3話 視線の先には
「初めての方達ですね?ご依頼ですか、それとも冒険者登録ですか?」
「冒険者登録です」
「かしこまりました。それでは、こちらの水晶に手をかかげてください」
「この水晶は?」
「こちらの水晶は、みなさまの情報を記録し管理する魔道具になります。この水晶を通すことで、ギルドカードが作られ、みなさまの冒険者ランク、所属、経歴などもわかり身分証にもなります」
俺達は説明を聞き終えた。
受付嬢が言ってた通りにラノスは水晶に手をかざした。
水晶は小さく光輝いたと思っていたら、光がやがて小さなカードに形を変えていった。
みんなも俺に真似るように水晶に手をかざしていった。
ちなみにカードにはこういうふうに書かれていた。
名 前 : ラノス
年 齢 : 15歳
所 属 : なし
ランク : Fランク
称 号 : 駆け出し冒険者
みんなも同じふうに書かれていた。
ルフレはあることが気になり受付嬢に話しかけた。
「すみません。称号とはなんでしょうか?」
「称号というのは、その者の経歴や偉業、功績といった物の表示になります。」
なるほどね。
要は、一種のステータスというわけだね。
ギルドとしては、ランクに限らず称号からも強さが分かりたいみたいだ。
例えば、国の将軍などがギルドに加入したとして、その人がFランク冒険者と同じ強さと言われれば勿論そんなことはなく、そういったランクだけじゃわからない強さを知りたい見たいだ。
他にも所属などが書かれていたが、これはその時に付いてるクランや組織などと言ったものを指すみたいだ。
それからも受付嬢から冒険者の説明が続いていった。
わかった要素として以下のようになる。
1、ランクの上げ方
依頼や魔物の討伐を一定の量をこなすと上がっていく。
多数の推薦が有り実力を証明する。
昇格テストを受ける。
2、ランクの種類
ランクはF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの順に上がっていき、
Fランク 駆け出し
E、Dランク 半人前
Cランク 一人前
Bランク ベテラン
Aランク 英雄級
Sランク 勇者、魔王クラス
SSランク 超越者
SSSランク 神話レベル
と言った感じになる。
基本的には、皆Aランクを目指して行くみたいだ。
まあSランクからは、本当に成ろうとして成れるものじゃ ないしな。
だって、完全に人外クラスだし。
3、クランとは
クランは一言で言うとチームやパーティーより組織とし
ての面が強い。
依頼をまとめて取り、それを集団で解決することが許され
る。
人数に制限がなく、分け前なども発生するが、安全に依頼
を達成することができる。
大規模なクランや優秀なクランは、ギルドで様々な融通が聞いたりもす
るが、その分月々にギルドへの支払いなども発生する為新しく作る事は難
しく、もともとあったクランに所属することなどが多い。
他にも色々な説明をされたけど、基本的な要素はこんなものかな。
受付嬢の説明も終わり、俺達は初の依頼を受けるため依頼が貼られてる掲示板の前にたった。
「どれにしようかな〜色々あって困っちゃうね」
ミアは首を傾げて悩む。
「おい、この依頼を受けないか!」
レンジは、魔物退治の依頼を持ってくる。
どれどれ・・・ってドラゴン退治!?
いきなりなんてもの持ってきやがる!
どうやっても俺たちが勝てる相手じゃないだろ。
まぁいずれ倒すけどな、いずれ。(ここ大事)
「これらなんてどうだろうか」
ルフレが持ってきた物に目を通してみる。
ー配達依頼ー
規定の場所に依頼内容のものを届ける
報酬:5000G
参加条件:ランクを問わない
ー伐採依頼ー
東区にある森の木を10本切り取り願う
報酬:1万G
参加条件:Fランクから参加可能
なるほど、どれも良さそうな依頼だ。
「ルフレが持ってきた依頼をやろう」
「え〜これやらないの?」
レンジは、不満を口にするが、その手に持ってる紙を見ると、
ー納品依頼ー
エンシャントドラゴンの鱗1枚を納品してください
報酬:1千万G
最上級の武器、防具を一式
参加条件:Aランク以上推奨
鱗一枚でこの金額・・・うん、受けてもいいな。
それに、最上級の武器、防具一式って、武器、防具の階級が、初級、中級、上級、最上級、逸話級、神話級、幻想級の7段階だったよな。
そのうちの真ん中だけど、そもそも後半の3つは本当に伝説のような類でお眼にかかれるような物じゃないしな。
ー武器、防具階級レベルー
初級:初心者におすすめされるレベル
中級:国の兵士などに支給されてるレベル
上級:鍛冶屋が心血注いだ業物レベル
最上級:鍛冶屋が生涯で一本作れるかどうかのレベル
逸話級 : 伝説に残るような武器で、作成はほぼ不可能とされ
ているレベル
神話級 : 神々が作り出されたとする武器、防具であり使われ
てる素材も伝説級の物ばかりで生み出されたとする
レベル
幻想級:そもそも実在するのかどうかも分からない類だが、
歴史上存在がほのめかされている物であり、実在す
れば神話級を超えるとされるレベル
「レンジ君そんなの受けるわけないだろ」
ルフレは首を左右に振りながら、ため息を吐く。
ま、まぁそうだよな。受けるわけないよな。
エンシェントドラゴンなんて会おうと思って会える存在じゃないしな。
そもそも、ドラゴンそのものにあったことがない人がほとんどだろうし。
「レンジ、俺たちは今日の宿代すら怪しいんだぞ」
そう、俺たちはただいま金欠気味なのだ。
子供の時に稼いだお金はどうしたって?
無くなったわけじゃないぞ!
ちゃんとあるにはあるんだけどそちらは、使わないとみんなで話し合った。
理由としては、目標の金額まで貯めるためでもあり、甘えないように戒めるためでもある。
一から冒険者をやって成功させると生き込んでる皆を止められなかったりもしたけど。
そんなことなので俺達は、宿代を稼ぐためルフレが持ってきた依頼を受けるのであった。
白い空間があった。
その空間には、何もなく水平線がずっと続いているように見える。
そして、その空間に彼女はいた。
彼女はその空間に封印されていた。
しかし、彼女からしたらその封印を解くのは容易いことだった。
事実彼女には、それだけの"力"があった。
では何故彼女はここから出ないのか?
彼女はある人物を探していた。
ーまた会おうな、〇〇〇!
彼女は昔ある人物と再会の約束をしていた。
その人物を見つける為むしろ誰にも邪魔されないこの空間は彼女にとっては住み心地がいいのかもしれなかった。
毎日毎日外の景色を水晶越しに見ているだけだったが、彼女はそれを苦痛とは感じないはずだった。
彼女にとっては、時間という物は無限に等しく、数百数千年という歳月すらあっという間に感じていた。
ただ探し求めている人物と別れてからは、彼女にとって時間は憂鬱に感じ、とても長く感じるようになった。
そんなある日、彼女は見つけてしまった。
「・・・ッッッッッ!?」
無表情な顔付きだが、その眼には爛々とした輝きがあった。
彼女の見る先には探し求めていた人がいた。
その人の周りには15歳を迎えた男女組3人組がいた。
「やっっと、やっと見つけた!!」
顔はそのままに、声を荒げて彼女は叫ぶ。
「長かった、長かった!」
声を上げるたびに、その空間は彼女を恐れるかのように震えていった。
「今度は、今度こそは!!」
声を荒げる彼女、その瞳に映る水晶の奥にある人はこれから冒険に出て行くのか、外に出ようとする。
そうその人、いや彼は冒険者になり仲間達と依頼を受けよとしていたところだ。
「ずるい、ずるい、ずるい、ずるい」
ガタガタガタ
空間が揺れる。
ガタガタガタガタガタ・・・ピシッ
いよいよ彼女の圧に耐えられなかったのか、この空間にヒビが広がっていく。
ピシピシッバキバリバリ
この空間は持たない。
誰もが思う程に空間は、限界を迎え割れに割れていきその場所が、消滅して行くかのように闇が広がって行く。
だが彼女は気にしない。
どんなにその空間が歪み、消滅して行こうとも、まるで気にしないかのように彼女は水晶を見続ける。
「待っててね、私もすぐにそっちに行くから」
ずっと無表情だった彼女は、その時だけ小さく笑った。
「今度こそあなたを離さない・・・君」
完全に闇に飲まれたその空間は、白かった先程とは逆に、何も写さない暗闇になり、やがて彼女の姿を覆い隠した。