52話 依頼開始
「全く、お主達は何をやっておるのじゃ」
牢屋に閉じ込められたラノス達に、呆れた目を向けるのはこの国の姫エルラ・ロー・アルタイル。
それはそうだ。
依頼を受けた冒険者が次の日に牢屋に閉じ込められる。
本当に何をやってるんだ!という気持ちになったものだ。
「いや〜はは、、すみません」
笑うラノスを睨みつけるエルラ姫。
自分よりも1回り、いや3回り程小さい少女に睨み付けられるのは堪えるものがある。
そんな少女に臆さない女性が1人俺の近くにいる。
「ちょとこの城の兵士はどうなってるのよ」
リリスお前黙れ。
「依頼を受けた私達を牢屋に閉じ込めるなんて!」
それは仕方ないだろ。
ダストはラノス達がエルラの依頼を受けた冒険者だとは知らない。
そもそも、エルラが依頼を出している事自体、知っている者は少ないのだ。
寧ろダストの動きは正しいものだ。
何せ怪し者を取り締まるのが門兵の仕事だから。
「取り敢えずあチビじじいを殴らせなさい!話はそれからよ」
「チビじじい?・・・ダストのことか?」
「ダストぉぉ?名前なんか知らないわよ!」
頼むリリス、本当に黙ってくれ。
これじゃあ話が進まないんだよ。
「いいから早く連れて「いい加減黙れ!!」ぎゃん!」
これ以上はまずいと思い、俺はリリスの頭に手刀を叩き込む。
「痛っ〜たいわね!何をするのよラノス!」
「それで俺達はどうなるのですかエルラ様」
「無視するなー!」
「そのことなのじゃが」
「だから無ーーー」
騒がしいリリスを放ってラノスとエルラは話し始める。
「まず、お主達は妾の客人と言う事で話はついたから釈放する」
「おお!有難うございます」
よしこれでここから出られる。
「ただしこれ以上騒がしくするのはなしじゃ」
「それは勿論」
これ以上面倒事はごめんだ。
そう思う俺は瞬間、嫌な予感がした。
ずっと騒がしくしていたリリスの所から。
俺は恐る恐る後ろに振り返る。
振り返る先には、手に魔力を溜め込む姿のリリス。
「おい、リリスさん。その手をーー」
止めようとするラノスの声が聞こえていないのだろう。
リリスは、魔力を込める手を一切緩ませずに解き放つ。
「だから無視するなって言ってるでしょーー!!」
「お前ふざけんなぁーーー!!!」
「のじゃぁぁぁあああああ!!!」
リリスが放つ魔力は、牢屋の檻に限らず壁まで破壊していく。
その衝撃に巻き込まれた俺とエルラは吹っ飛ばされる。
あぁ面倒事を起こしたくなかったのに〜〜!
リリスといるといつもこんな感じだ。
それからまた、エルラに叱れる俺とリリス。
理不尽と感じるのは俺の心が狭いからだろうか?
因みに、牢屋の修繕費は俺とリリスの等分になった。
本当理不尽だ。
♢
それから俺達は、エルラ様の部屋に招かれ護衛依頼の詳細を聞く。
「まずお主達には、妾の護衛として宰相が住まう館に着いて来てもらうのじゃ」
「宰相の館ですか」
「うむ。前にお主達にも話した通り、宰相は城にある開かずの扉の管理をしておったのじゃ。その扉が突然開かれ悲劇が起きたのじゃ」
悲しさに顔を歪めるエルラ様。
その悲劇で失ったのは、ルーラ様の専属メイドだったルーラ。
この話は、護衛を受けるにあたって聞かされた話だ。
「今扉は閉まっておるが、それもまたいつ開かれるか分からぬ。それにーー」
「現時点で一番怪しいのがその宰相」
「そうじゃ」
「それならさっさとその宰相をぶちのめしましょう」
腕をグルグル回しやる気十分と言った所だがリリスさんよ。
「「それはまずいだろ(のじゃ)」」
「えっ何でよ?」
「リリス、まだ怪しいってだけでその宰相が扉を開けた犯人かは分からないだろ」
「その通りじゃ。それに証拠もないのに問い詰める事もできぬ。なのでそれを調べてみたいのじゃ」
「なるほどね」
納得するリリス。
宰相の館に向かう理由は分かった。
しかし宰相の館に向かうには一つ問題がある。
「俺達が行くと怪しまれませんか?」
国の兵士じゃない俺達が、エルラ様の護衛として同行するのは怪しまれる。
それについて聞くと、意外な声の返答が返ってきた。
「それについては大丈夫ですよ」
部屋の扉が開かる。
そこから現れるのは、白髪の髪にスーツ姿をしたアランさんが立っていた。
「アランさん!?何でここに?」
「妾が呼んだのじゃ」
「エルラ様が」
「実はお主達の事を調べてな。そこでこやつの事を知れたのじゃ」
なるほどそれで。
それにしても1日でここまで調べられるものなんだな。
「ええ私の商会に姫様が現れた時は驚きましたが、話を聞いてみるとなんとラノス君も受けるというでわないですか!」
目がクワッと開かれるアランに、少し引き気味になるラノス達。
「これは面白そうと思いこの話に一枚噛みました」
「宰相はアラン殿の商品に目がなくてな。なので名目状はアラン殿の護衛として付いて来てもらうつもりじゃ」
なるほど確かにそれなら怪しまれないな。
「でもいいんですかアランさん。もし何かあった際はアランさんも」
「ラノス君そこは気にしなくていいよ。私もこの国の平和を願っているからね」
「アランさん」
少し感動するラノスだが、アランの内情はこんな感じだ。
(これで合法的にラノス君と一緒にいられる!)
こうしてラノス一行は宰相の館に向かうのであった。




