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セレスティアル  作者: たくレイ
第二章
59/60

58話 死体

翌朝館の前に死体があった。

気づいたのは館の清掃員のおじさんが朝の業務行ってる際気づいた。




「心臓を貫かれてますね」


 エルラの護衛は、心臓を貫かれており絶命していた。

 周りに荒らされた様子がないところ、恐らく戦闘にすらならなかったのだろう。

 そんな事が出来るのは、暗殺者か、圧倒的な強さを持つ存在だ。

 後者の方は正直あんまり考えたくないな。

 仮にも、この国姫君なのだ。

 付いてきた護衛だって決して弱くない。

 そんな護衛が2人ともなると、侮っていい存在ではないだろ。


「エルラ様!」

 

 宰相のクラウドが、エルラに駆け寄る。


「ご無事ですか!?お怪我は?」


 クラウドは、エルラの体を隅々まで確認して怪我がないか確認した。

 一通り確認して怪我がないと知ると安堵したようだ。


「しかし一体誰がこんな事をしたのでしょうね」


 アランは、密かにクラウドのことを疑っていた。

 エルラ様の心配をする姿は演技には見えなかったが、商人としてすぐに信じるわけにはいかなかった。

 先程の話にもおかしな点はないが、それが全て本当の事かは分からない。

 作り話の可能性も十分にありえる。

 

「ラノス君」

「何ですかアランさん」

「君の空間魔法で周囲の警戒を怠らないように。敵がまだ近くにいるかもしれません」

「分かりました」


 俺は、アランさんの言う通りに《空間把握》を使う。

 目に見えない膜状が15メートル程に広がり、その空間内の全てを把握する。

 空間内に敵の姿はないが、いつ現れてもいい様に警戒を張り巡らせる。


「その魔法はどれ程持続して使えますか?」

「そうですね。特に何もしなければ2時間ぐらいは持ちますが、その後は魔力が持たないです」


 子供の頃から魔力を高める特訓をしていた事もあり、そこら辺の魔法使いよりも遥かに多い魔力量は持っている。

 結果《空間把握》だけなら長時間の使用は可能だ。

 しかし、これが戦闘中とかだと話は変わってくる。

 戦闘中は《アーマ》を使いながら《空間把握》をすると、魔力の消費量が上がるのは勿論のこと、2つ同時に魔力の運用が必要になる為凄く疲れる。

 使える時間は増えていってるが、1年前から使える用になったものでありまだ完全には使いこなせてはいない。

 よって、戦闘中では《空間把握》は30分が限界だ。

 

「それだけ長く使えれば十分です」


 アランさんが俺の返答に満足そうに頷く。


「それでは、1時間程使っていて下さい。残りは念の為に残していて下さい」

「はい」


 

 それから俺達は、先程話していた応接室に戻っていた。

 

「今は、うちの者で犯人を捜索していますので、それまでの間はこちらでゆっくりしていてください」

「助かります。クラウド卿」


 アランはクラウドに礼を述べる。

 

 犯人が見つかるまでは、迂闊に行動は出来ない。

 そして、孤立しない様に皆で固まる必要があるがのだが、ラノスはエルラの様子が気になっていた。


「エルラ様大丈夫ですか」

「ん、あ、ああ大丈夫なのじゃ」


 言葉とは裏腹にその顔色は悪い。

 

「無理をしていませんか?」

「無理など……いやそうじゃな」


 エルラは、それからポツポツと喋り始めた。

 まるで、今まで溜め込んだいたものを吐き出すかの様に。


「妾は本当は逃げたいのじゃ」

「逃げたい?」

「そうじゃ」


 俯き顔が見えないが、肩は小さく震えていた。

 

「怖いのじゃ。あの扉が」

「魔王が封印されているんです。無理もありません」

「そうじゃないのじゃ」


 首を左右に振り否定するエルラは、顔をゆっくり上げる。

 上げた顔には涙が溜まっており、今にも溢れ出しそうだ。


「封印が解かれ魔王が現れるのが怖い訳じゃないのじゃ」 

「では一体、何が怖いのですか?」

「大切な者達がいなくなる事じゃ」

「!!」


 そうか、この子も俺と一緒なんだ。

 大切な人を守りたい、失いたくない。

 その気持ちは痛いほどよく分かる。


「覚悟はしていたのじゃ。でも、まさか……魔王だとは、思わなかったのじゃ」


 溢れ出す涙。

 一度こぼれ落ちたものは、まるでダムが崩壊したかのように決壊し始める。

 エルラは、涙を掬い上げるがそれで涙が止まる事はない。


「どうしたらいいのじゃ。もし魔王が復活したら妾はどうしたらいいのじゃ」


 溢れ出し、溢れ出し、溢れ出す。

 涙と共に言葉が、思いが、苦悩が溢れ続ける。

 

 ああ、この子はこんな小さな体に沢山抱え込んでいたんだな。

 本当は怖くて、逃げ出したいのに立ち向かおうと。

 しかし、立ち上がる壁があまりにも高く挫けそうになっている。

 だからこそ俺はーーー


「大丈夫」

「えっ」


 俺は、エルラ様の頭に手を添え撫でる。

 不敬に当たるかもしれないが、知った事じゃない。

 目の前で泣いてる子を放って置けるわけないだろう。


「俺が守りますよ。貴方の事を、貴方が守りたい人達も全部」

「なぜじゃ」


 エルラ様は、悲しみを帯びた顔で聞く。

 

「何故、そこまで妾の為にしてくれるのじゃ」

「簡単ですよ」


 俺は、そこで一旦言葉を切りエルラ様の目を真っ直ぐに見つめる。


「俺は貴方の…エルラ様の護衛ですよ」


 暫くの沈黙の後、エルラ様は笑いを抑えきれないように笑う。


「何じゃそれ。お主はバカなのじゃな。相手は魔王じゃぞ」

「そうですよ。俺はバカだから、魔王にも立ち向かいますよ」


 その言葉と共に、俺は立ち上がり剣を振るう。

 振るった先には小さい針があり、俺はそれを弾き返す。


「だから見ていてください。貴方の護衛の姿を」


 俺は、針が飛ばされた先を強く睨む。


「見つけたぞ」

 

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