一話「なんか突然唐突な始まりですね」シーン1
初投稿です。
これから少しずつでも、皆さんに楽しんで頂ける物語にしていけたら幸いです。
それは 「とある世界」の物語
その世界は 一人の主神によって作られました
そして 沢山の神々が生まれ 管理が始まり 樹が育てられ 魚や獣が作られ
人やエルフ 獣人やドワーフ 吸血人や鳥人など「人類」と呼ばれる
様々な生き物が 作られました
こんなに にぎやかになっても
この世界には 名前 が付けられることはありませんでした
きっと 主神にとって この とある世界は
たいして大切な世界ではなかったのでしょう
だから 最低限 陸を「大地」と 大きい水たまりを「海」と名付けました
この世界には 名前 がありません
これは そんな ちょっと寂しい「とある世界」を守るために戦う
人々 の物語です
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この世界では、百年に一度、世界を滅ぼさんとする魔王と大勢の魔族軍が現れ、
それを退治する役目を背負った五人の勇者が産まれ、勇者達を教え導く一人の賢者が表れるよう定められている。
そうして歴代の勇者達は数え年〈0歳なし一歳スタート。正月に加齢〉で18歳を迎えた年に旅立ち、大勢の国々からの助力と人類軍の支援を受け、およそ三年~五年ほどの時間をかけて魔王を倒し、
80年弱の平和な時間を人類にもたらしてきたのだった。
ところが暦1820年、19代目の勇者パーティーが魔王討伐を成しえた年、悲劇が起きた。
「くそっ!!なんてことだ!僕らはこんなことにも気づかずに、
今まで戦ってきたのか!?」
様々な蔵書や歴史資料を山積みにした机を力強く殴って、一人の男が嘆いている。
その男は19代勇者パーティーの一人、魔法使いのレル・ムックワー。
彼は学者としても高い才能を有し、史学にも精通し、今までの魔王と人類の戦いの歴史を知るからこそ気付いてしまった。
切っ掛けは一つの疑問からだった。
なんで、魔族と僕らの戦いは終わらない?
なんで、魔王や魔族が二度と現れない方法を誰も探そうとしない?
それはつまり、この人と魔の争いが、終焉を迎えては困る奴らが居るからだろう。
そして更に
「なんてことだ・・・もっと早くに気づくべきだった。」
第五代勇者の仲間、バンガボは水の魔法を得意としていた。
濁流魔法を用いて業火の魔王ガガレゲに立ち向かい、弱体化させることに大いに貢献した人物である。
すると、次に現れた魔王ンガベヴは『牙持つ魚たちの濁流〈グランデスウェーブ〉』という広域殲滅魔法を得意とする海の魔王だった。
第11代魔王ミタマクライという吸血鬼の魔王を倒したのは、剣聖として今も信仰されている勇者エックス・カルバードであった。
その次に現れた12代魔王は、邪剣を振るい、あらゆる敵を一刀両断したと伝えられるデランダール。
他にも似た共通点のある事例が多数。
つまり次代の魔王は、一代前の勇者パーティーの誰かしらと非常に似た特製を持って現れているのだ。
そのことに気づいた時、レルは思った。
「もしかして、人類を作り、僕ら勇者パーティーを生み出したのも神。
そして魔王と魔族を生み出したのも同じく神だった?」
〈この世界は、僕らが信じていた神々にとっての遊び場でしかなかったのではないか?〉
それを感じ取った次の日。
世界各地の神殿で、同時多発的にそれは起こった。
世界各国に存在する、それぞれの国で信仰される神の神殿。主神とは別に、その国にとって縁が深い神のための施設。
その各神殿には大きな石板がある。
その祀られた神からの託宣を伝えるための石板だ。
そこにはこう記された。
『愚かな人類に告ぐ
汝らにはもう価値がない
汝らはもう十分に我らを楽しませたが、それももう終わりである
暦1917年、我ら神々は貴様らの殲滅のために動く
人類も 魔族も この世界そのものさえも 無価値となり果てた
ただ平伏し、その終わりの時を待つが良い』
どの神の神殿であっても、その内容は一致していた。
多くの人間達がその神からのメッセージに慌てた。
戸惑い、発狂する者さえ在った。
祈る神を失っても、まだその神に向けて祈りを捧げる信者がいた。
治安は悪化し、殺し合いや騙しあい、略奪が横行した。
だがそれでも、人類は生きなくてはならぬと立ち上がる。
その約束の時まで100年たらずの時間、一度は魔族軍討伐のために結集し、
協力して助け合った人類は涙を拭い、人類救済を人類の手によって再び達成しようと一丸となって、その来たるべき日に備えて着々と準備を整えることとなった。
そうして迎えた暦1918年のこと。
新世代の勇者パーティーが集結し、活動を始めてから一年が過ぎた頃、この物語は始まる。
場所は世界の極東の島国「キングスランド」
世界の中心となる巨大な大陸「ラシューア大陸」
その形は西向きに立つ、逞しい角が生えた横長な牝牛のようと例えられる大陸。
そのお尻の部分から東に20Kmほどの距離にある、その国に勇者達は滞在していた。
場所は王都ラダンから西に離れた湾岸工業都市「バリサドレ」。
その中心街に佇むホテル「羽ばたく白鳥亭」、そこが現在の勇者パーティーの宿泊先である。
「みんな、おっはよー。」
皆が着席する中で一人だけ立っているその青年の名は「カティル」今代の勇者である。
元は農家の出であるが、生まれて直ぐに勇者としての資質である「ライトニングエッジ」を持つことが判明し、親元から引き離されて、勇者として戦うための鍛錬を課せられてきた。
素直で正直な心根を持っている。
夜更かしでもしたか、その日のカティルは少し気怠そうで、眉も垂れ下がり気味だった。
「「へーい」」
ところが、それに輪をかけてパーティーメンバーの顔はやや暗く、そして気怠げであった。
「おーい!朝の一発目からテンション低いのやめてー!」
言いながらカティルはテーブルを軽くパンパンと叩いて皆の顔を見渡す。
「ああ、ごめんねー」
仲間の一人の女性が顔を上げる。
「昨夜はー久々にナンパに成功してさ。ベッドの上で一晩中その子を可愛がってあげてたらー気付いたらお日様上り始めてたのー」
椅子の椅子の背もたれにググッと体を預け、気怠そうに口を開いたのは
メンバーその1「ユリ・レビアン」
100年前の先代魔王との最終決戦の際に武勲を上げ、子爵の称号を賜わったレビアン家の長女〈上に跡取りの兄あり〉。見た目は大陸西側に多く住む黒髪黄色人だった祖母の血を濃く受け継いでいる、弓手だ。
サムライと呼ばれる戦士を先祖に持ち、戦闘時には祖母方の先祖代々に受け継いできた袖付きの皮胴を愛用し、額当てを巻き、長弓をもって強力な一撃を敵に見舞う。欠点といえばそう、女色でビッチである。
「おーまー〈え〉!あれほどナンパすんな同性愛者量産するようなことすんなって言われてんの覚えてないのかよ!!」
「えぇ?そんなの覚えてないよ?」
「いーや!この前ギルド長からも注意がきてただろうが!
貴族の娘さん食ったり、結婚を控えた平民のお嬢さん食ったり、etc!
ここをお前が以前通ってた女学園と同じと思ってんじゃねえぞ!?
何時までも国やギルドがお前のこと、かばってくれるわけじゃないからな!」
「あーあー聞こえませーん!!」
ユリは耳を手で塞ぎ、完全にソッポを向いてしまった。
いつもこうだ。
こうなったらどうあっても話を聞いてくれなくなる。
殺人けが人が出るわけではないが、彼女がやらかす度にどこかからお叱りを食らう。
戦々恐々としてビクビクするカティルの気持ちなど、きっと彼女は考えてはくれない。
「・・・・すまんがカティ、あまり大きい声出すのは止めてくれないか?
頭に響くんだよ・・・」
次に口を開いた男はメンバー2『ロック・バングスター』
キングスランドに200年の長きに渡って代々、忠義を尽くして戦ってきた
バングスター男爵家の三男であり、パーティーの前衛を支える重装騎士である。
190cmを超える体躯、分厚い重層鎧に身を包み巨大なハルバードと大楯を振り回す前衛ガードだ。ユリとは幼馴染の関係である。
「どうしたんだよロック?調子悪そうだけど、風邪か?」
「いや・・・昨日ちょっとな」
それとも二日酔いとかだろうか?
ロックは酒が好きだ。深酒することぐらいあるだろう。
「昨日ちょっと・・・行きつけの娼館を一晩貸し切りにしてもらって、皆と飲みながら楽しんでいたんだが。十人目の子に発射してから記憶がなくてよ」
ダメだこいつも早くなんとかしないと。
「貸し切り!そんなことできんの!?」
「そりゃ金さえ積めばな」
「それで酒飲みながら女の子達に連続砲撃!?」
「おうっ、連戦に耐えられないようじゃバングスター家の恥だからな!」
「・・ちなみに、その代金はどこから?」
そろそろと尋ねるカティルに対してロックは、ただ黙って親指を立てた。
〈ダメだコイツも男としてはどうだとしても人としてダメな系だ!!
絶対にまた散財して無一文になるまで溶かしやがった!
今のところ俺達の頼りは国から支払われる給金だけだってのに!〉
その時々に達成した仕事によって、討伐報酬に各国からの謝礼が上乗せされ、
アクティブに戦い続けて居れば、上級貴族の年収に匹敵するほどの収入となる。
このロックという男、槍珍の上に散財癖があり、その月の給金を一晩で溶かすぐらい造作もない。
この宿の部屋代が国からの援助によって無料で借りられなかったら、
一発でホームがレスした人になっている筈だ。
「おい、ちょっとロック?
その貸し切ったお店ってもしかして・・・女王の聖剣ってお店じゃないでしょうね?」
「おーよく知ってるなユリ。詳しいじゃねえか」
「やっぱりかテメエ!私だってあそこの嬢で狙ってる子いっぱい居たってのに!
なかなかレアなのよ!?私らみたいな女性客も歓迎ってお店ってさ!!
どーしてくれるー!!あんたの汚いチ〇コにぶっ掛けられた子達って思ったら、
もう、ま 〇 こ 舐められないじゃないのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ユリの怒りのオーラが爆発する。
ロックは反射的に盾はなくとも椅子などを構えて防御姿勢をとる。
ユリがメラメラと燃える瞳でロックににじみ寄る。
ドン! バン!!
その時、一言も口を開かなかった残りの仲間の二人が揃って大きな音を立てた。
1人はテーブルに拳を打ち付け、一人は手持ちの剣の鞘で地面を叩いた。
その後、場はシンと静まり帰り、落ち着きを取り戻す。
グ~
誰かは分からないが、腹の音が鳴るのが聞こえた。まだ食事をとれていなかったのを思い出した。
これからは週二回更新ぐらいで投稿できたらと思っています。
色々と未熟さが目立つと思いますが、応援して頂けたら幸いです。




