二話 シーンend「お母さん」
また二週間も開いてしまいました。
もっと早くに書き上げられれば良いのですが、力不足で申し訳ありません。
もっと書くペース上げてみせるぜ!!
それはその日の晩のこと。
カチャカチャ
「あ、あの・・・イツカさん?ベロニカさん?これはいったい・・・どういう?」
これはどういう状況になっているのか皆目見当もつかず、
カティルは狼狽していた。
その体は自室のベッドの上にあるが、服は全て脱がされ。
その両手は手錠によって封じられ、それは鎖でベッドの骨組みと繋がれている。
その鎖もけして長いものではなく、カティルは寝たきりで起き上がることが
できない。
そんな彼をアイマスクを付けた謎の二人の美女が見下ろしていた。
「ふふふ、無様な姿ね、かt・・・勇者様?」
「いや、ベルだよね?なんでこんなことするの!」
謎の美女である。
「そ、そんな名前の女、ここ、には、いない。いつ・・・いや、わた、しの名前、
えーと・・・・〈考え中〉そう!ネメ、シス!復讐の女神、なの!」
「ネメシスって、今考えついたよなソレ!!まるっと無計画で穴だらけだよねソレ!
どうして俺がこんな風に縛られないといけないんだよ!言い出したのはどっち?
ベル?イツカ?」
いえいえ、謎の美女である!
「だから、ベロニカなんて知らないしイツカでもないわよ!
私がネメシス一号で、こっちが二号なの!」
「えっ・・・イツカ、考えた、のに。イツカ一号じゃダメ、なのぉ?」
「あ、ごめんねイツカ。じゃあ私が二号で良いからね?私が二号!」
「ホッ・・それなら、良い、よ?ありがとうベル」
〈もう名前バラしてるし・・・本当に穴だらけなんだな二人とも〉
「で・・・べ、じゃなくてネメシス二号さん?
お前ら、俺をどうする気だ!」
問われて、二号と一号は不敵な笑みを浮かべた。
「よろしい、教えてあげるわ。一号?」
「うん。被告人、カティル。きさ、まは、剣士イツカの友人、ベルを傷つけた、な?
イツ・・・ネメシス、それ許さない。だか、ら、私と二号、二人、で、
カティ、のこと、おしエk・・・あっ」
〈かんだ〉
〈おしおきって言おうとして嚙んだわね〉
「・・・・・・」
ネメシス一号は顔を真っ赤にして声に成らないうめき声をあげつつ、下を向いてしまった。
まあしかしこれで大体、カティルにも言わんとしたことは伝わった。
つまる所結局、予想通りに、不可抗力だったとはいえ、まともに二人の一夜の
思い出を残せなかったカティルに責があるとこの自称女神様達は言いたいのだ。
「・・・わかった」
「へ?」
気の抜けた声を上げるネメシス二号。
「だから、良いって言ってるんだよ、べ・・・ネメシス二号。
俺もずっと考えてたんだ。ベルに、どうやって詫びをしたら良いかって。
どのタイミングで仕切り直してやり直すかって。
俺は、イツカもベルも好きだ。どちらともたっぷりと英知したいと思ってる。
だから、お前らがそんな彼女たちの代わりに俺に罰を与えるっていうなら
受けるって言ってるんだ!!」
「・・・カティ」
ネメシス二号だとか薄っぺらい仮面が剥がされ、ベロニカの心が開放されていくのをはっきりと感じ取っていた。
実際の所、カティルの欲まみれで誠実さの欠片もない告白にときめく要素など
なかっただろうが。
彼の気持ちを受け取ってしまったベロニカは謎に胸を高鳴らせ、
まだネメシス一号の仮面を外しきっていないイツカと目で合図を送りあい、
のそのそとベッドに乗り上げる。
〈・・・あれれ?なんか変だぞ?〉
ベロニカはベッドの上で立ち上がり、カティルに近づくと、
その頭上で棒立ちとなる。
カティルの視界は、ベロニカのスカートの中の光景で埋め尽くされてしまった。
なんとベロニカは は い て な かった。
「ウフフ、じゃあたっぷり味わわせてあげるわね、カティ?」
「私達、の、すっごいきつい、ば・つ・を」
言いながら、ベロニカはじわりじわりとゆっくりと膝を折って腰を下げ始める。
「お・・・おいおいおいおいおい!
まてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまてまて!待てって!!」
何か恐ろしい物を感じ取ったのかカティルは慌てて手足をバタバタを暴れさせる。
だがその足をイツカに抑えつけられ、ベロニカが腰を落とすのを止まらない。
〈まて、待って・・・まさか・・・・そんんんんんんなななななななな〉
「ハァハァハァハァ・・・言った筈よ、カティ。私、本気で傷ついたんだから。
だからイツカと話し合って決めたの。カティにはたっぷり、
きっついオシオキをして反省させるんだって」
「そう、カティ、頭の先から足のつま先まで、ロックみたいに真っ黒で下品で
スケベ。それ直す治療、これ最適」
イツカはカティルの足を抑えるのと同時に、器用にズルリズルリとカティルの
ズボンを脱がし始めていた。
ついにベロニカの尻がカティルの眼前に迫る。
ベロニカの膝はL字に折れ、カティルの顔面との距離は20cm未満に迫っていた。
まだ、呪いは発動していない。無臭である。
ベロニカの知らない先祖からの呪いは常時発動するものではなかった。
発動条件に一定距離まで近づくというものがあったようだ。
そしてまた更に近づき、徐々に距離を詰める。まだ発動していない。
だがほんのりと海の磯のような香りをカティルは感じ始めていた。
〈あれ・・・これ今回は大丈夫じゃね?〉
と安心して警戒を解きかけた、その時である。
モワッ
ベロニカの局部がカティルの鼻のてっぺん擦れ擦れまで近づいた時、呪いが発動した。
「!!!???WHBNSJKCNてししはしきZXIPもも!!GMRすBGMMFGSNKLPMGMJGGねGSりねGVJCVIEAEGぼほLSFZXDV!!!!!」
人が到底発することができないような独自言語のような謎絶叫を上げ、カティルは思いっきり悶えた。
しかし、それと同時にベロニカはすっかりとカティルの顔面の上に着席。
このスカート空間では、貴方の悲鳴は誰にも聞こえない。
「ぶぶぶぶ゛ぶぶぶぶ゛あばばばばばばばばばばばば!!!!」
呪いの香りを無理やりに肺一杯吸い込んで、体が痙攣を引き起こすカティル。
その痙攣は時間ごとに激しくなる。
だが何故か勃起が止まらない。
その猛々しく直立するタワーをイツカはマジマジと眺めていた。
「フフフ、あの程度の言葉で、私・・んっ・・・許さないんだからね。
んん・・・もっとしっかり、舌を使って舐めてよ。そうしないと、許してあげないんだからぁ」
「カティ、やっぱり変態・・・ヘンタイ勇者。きっと今ま、で、こんな変態で
おちんちん、おっきくする勇者、他にいないって、イツカ、思う」
イツカはゆっくりとカティルのソレを両手で握ると、
ゆっくりと上下にシゴき始めた。
「んぶ!?」
苦しみの中で、ふいな僅かな快感をカティルは感じ取った。
その快感に身を震わせるとその棒もプルンと大きく揺れ、うっかりイツカの顔を
ぺチンと叩いてしまう。
「いたっ」
「あん・・・大丈夫、イツカ?」
心配そうにして首をひねり、後ろを振り返るベロニカ。
「ううぅ・・・カティ、暴れんぼ。このいけないおチ●チン、イツカが成敗、して、あげる」
そうして大きく息を吸い込むと、勢いに任せてイツカはカティルのソレを頬張ったのだ。
「んぶぶふぶう!!」
また更に強い快感がカティルを襲う。
上半身はベロニカによって強い悪臭と圧迫感にさらされて苦痛を味わい、下半身では何か今まで繰り返し味わってきた心地の良い快楽がカティルを包む。
この辛さと気持ち良さのダブルパンチの罰はイツカが考案したものである。
それは古代の書物に記されていた拷問方が元ネタとしてあった。
辛い拷問を受けながら快楽を受けると、『刷り込み』の効果によって、その人物の人格が塗り替えられる古の洗脳術の一種であった。
だがイツカは知らなかった。この拷問方、主に嫌いな物を好きにさせる為に使われることは稀である。
つまりイツカのうっかりだ。下手をすると、カティルは女嫌いホ●となり、
おマン●恐怖症で男の尻を追いかける道を選ぶようになっていたかも知れない。
だが、そうはならなかった。
ベロニカが無遠慮にカティルの顔面に自分の足の付け根をこすり付け、溢れ出した液を塗りたくる。
イツカが全力でカティルのソレを口で咥えつつ両手でシゴき、射精を促そうと頭を前後させる。
そうして苦痛と快楽の両方を非常に高いレベルで味わわされて続けていた。
ある瞬間。カティルの中の防衛機能が発動した。
カ゚ッ
カティルの両目が熱く輝いた。
「な、なに!?」
いなり強い衝撃波が放たれ、ベロニカとイツカが壁まで弾き飛ばされる。
「アタたた・・・」
「いたい・・・いったい、なに、が・・」
二人の体は無傷で済んでいるが、頭部や腰などぶつけた個所を摩った。
そうして目を開けて現状を確かめると、その眼前にはとんでもないモノが
立ち上がっていた。
「ヒッ」
「なに、アレ」
二人はベッドの上を見た。そこには拘束から解き放たれたカティルが立っている。
その両腕の手錠は壊されて自由の身となり、両腕を組んで威風堂々と立っているのだった。
体からは異常なほどの湯気を立ち上らせ、その体中の筋組織は数倍に発達し、まるでロックのような体系である。
その注目すべきは彼の体の中心だ。そこには、天を仰いでそそり立つ、黒光りした邪神像がそびえていた。
「・・・・」
何も言わずに、カティルは首をかしげた。
するとその僅かな揺れにも過敏に反応して、その邪神像がプルンと揺れた。
「デカッ」
「こわ、すぎ・・」
わなわなと震えあがる二人をカティルは何も言わずに眺めている。
そうして一歩、カティルは歩み寄ってきた。
その瞬間、邪神像がぶるんと振れる。まるでリズムを刻むメトロノームのように
左右に大きく揺れて見せた。
「ひぃっ」
「こ、こわい・・・」
腰を抜かして立ち上がることもできず、二人はただ両手をついてうずくまっている。
これはどうしたことか。それらは全て、カティルの中に隠れ潜んでいた
『あの存在』が原因である。
「まったく・・女の子のことだし、ちょっとくらいのオシオキぐらいなら見逃してあげても良かったんだけど。
私のカティルきゅんをあれだけ痛めつけてくれた上、私を差し置いて復讐の女神を自称した罪は見捨てておけないのぉ」
カティルのもつ紋章の内部世界。
暗い世界の中に浮かぶ球体の中に潜みし漆黒の翼ビシュメルガ。
世界を見通す黒い卵には、まさに怯えきったイツカとベロニカの姿が写っている。
「せいぜい思い知りなさい?本物の復讐の女神の下す天罰がいかなる物か教えてあげるわ!」
カティルがまた一歩二歩と接近してくる。
その際も邪神像はブルンブルンとしなり、メトロノームのようにリズムを刻んで揺れる。
カッチンカッチンカッチン
そうしてベッドからストンと降りると、カティルは地面に座り込む二人を何も言わずに見つめていた。
「ご、ごごごごご、ごめんなささささい、カティ」
「イツカ、も、猛省、ししました」
いいながら身をよじらせる。その際、着崩れた服の隙間から、肌が露出し、
艶やかな服の内側がカティの視界に入る。
「ぐるるるるる・・・・シャオオオオオ!!」
獣のような叫び声をあげて、カティルは飛び掛かるのだった。
「オホホホホ!木の枝で奪われないだけ有難いと思いなさいな!」
別室にて
「あん・・・・ロックさまぁ、早くぅペシェのここにお情けをくださいませぇ」
「ちょっと待ちなさい小娘!アンタばっかり、次は私の番ですわよ!」
「あら?ベルガはさっきもやったでしょ?私、数えてたんだからね。
ペシェが五回でベルガが三回、私はまだ二回しか出してもらってないんだから、
譲ってよぉ」
「お前ら、くだらないことで喧嘩は・・・」
四人で時間をかけ甘ったるく汗の臭いが入り混じる独特な空間を作っていた。
ロックはされるがままになり天井を眺めている。
そんな時、突然隣の部屋からガタガタガタと異音が響くようになっていたことに、ロックは気づいた。
「ンゴ!んぐぃ!!しゅごい!初めてなのに、こんなしゅごいの入れられたら、
もうダメ!壊れる!
カティに壊される!!私のココ、怒ったカティの以外誰も入れられなくなっちゃう!!らめえ!!」
「あんっ、んぐっ・・・あああ!ああああああ!!熱い!そこらめ!ズゴズゴらめ!
お尻、飲み込んじゃった。カティのデカいの出たり入ったり、しゅごい!
イツカ、戻らなくなる!これ絶対治せない!広がり切って直せなぐなる!!たしゅけて!!
レルさん助けて!!イツカ、もう!んあああああああああああああ!!」
特にあちらの終盤は大変に凄いことになってるらしく、ロックの連れ込んだ
三人さえもその異常なシャウトに凍り付いた。
「・・・何やってんだ、アイツら」
そうして翌日。
ちゅんちゅんちゅん
ピカピカお日様が昇り始めました。
「もう・・・カティのケダモノ。私、本当に初めてだったんだからね」
ベッドの上に三人が並んで寝そべっている。ベロニカはカティルと抱き合って
お互いの肌に触れ合い、一晩中睦み合っていたかのように愛おしそう身を寄せ
合っていた。
その肌は栄養を十分に摂取して体をたっぷりと休めることができたかのように、
エネルギッシュに肌艶が良く髪も輝いていた。
〈何があったんだろう・・・途中から意識を失ってしまって、殆ど記憶にない〉
カティルもまた体がもとに戻り、邪神像もシュンと縮まって封印し直されていた。
だけどベロニカの様子を見る限り、カティルは許された上、ベロニカを満足させたのだろうと納得した。
「お、俺も良かったよ、ベル。なんかそう・・・途中から、ベルの甘い香りに
夢中になって、その・・・何か色々止まらなかった!」
「あはっ、そうだったんだ。じゃあ、これから毎晩、カティを夢中にさせて、
止まらなくしてあげるわ」
そうして甘々な空気を二人はしっぽりと楽しんでいた。
二度、三度と二人は軽い口づけを交わし合っていた。
その隣で、イツカは一人だけ輪に入れずに寝そべっていた。
「ん・・・んん・・・イツカ・・・こわ、されちゃった・・・・カティ、鬼、
畜生・・・淫魔王・・・」
正確にはイツカは輪に入れなかったようだ。
朦朧とする意識の中、イツカは虚ろな目をして体を動かせずに突っ伏して布団に体を預けていた。
その尻の間からは時折、コポリコポリと白濁液を溢れ出させ、その際に体をブルりと震わせる。
知らない人がそこだけ見ると、数人がかりで襲われ後穴だけをひたすら甚振られてきた被害者のようで、案件な感じが漂ってくる。
「カティ~」
「ベル~」
それを横に、残りの二人は熱々な一時に浸っているのであった。
そしてそれから暫くして起床。
「大丈夫か?イツカ・・」
「うぅ・・まだ、ヒリヒリする。辛い」
イツカはカティルに背負われて移動していた。理由は無論、イツカの体力は多少
回復しているが、お尻の被害の治癒が未だ間に合わなかったからだ。
先ほどから、カティルに地味に仕返しをするように彼の耳元へ痛い痛いと呟いている。
「大変ねえイツカ。私なんて、とってもたーいせつな宝物を授けてもらった
気がして、幸せなくらいなんだけどな~」
言いながら、ベロニカは自分の下腹部を優しく撫でてみせる。
〈おいマジでやめてくれベル。それは洒落に成らないし心臓に悪いから!〉
そうして一人を背負った分、足取りは遅くなったものの、三人はどうにかいつもの集合場所にしている、営業前の無人の食堂へとたどり着くのであった。
中に入ると、ユリの姿は未だなく、ロックが一人で着席して待機していた。
「おっす、ロック。お前が一番とは珍しいこともあるんだな」
普段であれば、一番はレルさん、そしてイツカかベロニカ、少し遅れてロックや
ユリのような夜遊び組がくるものなのだが。
「・・・ああ、カティか。おはよう」
カティ達の存在に気が付いてもロックの反応は遅れていた。
動作はゆったりとしていて、のそのそとしている印象がある。
「どうした?いつもはどれだけ夜更かししてても次の日にはシャキッとしていた
お前が、らしくないな」
カティルにそう尋ねられるが、ロックの反応はそれに対しても一拍遅れた。
「いや、大したことじゃねえよ。ただな・・・」
言いながら、ロックはゆらりと立ち上がると、カティルに近づいていく。
「ただな、昨夜のお前ら三人の超絶ハードプレイの騒音に当てられて、
休めなかっただけさ」
ロックはカティルの肩に両手を乗せると、何かをたっぷりと含ませた満面の笑顔で、そう伝えた。
「・・・・ほんと、ごめん」
カティルは顔を凍り付かせて無表情で、そのたった一言を腹から絞り出すので
精一杯だった。
だが、外から見てみると、どうもロックの調子が悪そうなことには
別の意味が隠れて居そうな気がしなくもない。
はたしていったい何が・・・?
とそこへ再び食堂の扉が開く。
「おや、今日は皆さん早いですねぇ」
次に入ってきたのはレルであった。
「イツカ、おはよう。この休みの間、ゆっくりと楽しめたかい?」
レルはスタスタとイツカの傍に近づくと、その頭を撫でた。
「あ、レルさん・・・その・・・イツカは・・・」
イツカの体調不良のことに関してバラされるのはマズいと本能的に感づいた
カティルが口を挟む。
だが、その慌てる姿を見て、イツカの瞳がギラリと光った。
イツカはレルの服の袖を摘まみながら口にする。
「レルさん・・・イツカ、今日、お尻いたい」
「えっ」
「イツカ・・・昨日、カティルに・・・」
「わーわーわーわーわー!!!!」
カティルは必死でそれを遮った。
「ごめんなイツカ!俺が昨日無理にレストラン『ボルケーノマウンテン』に連れて
行って、辛さ五万倍カレーに挑戦しろって頼んだばっかりに!
まさかお尻に被害がでる程とは思ってなくてさー!!」
「そ、そうなんですか?」
「そうなんです!そうなんですよレルさん!本当にすいません!そのせいで
お宅の娘さん同然に育ててたイツカの体に悪影響が出てしまいまして
ええ!!これからは気をつけます!!」
そしてそっとカティルはイツカを見る。
〈大丈夫だよな!レルさんに俺達のことバレたら俺の命がやばいことぐらい
お前察してくれるよな?〉
そうして強く願ってイツカを見ていると、イツカはキラリと怪しく目を
光らせて、右手の指を五本立ててカティルに見せつけてくる。
〈それは・・・あれか?五倍返しってこと?〉
〈NO NO NO NO NO NO〉
イツカは首を横に振った。
〈じゃあまさかの五十倍返し?〉
〈NO NO NO NO NO NO〉
また首を横に。
〈じゃ、まままま、まさか・・500倍?〉
〈YES YES YES YES YES YES〉
イツカは小さくだがはっきりと、首を縦に振ったのだった。
カティルはがくりと肩を落とし、レルに見えないように気をつけながら、
右手の親指を立てる。その手は小さく震えていた。
それを受けるとパアとイツカの顔を輝くのだった。
「うん、レルさん。カティルのいう通り。イツカ、すご、く、辛いの食べた。
頑張ってかんしょ、く、した、けど。今朝からお尻痛い。たい、へん」
「なんと・・・それは大変でしたねぇ。
まあ私の若い頃にも覚えがありますから、そういうことなら厳しいお叱りは
なしにしますけど、体には気をつけて下さい。
特に辛い物というのは注意ですよ?」
いいながら、レルはカティルの肩をパンパンと叩くのだった。
「は、はい・・以後、気を付けます」
この時、カティルは気づいていなかったのだが。
「厳しいお叱りはなし」と言ってはいるが、この後、そこそこのお叱りは
待っていることをカティルはまだ知る由もなかった。
そこでまた扉が開く音がした。
「やーみんなーおっはよー!!」
最後にユリが入ってきた。
今まで殆どこちらの自室に帰ってこなかった彼女であるが、久しぶりにみたユリは実に肌艶が良く、ピチピチとしていた。
「やあやあみんなー。なんだが何年も会ってなかった気がするけど元気してたー?
私はねーウフフフ、すっごーく甘い夢に浸っててーとっても幸せだったよー
ウッフフフフフフーレイーンさーん!ウェヒヒヒ」
入ってくるなり、凄く気持ちの悪い笑顔を称えてユリが入ってきた。
見た所、それはそれは楽しい経験を積んできたようであるが、カティル達的には
興味がなく、聞いてもらいたがっているようなユリのクネクネした動きには
カティルでさえ無言でライトニングエッジを飛ばしたくなる何かがあった。
「・・・・ユリ」
そんな彼女を見て、ロックが反応する。
彼はゆっくりと立ち上がると、ユリの近くに歩み寄った。
「ん?ちょっと何よロック。私がレインさんとの幸せな夢を反芻してる時に邪魔しないでくれる?」
分かっていた事だが、ユリはいつも通りにとても仲間に対して見せて良い訳が無い対応をロックに向ける。
そんな彼女をロックは黙って見降ろしていた。
彼はただジーっと何も口を聞かずに、ユリを見つめていた。
「・・・何よ。うざいんだけど!何か言いたいことがあるんだったらはっきりと・・・」
と言いかけた時である。やっとロックに動きがあった。
彼は黙ってユリの片手を掴むと、それを持ってユリを引き寄せ、自分の顔をグッと彼女に近づけたのだ。
「好きだ」
「へ?」
「「ええ!?」」
気の抜けた声を漏らすユリに反して、周囲の皆は一斉に声を上げた。
「好きだ・・・ユリ。何度もお前を諦めようと思ったんだ。だが、やっぱり俺、昔
お前へ抱いていたこの想い捨てきれなかったんだ。だから改めていうぜユリ。
俺のものになってくれ!」
そうしてまたググッと自分の顔を寄せていきながら、ロックはそう囁いた。
確かに、都市伝説級の噂では、この二人は学生時代に交際していた期間があり、
その頃のユリはまだ同性愛者ではなかったということだ。
だがしかし、それはそれ、今ではもうすっかり二人は破局してしまい、二人とも
別の女たちに溺れる日々を過ごしてきた。
それがなんで今更?
ユリの思考はピタリと停止しており、一切の反応がない。
「・・・・・」
ところが、じわりじわりとロックの言葉が伝わっていくようで、
ユリの体がガタガタと震えだした。
そして同時にユリの顔にいくつかのブツブツが浮かび上がる。
「いいいいいいいいいいいいいいいいやあああああああああああああああああ!!
蕁麻疹!ジンマシンでちゃう!!やだ!助けて誰か!!
なんで私があんたみたいなゴリラと!私、女なんだけど!?」
「知ってる。だから俺は惚れた」
「やだ!そうじゃないっての!!私は女が好きなの!女好きの男なんかにだぁれが振り向くか馬鹿野郎!!」
「俺は本気だ」
「だったらなおタチが悪いわよ!さっさとクタバレ筋肉バカゴリラ!!」
矢も楯もたまらず、ユリはポカポカとロックを殴り始めた。
だがそれで止まるロックではなく、彼はこともあろうに、ユリの肩をグッと掴むと、ギュッとその体全体を包むように抱きしめたのだった。
「ユリ・・・頼む、俺のものになってくれ」
「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいや
あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
それから数刻後、勇者パーティーは全員集合した所で朝食もそこそこに、
中央ギルド館へと向かう。
「ふほぉ・・・はんへ、ほへをうへいへはいんは、ひゅひ」
〈ええ、と。くそお、何で俺を受け入れないんだユリ。って合ってるのか?〉
ロックの顔面は砕けた部分がないと言っても良いレベルで、怒りで暴走したユリに殴り倒されていた。
そのペコペコに凹んだ顔面では、まともに喋ることもままならず、周囲の通行人達の視線も痛い。
「ふん!誰がアンタなんかと!」
すっかり怯え切っているユリはベロニカの腕にガシリと掴まって離さなかった。
ピンポーン ロクカイ デス
何時もの電子音。ドアが自動で開く。
今回はユリとロックの件もあり、二回にわけて移動した。
一組目はロックとレル、そしてイツカ
そして二組目にカティルとベロニカ、そしてユリだ。
「ルーさん、お久しぶりです。勇者一行、ただいま到着しましたよ」
「ああ、勇者様。思ったよりお早いお着きですね、流石で・・・」
いいかけて、ルーは見てしまう。ベコッとボコッとへコまされて原型を留めていないロックの顔面を。
「随分とその・・・お代わりのようですね。新手のイメチェンですか?」
「いや、その、なんというかですね」
カティルは必死になってロックの事情がマシに聞こえるようにと頭を悩ませた。
だがそれを無視してユリが一言。
「ふん!バカなクソ雑魚ゴリラのくせに、私を怒らせるからよ!」
「そうでしたか」
特に深く追求されることもなく、それだけで済まされた。
「あ、あはは・・・でぇ、ルーさん?休みも明けてしまいましたが、今日からは
どこに出動すれば良いでしょうか?」
「ああ、そのことについてですが・・・」
ルーは視線を少し移して、話を切り出す。
「実は本日のお仕事の前に、皆さんに紹介したい方がいらっしゃるんです」
「紹介?」
「はい・・・先日唐突に連絡が入りまして。なんでもイツカさんの関係者だそうでして」
「・・・イツカ、の?」
一瞬、怪訝な表情でイツカは聞き返す。
〈イツカの親戚とか身内の人ってことだろうか?
確かに会ったことがないけど・・・〉
「どのような方なんですか?イツカさんの関係者というのは」
レルが一歩前へと出る。その目をギラリと光らせた。
「詳しいお話は、そちらの方から・・・どうぞ、お入りください」
ルーは部屋の隅にある、別室へと繋がる扉へ向いて声をかけた。
そうして一拍置くと、あちらから扉が開く。
開いた時にまず目に入ったのは接客係をしていたのであろうエルザで、
その後ろから一人の女性が付いてきていた。
だが深くローブを被っており、見えるのは口元だけ。
その顔の全容は今一つ見え辛い。
「どうぞ」
エルザが扉から一歩横にずれると、中の客に対して手招きをして入るように促す。
「失礼します」
その女性は丁寧に一度お辞儀をすると、それから扉の境界線を跨いで、こちらの部屋へと入ってくる。
そうしてルーの隣りへと立つのだった。
「・・・お久しぶりね、イツカちゃんっ」
やけに高いトーンでそうイツカに声をかける。
「!?」
「貴女は・・・」
その瞬間、レルとイツカは何を察したかのように反応した。
それを受けて小さくフフと笑みを浮かべると、その女はローブをめくって、
その素顔を完全に晒した。
「会いたかったわぁ、イツカちゃん。立派になったわねぇ」
その姿は非常に美しかった。
日の光に照らされて、黄金色に輝く髪。
乳白色の透き通るような肌色。
軽く赤い紅を引いたような唇。
そして、この世に存在するとは思えない、翡翠色の眼。
そのどれもが現実感のない幻想的な美を閉じ込めていた。
その姿を見て、誰もが見とれている。
ただ二人、イツカとレルの二人を除いて。
「まさか・・・何故、君がこんな所に・・・」
レルはギリリと奥歯を噛みしめていた。
その隣で、信じられない物を視るように大きく目を見開いて、イツカは言う。
「・・・・・・どうしてここに来たの、お母さん」
ここで二話終了で三話に行きます。
三話なのですが、中途半端で終わったイツカVSキギクゴを予定しています。
その前に、ちょっとエチチな短編の書き溜めが進んでいましたので、そちらの投稿を優先させて頂きたいと思います。
次回更新は9/21の夜を予定。




