一話 シーンend『絶叫』
日も暮れて夜の帳がおり、街灯の油に係の人が一つ一つに火を入れていく
姿が見られる。
バザーや一部の商店はその日の閉店作業を済ませ、代わりに酒場など
夜の店に明りが灯る。
勇者達がゲートを通ってバリザドレへ帰還できたのは、そんな時分のことである。
バン!
「どうしてそんなことになったんですか!!」
中央ギルド館のルーに対して、戦闘後の報告のために再びギルド長室へと
立ち寄ったのであるが、そんな彼らの話を最後まで聞いた彼女から返って
くるのは、素っ頓狂な悲鳴とガクガクと揺れ泳ぐ瞳だった。
彼女は頭をガシガシと搔きむしると、そのまま頭を抱えて突っ伏してしまった。
現れた神獣二体は討伐できた。
だが格上の神が現れた。負けた。
味方の兵士に被害が出てしまい、その神を逃してしまった。
これはもう、とんでもなく世界的に頭を悩ませる大問題となるだろう。
なんせ強大な敵が、何時どこから攻めてくるか分からず、
もしも防衛に失敗したら、人類が滅びる糸口となるかもしれない。
「すんません、俺達の力が・・・及ばなかったばかりに」
それを見て、カティルの顔にますます暗い影が落ちる。
「あ!・・・えとえと、その、勇者様、そういうので怒っているわけでは、
なくて、ですね」
そんな彼の表情を見せられ、落ち着かせようとせざるを得なくなるルー。
必死でフォローを考えるのだが、上手く言葉が出てこないのは
お互いさまのようで。
ルーの横で控えていたエルザも、上手く言葉が見つからないでいた。
「安心しろよ、カティ、ギルド長、エルザさん。
俺達はもっともっと強くなる。
んで強くなって、バルズタースがまた現れたら、次は俺達、絶対に負けない!
だよな?」
さりげなくカティルの肩をポンと叩いたロックが
そんなことを言って笑って見せる。
「・・・そう、だな」
その通りだ。俺達は勇者なんだから、勝たないとならない。
そしてもっと強くなれる伸びしろがある〈と思う〉、きっと。
「そ、そうですねぇ!皆さんもっと強くなりますものね!
それにきっと敵の戦神バルズタースといえど、2、3日中に
暴れ出すとは限りませんしね!
魔術師協会の占い師たちに、その辺りを優先して占うようにして
もらいましょう・・・大丈夫ですよね!?」
一滴の期待を込めて、ルーはレルの顔を見つめるのだった。
「ふむ・・・・そうですねぇ。
バルズタースが私達をいつでも殺せる状態に追いやっていたのにも関わらず、
そうしなかったのが気になります・・・・・ですから、おそらく・・・」
「ですよね!」
レルの言葉も大分、いい加減な調子であるが。
老人なりに場の雰囲気に合わせようとした発言なのかもしれない。
どうせ冷静な考察のもとで発言したとしても、その予想は絶望的なビジョンしか
見えず、明るい見通しの言葉など吐けなかっただろう。
それならばせめて希望を与えるような、
「自分達が強くなるまで、どうか襲ってきませんように」という
願望を持っての発言をレルはしたのだ。
「で、私達の装備なんですけど・・・・直るのは何時頃になるの?」
ところがこのベロニカの発言が、場に再び暗雲を呼び戻す。
「装備・・・装備ですか・・・」
カティルの鎧、半壊。オリハルコンソード、刃こぼれ。試験型極小オーブ破損。
ロックの鎧、上半身部分全損〈欠片はある程度回収済〉ハルバード、刃にヒビ。
シールド、亀裂あり。
ベロニカの衣服、激しい破れ有り。籠手、試験型術オーブ破損〈修復不可〉。
ユリ 弽、裂傷あり要交換。弓無傷。
レル&イツカ 装備、ノーダメージ。ただし額や手の甲などの身体に小さい擦り傷等あり。
といった具合に、メンバーによって装備の問題が深刻になっていた。
ルーの元に出向く前に、キムキーと会っていたのだが。
「ごあんしん・・・ください・・・われわれがなんとか・・・して・・」
激しく傷ついた各々の装備を眺めて、キムキーさんの表情から感情が抜け落ちた。
大きく見開いて血走った目で装備を見ているのに、
その顔からは生気が感じられなかった。
体はピクリとも揺れず動かなかった。
その姿を見てしまうと、勇者達は口にこそ出すのを堪えたが、本当に
ごめんなさいと心の中で叫んでしまったほどだ。
あの時ばかりは自分たちの力不足を呪った。
おそらく直すにしても新調するにしても、想像もつかないほどの超高額な資金と
時間を要することになるのだろう。
「ここは、さっきキムキーさんに預けた『アレ』が良い拾い物であることを
願うしかねえな」
「アレ、というのは何の話ですか?」
ロックが何気なく口にした言葉を聞き、ルーが関心を示す。
「ああ、未だルーさんには話してなかったな。
キムキーのおっさんに預けてきたから、後でそっちにも報告があると思うけどよ。
実はバルズタースに敗れて、そこから目覚めた時にな。
なんか変なギフトを貰ったんだよ」
「ギフト・・・とは、それはどのような?」
ルーは控えているエルザにメモの準備をさせ、一言一句聞き漏らさないように
しようとして、ロックを見つめた。
「なんていうか・・・袋?
小さい小銭とか入れるような小袋でさ、中に不思議な粉が入ってた」
ロックが喋るのと同じスピードでエルザが速記していく。
ほぼ時間差がない。
字はいささか他人に見せられるような綺麗さではなく、
クチャクチャとしているが、本人が読めれば良いという程度の
荒っぽさ、速さでメモに文字が書き込まれていく。
「こな、ですか?特徴や色とか、何かありませんでしたか?」
「あえていうなら、サラサラ?
手の濡れたとこで触れようが何処に触れようがシケりも固まりもしない、
ずっとサラサラで。
粒は細かいんだけど粉っぽくなくて、砂っぽい感じがして。
キラキラと輝いてて?
それがたっぷりつまった袋が、俺の口に押し込められてたんだよ」
良くそれで窒息しなかったなコイツ。
それはさぞ、ベトベトになってたのではなかろうか。
「なんだとコルァ!?」
急に傍で聞いていたユリの表情が怒りに染まる。
「ど、どうしたんだよユリ?俺変なこと言ったか」
ユリの体がワナワナと震えている。
「・・・あんた、最初は私に、森の中に潜んでいたスライムが突然襲ってきて、
それを迎撃した時に粘液が飛んできてかかった、って言ってなかった?」
ギクッ
「あの粉が入ってた袋がちょっとベトベトしてたのが気に成ったけど、
あれはアンタの唾液だったってことか・し・ら?」
「あ、いや、その・・・な?」
ロックが青ざめる。顔中が変な脂汗でダクダクだ。
「その自分の口にぶち込まれてた、唾液でベトベトした袋を
私に触らせたってこと?」
「あ、ああ?いやでもあれは、いや・・嘘をついていたのは謝る・・・
だけど、あれは、お前が俺の手から奪い取ったからで、
俺からお前に触らせたわけじゃ・・」
「問答無用じゃボケェ!」
ユリは怒りの波動に目覚め、真っ赤に血走った眼でロックを睨みつける。
ユリの鉄拳がロックの顔面に飛ぶ。それが奴の顔面にめり込んだ。
「・・・お話はよく分かりました。
皆様の損耗した装備の件、先ほどお聞きしたギフトの正体が分かり次第、
お知らせ致しますので、本日の所は各々の宿泊先へお帰り頂いて結構ですよ」
ルーにそう言われて、カティル達は宿泊先として提供されている
『羽ばたく白鳥亭』へと帰り着いた。
カランカラン
入り口のドアを開くと、ドアに取り付けられた鈴の音に気付いた店主が、
カウンター越しにカティル達を見る。
「あら・・あらあら、カティル様、皆さん、よくお戻りになりましたねぇ。
大変だったでしょう?」
「・・ただいま、エレニーさん」
彼女はエレニー・マム。
見目麗しく年齢を感じさせないその見た目で、お客様をいつも温かく
迎え入れてくれる、美しい笑顔を称える女性だ。
このホテルで働く雇われ店主であり、オーナーに次ぐ地位なのだが、
けしてそこに甘んじることなく、一日の大半をこの店の業務に
関わっている。
どうやら今は店番をしているらしいが、他に来客もいないこともあり、
カウンターから抜け出して、トコトコと俺達の傍まで近寄ってきた。
「今日も皆さん、無事で帰ってこれたようねぇ」
「ええ、なんとか」
「今日の相手は中々に手ごたえがあって、悪くない勝負だったって感じでした!」
ロックは調子よく、そう強がってみせる。
「何が中々に、だ。あんたも私も死にかけたじゃない」
「本当よ。いつもの事とは言っても、命がいくつあっても足りないわよねぇ」
ユリに続いてベロニカが語る。
ベロニカは肩をがっくりと落としており、疲労困憊という姿を平然と
エレニーに見せつけるのだ。
そうして、真っ先にエレニーに近づいて抱きつくのだった。
ムニムニふわふわ
「ああ、いやされるぅ」
まるで幼子がするように、ロベリアはエレニーの首に手をひっかけ
、その体を預ける。
「あーあー・・・・」
羨ましそうにそれを見つめながらユリが漏らす。
エレニーは特に嫌がりもせず、娘にそうする母親のように、ロベリアの頭に
手を置いて、数回撫でさする。
「大変だったわねぇ、ベルちゃん」
「んー・・・大変だったんだよぉ」
「今日の晩御飯は皆の大好きな物を用意したの。何だと思う?」
「んん?・・・・・カティだったら、エレニーさん特製のロールパンだしぃ、
ロックだったら、でっかいステーキとかだよね。
ユリなら豆腐と玉ねぎの味噌スープでぇ、レルおじいちゃんは嫌いな物はない
けど、食後のコーヒーとデザートが絶対欲しいんだよね。
イツカならコーンポタージュだっけ。私はぁ・・・」
もしかして、と思いつつ、ベロニカは胸クッションから顔を抜き出して、エレニーと目を合わせる。
「カリカリイカフライの乗ったシーザーサラダ・・・?」
顔色を窺うようにしてそう尋ねる。
エレニーはニコッと微笑む。
「特製ドレッシングとダイスチーズ増しまし、よね」
それが答えだった。ベロニカはいっそう目を輝かせる。
「先ずは皆でお風呂ね。汗を流してきたら気持ち良くご飯が食べられるわよ」
かぽーん
羽ばたく白鳥亭の設備は実に充実している。
それは温水設備も例外ではなく、売りとしては地下深くから組み上げる
天然の温泉を引いていることがあげられる。
それを大浴場へと溜め、宿泊客以外の入浴のみ利用の客も惜しみなく歓迎するので、毎日何百人もの来客でごった返す。
その込み具合を気にして、宿泊客たちの部屋には添え付けのバスルームが用意されているのだが。
案外、そちらでは物足りずに大浴場に足を運んでしまう客も多いのだとか。
その理由はいくつか存在する。
まず部屋に添え付けのバスタブでは味わえないほど、大浴場は広く絢爛豪華で、
浴槽も広い。
そして実に10種を超える風呂が用意されている。
電気風呂、アルカリ硫黄泉、炭酸泉、バラの香りの香水風呂、
乳液を入れた濁り湯、etc
一日では味わいきれないほどの風呂があり、人々を楽しませるのだった。
「ぐえへっへっへっへ、眼福がんぷくーみんな、ええ体してますなぁ〈じゅるり」
まるで男性とかわらない下品な顔を隠そうともせず、
ユリは脱衣所で服を脱いでゆく。
だが体は脱衣籠に対して横向きに、頭の向きは籠の反対方向を向いている。
その視線は常にお湯目的の来客に向けられており、人々がこちらに背を向けて
衣服を脱いでゆく様を眺めているのだ。
〈ああ、近所の小学校体育教員のケンタウロス族シルブさん、
引き締まったお腹がエッロ。
長い髪も好きだけど、あれだけすっきりと短い髪だと首筋や鎖骨辺りが
オープンで良いなぁ。
あっ、バルパアさん今日も娘さん連れかぁ。でへへへ・・・今日は赤なのぉ。
普段の無色無個性なオバサン下着も悪くはないんだけどぉ、
やっぱり旦那さんへのサービス目的よねぇ。
あのセレクトが旦那さんじゃなくて、
『この下着・・・ユリちゃんに喜んでもらいたくって〈ポッ』だったら
どれだけ嬉しいかぁ。
でもバルパアさん、自分が脱ぎ終わってから娘のジェネちゃんが脱ぐのを手伝うから、眼福時間が長くて良いなぁ。
レインさんの真逆でお胸が慎ましいのに、あれでも子供を産んでお乳を上げてたっていうんだからてえてぇ〈尊い〉!
てえてぇ てえてぇ。
おうおう、紅百合団の子達も来てる、久しぶりに見たね。
四人組で来てるけど、でも一人は服装とか肉付きを見る限り、
戦士職とは思えない。団の魔法使いにあんな子いたかな?
・・・・・・もしかしてカタギの人?
ナンパを成功させるとはやりよる。
でもあの子、今晩は三人を同時に相手させられるのよね、素人には辛いのに
きっちく~。
きっとお風呂で親睦を深めてからビールのコンボで落とされるのかなぁ
・・・あとは〉
べしっ
ふいにユリの後頭部に衝撃。
ベロニカがチョップしていた。
「・・・下品なオーラがだだ漏れてる。ちょっとは自重しなさい」
見ると、ベロニカは冷たい視線をキッとユリに向けていた。
ユリのオープン変態な所がベロニカには好まれてないというのもあるが、
それに輪をかけて今日あったカティルへの態度をベロニカは許しては居なかった。
『ほんと、死んだかと思ったんだけどなぁ・・・いやあ残念残念』
ロックの言葉を聞いて、もしかしたら失言ではなく悪役上等にお道化だったかも
知れないのはベロニカにも分かる。
だがそれでも、カティルを心から愛するベロニカには、あまりにも度し難く許されざる行動だった。
「「・・・・・・・・」」
お互い無言でしばし見つめ合う二人。
ユリは無表情なお澄まし顔で、ベロニカの顔をジーっと見つめていた。
モミモミモミ
唐突にユリの手がベロニカの胸に伸びる。
顔は感情を消し去って独特の緊張感を保たせているというのに、
体は正直なのがユリだった。
ベシッ
無言でその手を払いのけるベロニカ。
二人の溝はますます深まり、埋まりようのない距離感がその場を支配していくかに見えた。
ソロソロ
するとその脇を通って、こっそりとこの場を抜け出そうとする者が在った。
全裸のイツカだった。
「待ちなさいイツカ」
「未だ湯船に浸かりもしない内から、どこへ行こうって言うの?」
二人の手が同時にイツカを捕らえる。
どうやらイツカは服を脱いで進んで入浴をするふりをしながら、
ここから抜け出す機会を見計らっていたらしい。
「や・・・イツカ、体が濡れる、好き、じゃない。お風呂嫌い」
「や、じゃないでしょ?
ほらほら、お風呂入ると気持ち良いじゃない」
「イツカはいつも逃げようとするね。それでも最後は湯船の中で
トロットロになるくせに。何がそんなにイヤなの?」
「うーうー・・・わから、ない。お風呂、入る、体ポカポカ・・・」
「だったら、良いことじゃない。ほらほら行くわよ」
ベロニカは二言目は許さないといわんばかりにイツカを無理やりにでも
引きずって行こうとその手を引っ張るのだ。
「やー!お風呂、嫌い!体濡れる、ポカポカ。だけどお風呂から出る、体クタクタ」
「それは、あんたが変に長湯するから、のぼせただけでぇ」
「やー!!イツカ、お風呂入らなくても服、着替える。お肌、
濡れた布でフキフキする!それで問題なし!!」
「問題大ありよ!!そういっていつもお風呂に入らないで!」
一応のフォローだが、この世界的に見てお風呂が当たり前の習慣とされている国はそう多くない。
イツカのようにわずかな湯と布で拭くだけの地域も珍しくはない。
パーティーメンバーがそうした風呂なし国の人間ならば、
イツカも困らなかっただろう。
だが不運なことにベロニカとユリ、この二人は既に
風呂の魅力に染まっていたのだった。
「髪だって洗わないと臭くってゴワゴワしてくるっていうのに!
ほらワガママ言わないで!い・く・わ・よ!!」
「やー!!」
二人がかりで腕を引かれているというのに、イツカは抗い続けた。
だが、やはり力負けしているのか少しずつ、わずかに風呂場へと動いている。
何も知らない他の客たちは、不安げな表情でそれを見守っていた。
そこへふいに、イツカは二人の腕から逃れることに成功する。
彼女は数歩離れて二人と距離をとる。
そして大きく息を吸い込むと一言。
「もう!心配しなくてもイツカ、大丈夫!
カティ、いつも私に臭いチ●チンなめさせる!これでおあいこ!!」
何が大丈夫か不明な言葉が辺りに響く。
まるで氷河期が来たかのような冷気を受け、
その場の皆が凍り付いた。
それからすぐのこと。
ゴクゴクゴクッ
「ああ!やっぱり風呂上りにはこれだなカティル!!」
ロックは風呂、サウナ、水風呂、サウナサウナサウナ水風呂という地獄の
サウナルーティングから上がってカティルと合流。
店内の休憩所にてこの店自慢の瓶入りのミルクを味わっていた。
「んくっんくっ・・・プハっ、全くだ。
この一杯がすーっと体に染みわたっていって体を
いい具合に冷やしてくれて・・・」
ドコドコドコドコドコ!
言いかけたその時である、ふいに女湯の方から騒音が響く。
「かあああああああああああああティイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
ドコドコ騒音の正体はベロニカとユリだった。
二人は唐突に女湯との出入口から飛び出すやいなや、カティルを視認すると
真っすぐにドタドタドコドコと駆け寄ってくる。
その表情は鬼気迫るものがあり、二人とも両目がぎらぎらと燃えていた。
その両方からイツカは捕縛されて引きずられている。
お風呂嫌いで入れるのに苦労するかと思われていたが、ベロニカとユリによって
髪から足のつま先まで徹底的に洗浄されたと見え、ツヤツヤテカテカしている。
だが、イツカはもうどうにでもしてと言うように、死んだ目をしながら
ストラップのようにユラユラと揺れていた。
「えっ、なに?ベル、いったい何があって・・・!?」
「おいおいユリ、やっと俺の魅力に気が付いたか?
だったら今晩でも俺と夜せ・・・・」
「しるかボケ!!」
目を血走らせたユリの鉄拳が唸り、ロックは簡単に吹っ飛ばされ、空の一番星になった。
キラーン
「ろ、ロックダイーン!
馬鹿な。あの世界最高の硬度を誇る鱗を持ったロックダインがああも簡単に!?」
ノリでボケてしまうカティル。その隙に、両腕をベロニカによって掴まれた。
「カティ・・・信じてたのに、信じてたのに信じてたのに信じてたのに信じてたのに〈以下エンドレス」
〈えっ、なに?信じるって何を!俺、ベルを裏切るようなこと何もしてない筈なのになんで?〉
足がふらつき始めたカティルはヘナヘナと尻もちをついた。
そして見上げる。
自分を見下ろす二匹の獣を。いやこれはもう神獣と呼んでもいいかもしれない。
目を血走らせ、何も言わず、その口腔の奥からギザギザのサメの歯のような牙を覗かせる。
何でこんな風になったのか、理解が追い付くよりも前に、ベロニカだった獣は
ぐわしっと力強くカティルの頭部を掴んだ。
「ああああああああああああああああああああああああん!!
ガブウウううううううううううううううううう!!」
その頭に、ベロニカの鋭い牙が突き刺さった。
「いってええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
その晩、街中に一人の青年の絶叫が響き渡った。
次回更新は五月11日予定。
本編ではなくちょっとエチチな短編のほうになります。
よろしかったら見てください




