシュ!」

負けじとレルは続けて二度、魔法を放つ。

しかし、その結果は同じ。

全て第三の尻尾の一振りが風の刃を切断する。

「・・・いったい、どうしたら」

〈今の私では太刀打ちできないということですか。

ですが、ここで『薬』を使うわけには・・・〉

打つ手なしかと対策で頭を悩ませている時、キギクゴは無言で次の行動に移る。

続いては第二の尻尾を動かした。

細いダイヤのような結晶が小さく輝き始め、その先端を一列に並んで自分を睨む

二人に向ける。

それはまるで、何か目標に大砲の照準を合わせる行為に見えた。

「レルさん!逃げて!!」

一早くそのことに気づいたイツカが叫ぶ。

「オーラ!」

レルは熟練の反射で直ぐに反応する。

だがイツカがそばへ駆け寄り、一か八か、オーラ重ね掛けに賭ける時間も余裕も

ありはしなかった。

結晶の輝きは益々強まり、そして次の瞬間、臨界に達したその光の力が開放され

撃ち出された。

ドキュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!!!!!!

真っすぐに伸びた破滅の光が放たれる。

キギクゴからはイツカとレルが二人とも、その光に飲み込まれるのが見えた。

その光は二人のいた地点を突き抜けてもっと遠方まで伸び続け、多くの木々や

動植物たちを消し飛ばして焼き尽くしていく。

しばし光の照射は止まる事なく続いた。

次第にゆっくりと細くなり、時間をかけて消えてゆく。

立ち込める土煙。視界は悪く、キギクゴが持つピット器官があっても

二人の生存確認も死体の識別すら困難である。

だがこの神獣は確信を持っていた。

今の一撃を受けて、上位の神々を除けば形を保てる生物はこの世にいなかったのだから。

「ギールギルギルギル・・・ギギ?」

勝利を確信して笑い声をあげた時、キギクゴは前方に不思議な物体を捉えた。

とても巨大な何か。生き物ではない、だが自然物でもない、巨大な何かが自分の前に立ち塞がっている。

その何かが体を起こす。

その腹の下に隠した何かが開放されてモゾモゾと動き出した。

ゆっくりと起き上がると、その何かはパンパンと体について土埃などの汚れを

払う。それが済むと、顔を見上げてその巨大な何かに手を伸ばした。

「ありがとう、ルビアカイン。私達を守ってくれたのね」

その声色から、イツカが生きていたことがわかった。

「お安い御用です、イツカ。貴女は我が主の残した大切な遺児。

例えこの身が滅しようと、必ずお守りいたします」

〈なんだ?奴は誰と話をしている?あれはいったいなんなんだ!〉

未だ治まりつかぬ土煙に腹を立て、キギクゴは腕を大きく振り払う。

その一振りが大きな暴風を生み、瞬間的に土煙を払い去った。

戦場の全体が見えてくる。

「ギギル?ギルギルギルギルギル??」

キギクゴは頭を傾げた。

その場に立っていたのはイツカとレルの二人のみであり、先ほどのような巨大な何かの反応がない。

「また『彼女』に助けられましたね」

「うん、とても頼りになる」

イツカは何食わぬ顔で安々とキギクゴから視線を外し、近くまで歩み寄ってきた

レルに対して、親指を立てた拳を突き付けるのであった。

そして更に一拍、時間をたっぷり使うように間を置くと、イツカはやっとキギクゴに向きなおった。

「大丈夫ですか?いけますか、イツカ?」

「うん、レルさん。問題ない。今のがアイツの最大火力だとしたら、

私一人でも余裕」

〈余裕?この神獣キギクゴ様を前にして、あの程度なら余裕だと?〉

その言葉は正確に、キギクゴの逆鱗に触れた。

〈なら見せてやる!俺の第二のひさ・・・〉

それと同時に、イツカにも動きがあった。

イツカは唐突にその両方の剣を地面に突き刺し、そっと目を閉じたのだ。

「我を証明せしは その血をもって

我を解明せしは その力をもって

我を認識せしは その肉体をもって ここに我の全てを開放せん!」

唱えた瞬間、はっきりと大気が変わった。

重く、周囲全ての物が深海の底へと沈んだかのような圧を感じる。

冷たく張り詰めたように空気が冷える。吐息がわずかに白くなる。

地面に突き刺さった鉄のガラクタのような剣がフルフルと震えだす。

「ギ・・・ギルギル・・ギギギイ」

何だろう。何かが起ころうとしているのがキギクゴにも伝わっている。

しかもこの神にとってさえ、脅威が更に増す何かが呼び起されるような感覚。

「ギルギルギル!!」

今度、先手を取ったのはキギクゴだった。

彼の第二の隠し玉、それは己の尻尾を分離させ、疑似生命として操って使役する

ことである。

彼は第一の尻尾をこっそりと分離させると土の中へと潜り込ませ、ワームのように土を泳いでイツカの死角から急襲しようという目論見だった。

「思いだせ、汝が銘を

取り戻せ、汝が形を

我は今こそ汝らに求める

昼に輝く太陽に誓い、夜に浮かぶ月に願い、我が生まれ出でた

この大地に寄り添い、今こそ顕現せよ、我は今再び、汝らに呼び掛ける。

いでよ、ア・・・」

呪文が最終盤に差し掛かったかという時である。儀式に集中していたイツカの

背後で、地面から飛び足したキギクゴの尻尾がイツカの背中を狙った。

深く突き刺し、その体内に猛毒を流しこもうとその針先を大きく振るう。

バキッ

しかし、その寸前でイツカは二振りの剣を抜きなおすと、その右手に握った剣を

もって、尻尾の針先を力いっぱいに叩き落としたのだった。

パキーン

ボワッ

瞬間、剣身に触れたキギクゴの尻尾は大きく割れ、その割れ目からボウボウと炎を拭き上げて燃え上がり、次期に動かなくなった。

「ぎるる?」

突然、何が起こったか理解が及ばないキギクゴ。

イツカの手に握られていた剣はどちらもただの鉄の剣かに思われていたのだが、

その外装がボロボロと剥がれ、その真の姿を現したのだった。

「いでよ、アギナヴィー、ルナーエー」

最後の呪文まで唱え終わる。

無力化させて灰となった残骸には目もくれず、イツカはキギクゴに向きなおる。

〈ギルギルギル・・・なんだ、あれは、凄まじい力を、放っている〉

キギクゴは混乱していた。彼女が握る二振りの剣は極上であり至高であった。

イツカは無言で、右手に掴んだ剣の切っ先をキギクゴに向けた。

その剣はオレンジの中に黄色い光が混じる、独特なオーロラのような光を

放っていた。

その刃は分厚く横広で重量感があり、例えるならバスターソードを無理やり

縮めたようなずっしりとした形をしていた。

その刀身は、かのヒヒイロカネを純度100%で鍛えたかのように

お日様色をしている。

その持ち手には獅子の紋章が刻まれている。

その夜闇をも照らすほどの眩き剣の銘は『アギナヴィー』

今まで逸失されていたと思われていた先代勇者キッド・カッツが愛用していた

伝説の剣である。

その属性は、光と火の多重属性とされており、触れた対象を浄化し焼く。

特製は切れば切る程、対象の内部に光熱エネルギーを蓄積させ、与えるダメージを増大させていく。

あらゆる生命にとって驚異的な特攻を持つ無敵の剣である。


その反対に、左手に掴むのは『ルナーエー』

その刃はほっそりとしていた。

刺突剣レイピアよりも分厚いがショートソードより細く、

しかして刀のように長く頑丈で、振るえば鳥の羽のように軽い。

その刀身からは暗い輝きを放っている。

それは満天の星空のようで優しげで、深い水底にうっすらと輝く宝石のように

気高く、人々の心を魅了して離さない怪しげな輝きを放ち、

妖艶ささえ感じられる。

まるでお月様からの授かりものを金属と混ぜて作った未知の合金で作られたような

この武器は、制作者不明であり、その特性も未知数である。

分かっているのは、どうやらこちらは闇と水の多重属性であるらしく

触れた対象の全てのバフを削ぎ落し、清める効果が付与されている。

対神用武具としてはアギナヴィーをもしのぐのがルナーエーである。


これら二振りの剣こそが、わけあってイツカがカティル達に一度も明かしていない

秘密の一つであった。

今までも人目を避け、レルの承認あった時を除いて封印されてきたのだが。

それがその姿を現し、目の前の神獣に対して牙を剥く。

「ここで終わりだ、バケモノ」

そう呟いた時、黒髪黒目だったイツカにも変化が起きる。

その髪色がほんのりとたが金色に染まり、その両目が翡翠のように美しい緑色に

染まったのだった。

どちらもイツカの『母親』から受け継いだ特徴が出ている。

その反面、イツカの右手の甲が熱を帯びる。

チリチリと徐々に漏れ出る輝きが増していく。

その輝きが一つのアートを浮かび上がらせた。それは紋章だ。

大きく口を開き、目の前の獲物をかみ砕かんとする金獅子の紋章。

その輝きがイツカの体全体へと伝播していく。

「我を証明せしは その血をもって ここに我が父より受け継ぎし全てを開放せん

ライトニング、エッジ」

そう呟いた時、イツカを中心として外側へと大きな風が吹き荒れる。

イツカの体から吹き上げていた光が宙に上り、イツカの頭上で形作られていく。

それはイツカの紋章と同じく金色に輝く獅子であった。

今までであれば現れる筈のない、禁忌の存在。

存在自体があり得ない、存在することが許されるはずのない異端。

『もう一人の勇者』がここに目覚めたのだ。

その獅子が両足を揃えて座り込むと、天高く、上空に向けて牙を剥きだしにし

遠吠えをした。

ゴルルルルルルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

瞬間、イツカの体にバフがかかる。

彼女のそれはカティルと違い、範囲は己のみに限定されていた。

その反面、そのステータスの伸び率はカティルのと比べて抜きんでている。

「いくぞ」

イツカが二振りの剣を力強く握りしめると、瞬時に飛び出した。

キギクゴがイツカの反応を捉えた時、既に自分の目前へと迫っていた。

イツカはルナーエーを大きく振りかぶる。

「ぎぎ!?」

反射的に両腕でガード。しかし、イツカは正確に殻に守られていない関節の

わずかな隙間に刃を通し、無情にもキギクゴの左腕は安々と切り落とされた。

切り離されたハサミがゴロンゴロンと地を転げていく。

「ギルギルギルギ・・・ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」

キギクゴにとって未だかつて味わったことのない激痛が襲う。

思わず足をもつれさせ、ずしーんとその場にへたりこんでしまった。

切られた傷口から、止めどなく血が零れ落ちる。人と変わらない、赤い血液をしていた。

「とどめ!」

これを好機とイツカは右手のアギナヴィーを構え、キギクゴにもう一度捨て身の攻撃をしかける。

しかし

〈こ、こんなエラーのために、敗れてたまるものかああああああああああああ!!!〉

「ギルギルギルギルギルギルギル!!」

キギクゴは最後の隠し玉を利用したのだった。

刹那の短い間、キギクゴの四角く角ばった目のない頭部の中心が両開き窓のようにパカリと開いた。

その内側にはキギクゴの感覚器官の元と思われる、糸ミミズのような細く短い

器官が無数に生えており、ウネウネと蠢いていた。

それらを用いて、キギクゴは周囲を知覚するだけではない。

周囲に影響を与える力をもっていた。

神々の中でも特異な一部の神々だけが用いる『催眠術』である。

洗脳、記憶消去、記憶改ざん、人格交換、様々なものが存在するが、

キギクゴが得意とするのは最も基本形である、相手を眠らせる催眠であった。

それら頭部の糸ミミズ器官が一斉に光始め、イツカの視界を塞いだ。

「ぐっ」

モロに食らい、体勢を崩すイツカ。

「イツカ!」

うっかり安心しきっていたレルがその名を叫ぶ。

急いで対策をと呪文詠唱を始めようとするが、ダメだ。間に合わない。

それよりもバランスを崩した今のイツカをキギクゴが両断する方が早い。

〈死ねえ!エラー!!〉

キギクゴは残された右手のハサミを大きく開き、イツカを両断せんと襲い掛かった。


__人の娘に何をしようっていうのかしらぁ?___


その時である、キギクゴの脳に誰かの声が直接響いた。

急に動きがピタリと止められる。

みると、イツカの胸元がポワポワと淡い光を放っていた。

光の原因は、イツカの服の下に隠されていたタリスマン付きの首飾りである。

キムキーから与えられた物であり、わずかな全ステータス上昇と疲労軽減、

状態異常耐性〈小〉が付いたささやかな品物であるはずなのだが。

それが今回の件で力を発揮し、イツカを現実に繋ぎ留めたのだった。

それは何とも奇妙なことであった。

ささやかな耐性効果一つで、催眠を秘策とした神獣の特技を防ぎきることなど

神々からすればあり得てはならないことだ。


イツカは一度立ち止まり、自身の状態を確認すると、再びキギクゴに向けて剣を

振るった。

「ハア!」

「ギルギルギル!」

ひたすらイツカの一方的な暴力が始まると思われたが、そうは上手くいかない。

攻防は一進一退。

キギクゴの一撃一撃がイツカにとっては即死の威力を持っている。

イツカは薄手の服にコートを羽織っているだけである。動きが悪くなるのを恐れて

最も身軽の状態で戦えるようにした結果だ。

だからこそ、敵の攻撃をわずかにでも受けることは許されない。

そのハサミも、尻尾の一振りも、そこから放たれる光線も全てをイツカは避けつつ

攻撃を繰り出さなくてはならなかった。

イツカの攻撃もアギナヴィーによって敵の体内への蓄積ダメージ増大を繰り返し、

ルナーエーの効果でキギクゴの身体強化をけして許さない。

だが、それでもイツカの今の攻撃ではキギクゴ討伐には一歩届かないでいた。

キギクゴにも土蜘蛛と変わらないだけの超再生能力が備わっている。

切り落とされた左腕も完治し、どれだけイツカの斬撃を受けようとキギクゴが倒れることはない。

「・・・イツカ!今のままではラチがあきません!

早くその神獣の体内の核を見つけ出し、破壊しなさい!!」

既にイツカに任せきりになっていたレルが叫ぶ。

そう、これはキギクゴの最後にして最大の強みである。

全ての神々には、その内部に力の根源たる『核』が存在している。

それを破壊することが神獣討伐の最重要のポイントであった。

それはイツカも理解しているのだが、ところが見つからないのだ。

先ほどから頭部を腕を胸を腹をとあらゆる部位を攻撃し、一度は切り裂いている。

だというのに、イツカの斬撃はキギクゴの核を捉えられていない。

「ギールギルギルギル!!」

イツカの焦りが伝わっているのか、キギクゴが笑い声をあげた。

歓喜の笑い声。今までの不安感を吹き飛ばす笑い声だ。

イツカは一度、呼吸を整えようと攻撃の手を止めて一歩退いた。

そしてキギクゴと距離を空けた地点で立ち尽くす。

〈ダメ・・・どうしても見つからない。いったいどこに隠しているの?〉

頭でもなかった、胸でもないし腹でもなかった。

ということはあの細い足のどれか?

答えはそのどれでもないし、どの部位も正解である。

このキギクゴという神獣、実はその核を頭、胸、腹の三か所を自由自在に移動させることができるのだ。

イツカがその真実を知ることはなかった。

「・・・仕方ないか」

少し悔しそうに口の端を歪めながら、イツカはそうポツリと漏らした。

「ギルギル?」

それを聞いて、キギクゴは首を傾げる。

「まったく、本当はアレを使わないで倒したかったんだけど。そうもいかないね」

「貴女の悪いくせですよー!イツカー!どうしても理由がある場合以外は、

全力を尽くせと私は何時も教えたでしょー?」

そう声を張り上げて呼びかけるレルの表情は、何故か笑っていた。

「もー・・・ごめんなさいーレルさーん!

でもアレ使って倒せてもなんか自分に負けた気がしてイ・ヤ・な・のー!!」

「そんなこと気にするんじゃありません!

貴女の持つアレはキッドから受け継いだちゃんとした『貴女の力』なんですから!

たまにこうして振るわないと錆びつきますよ?」

「はーい!」

〈なんだ?こいつらは何を言っている?まるで・・・〉

そう、まるで、簡単にこの神獣キギクゴを打ち倒せる何かを隠し持っているような内容。

許し難い。度し難い。なんたる傲慢、なんたる勘違い!

例えどんな力を隠していようと、このキギクゴの装甲を貫き、自由に転移させられる核を砕くことなど

「ギルギルギル!ギルギギルギルウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

〈たかが人間ふぜえが、できるわけねえだろおおおおおおおおおおおおお!!〉

怒髪天をつくほどに怒りを燃え上がらせて、今度はキギクゴからイツカへ突撃していった。

それを特に動揺する様子もなく、イツカは黙って向かってくる巨体を見つめていた。

そして眼前へとキギクゴが迫り、その巨大な腕をイツカの脳天目掛けて大きく振り降ろす。

その刹那、イツカは無言でアギナヴィーを天に向けて振り上げた。

「ライトニングエッジ・モード キャリバー」

スパッ

パキーン

瞬間、キギクゴの巨体がブルリと震える。

「ギ」

〈・・・・なんだ?視界が半分になった。左側が見えづらく・・・

あ、左半身の感覚がな、あ、ならにか、かが、ぎゃばば?

・・・割れた、何か、たいいいいいせたたたた・・・のもも・・・〉

突如、体の中心に切れ目が入り、絶命したキギクゴは左右別々の方向へと倒れた。

「呆気ないなぁ・・・やっぱりお父さんの力、強すぎ」

ふうとため息をつくと、イツカは振り上げたアギナヴィーをゆっくりと降ろした。

だがその持ち前の剣には更に一つの変化が生じていた。

その切っ先から輝く光刃が伸びている。

その延長された刃によって見た目がさながら大剣か斬馬刀か。

光刃の分の重みはなく、アギナヴィーの重さは一切の変化がないのだが、

見た目では恐ろしいほどの重量感と派手さを放っていた。

これがイツカの伏せていた、強すぎるが故に使用を躊躇していた最大の切り札であった。仕組みとしてはカティルの最強必殺技としてのライトニングエッジと同じであるが、

あちらはその全エネルギーを爆発力に変え、一気に放出してしまうのに対し、

イツカはそのエネルギーの爆発を固定化し、刀身の一部に変えて利用することができるのであった。

その切れ味、そのパワーは軽減されることなく、触れた対象を一切の例外なく切断することができる。

反面、そのコントロールは至難の業である。

途方もない精神力をもって形を維持しなくてはならず、イツカでも数秒が限界である。

キギクゴを核ごと綺麗に切断した光刃はイツカの精神が途切れたと同時に霧散し、その役目を終えた。

「見事ですよイツカ。腕を上げましたね」

「エへへ、レルさんがいつも見守って鍛えてくれたお陰です。

ありがとうございます」

レルに向きなおると、イツカはペコリと頭を下げた。

「いえいえ、私など今では数日に一度、貴女の様子を見ていただけ。

貴女の絶え間ない努力があったればこそ、こうして実を結ぶんですよ、イツカ」

「ほんとよねぇ、今回のキギクゴっていう神獣、神々の中では下の上ぐらいの

実力があったから、イツカちゃんとレルくんだけじゃ不安だったんだけど、

まさか倒しちゃうだなんてねぇ」

「ええ、ええ、本当に・・・!?」

「っ!?」

急に自分達二人以外の気配を感じ、レルとイツカがその声のする方へ向く。

「さっすがはあの人と私の娘だわぁ。イツカちゃぁん、ママ嬉しい」

そこには一人の女性が微笑みを浮かべて立っていた。

また気が向いたら見に来てくれると嬉しいです。では次回にお会いしましょう

バーイ

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