36話 記憶の断片
「魔王?私が?」
リリスは困惑した顔を浮かべる。
「いえ、決まったわけではありません。
しかしこれは、、、」
ベアーは、先程の結果を思い出し頭を悩ませる。
153歳、これは問題ではない。
デーモンという種族に寿命は存在しない。
問題があるとすれば、それは種族がデーモンの最上位種と魔力量が測定不能な事だ。
デーモンというのは魔族の中でも上位の存在にあたる。
そのデーモンの最上位種、、、それに魔力が測定不能ときた。
先程、リリスさんを調べる際に使った水晶は、冒険者ギルドにあるやつを少し改良した物だ。
主に魔力量を調べ、数値化する事ができる。
数字が高ければ高い程その者が強いという訳ではないが、一種のステータスになる。
生物が生きてく以上大なり小なり魔力を使う。
戦闘に関係する者は魔法。
一般的に生活をする者は、家具を使う際、明かりをつける時などにも魔力を使う。
そんな魔力が測定不能か。
今まで、この道具を使い色々な者の魔力を見てきた。
測れる量に限界があるのは知っているが、宮殿魔法使い10人でも測る事ができるのだ。
ちなみに宮殿魔法使いは、魔法を携わる者の中でも選ばれた人達の事だ。
つまりリリスさんは、そんな選ばれた人達10人分以上に値する魔力量を持つという事だ。
そんなのもはや魔王と言わずして何なのだ。
私は、この時リリスさんに確かな恐怖を抱いた。
(魔王か)
ラノスは、ベアーが発した言葉を考える。
確かにリリスは凄い。
古びた廃墟で戦った時だって、一撃でもまともに当たっていたら死んでいた。
それにあの時は、一本取っていただけで有り最後まで戦っていたら俺は負けていた。
そう思わせるのは、リリスに一本背負いをした際《空間把握》を使用してリリスの実力を感じたからだ。
分かったことは一つ。
“底知れない“だった。
魔力量は勿論の事、身体能力だって凄い。
素の状態でも、《アーマ》を用いなければ張り合えない程だ。
「ラ、ラノス」
震える声が聞こえた。
「リリス?」
「私は、魔王、、なのかな?」
震えてる?
「わっ、わた私は、、魔王?、そう、なっの」
「おい本当にどうしたんだよ」
リリスは震える手で頭を抑える。
「ちっちが、違う違う、わた、、しは、あんなっあんな奴等」
「落ち着け」
「うぐっ」
俺はリリスに向かって手刀を打ち込む。
頭に訪れた衝撃に涙目になるリリス。
不謹慎かも知れないが、可愛いと感じたのは秘密だ。
「ラノス、私、わた、、しは、魔王じゃ、、」
「そんな事はどうでも良い」
「え?」
「短い付き合いで何言ってるんだって思うかもしれないけど、俺にとってリリスお前は、性格が悪い美人だ!
それ以上でもそれ以下でもない!」
「あっ」
確かに、リリスの性格は悪い。
それでも悪い子じゃないのは分かっているつもりだ。
じゃなきゃ仇打ちにここに乗り込んできたりしないだろ。
まぁ見捨てた所はマイナスだけど。
「何よ、それ、、もっと言葉を選びなさい。でも・・・」
ボソボソと何かを呟くリリスだがその声は聞こえない。
それでも顔元には、少しの微笑みが見えた。
「ありがとう」
「え、何だって?」
「何でもないわ」
リリスは顔をプイッと背ける。
何なんだコイツ。
「取り敢えず今分かるのはこれぐらいになります。これからは、これを元に調べてみようと思います」
「お願いします。ほらリリスも」
俺は隣にいるリリスに肘打ちする。
「む、まぁそうだな。頼んだぞベアー」
「なんで頼む側が上から目線なんだよ」
「いえいえお気になさらずに〜」
それからも、俺達は報酬などの話し合いなどをして店から出るのであった。
次来る時は、もっと綺麗になっていることを祈ろう。
ちなみに、報酬の話として前金は100万G支払った。
これを受け取ったベアーさんは腕を上に掲げやる気に満ちていた。
まぁ100万G、大金だもんな〜。
♢
〜リリス〜
(あれは一体・・・)
ベアーの店から出た私は、先程流れ込んだ記憶を思い出す。
倒れる私を囲う7人の魔族。
私の姿はボロボロであり、明らかに弱り切っていた。
しかし、体に負う痛みより苦しいものがあった。
それはーーー
「何で?私を裏切った、、、の?」
話しかける者の姿には、白いモヤが掛かっており見えなかった。
でも何故だろう?
その子は、とても悲しそうな顔をしていた気がする。
そこで私の記憶は途切れる。
あの記憶は一体何だったのだろう?
7人の魔族達は?
そしてあの子は?
・・・ダメだ。
これ以上は思い出せない。
しかし一つ確かな事はある。
私はあの時、裏切られ殺された。
何故、今私が生きているのかは分からない。
それでも目的は定まった。
記憶の中にいた者を見つけ出し、私の正体を突き止める。
そして私の記憶思い出させる。
「なぁリリス」
掛けられる声に、私は思考を止める。
「何かしら」
「これからどうするつもりだ?」
「そうね・・・」
目的は決まった。
しかし、あの者達を見つけ出すにしても情報がない。
それならもう少しの間ラノスといてもいいかもしれない。
「もう少し貴方と一緒にいるわ」
あの時、私を恐れず拒絶しなかった貴方とね。
「えぇ〜」
「何よ、嫌なの?」
「イ、イエソンナコトハ」
全く何よ。
そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃない。
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