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セレスティアル  作者: たくレイ
第二章
31/60

30話 成長

 男達を救ったのは、1人の男の声だった。

 

 「おいやめ・・・ろ?」


 黒髪の青年だった。

 男は周りの状況を見て固まり、暫く経った後扉を勢いよく閉める。

 静まり返る室内。

 

 「あれはお前達の仲間か」


 沈黙を破ったのは魔族の女だった。

 

 「い、いやあいつは・・・」

 

 1人の男が返答するが、言葉は途中で途切れる。

 男の中にある考えが閃いたからだ。

 

 「そうだ!あいつは俺達の仲間だ!

  いざという時に備えていたんだ」


 男は悪い笑みを浮かべながら答える。

 先程の男を囮にしよう。

 そう考えたのだ。

 また静まり返る室内。

 魔族の女は暫く黙った後、手のひらを扉の方に向ける。

 先程の黒髪の男がいた場所だ。


 手のひらに魔力が集まる。

 そしてーーー


〜ラノス〜


 「とりあえず帰ろう」


 俺は、何も見てない。

 そう結論付け、歩き出そうとする俺の後ろから魔力の高まりを感じた。

 嫌な予感を覚え咄嗟に横に飛び込む俺の前には、真っ直ぐに走る突風が巻き起こる。

 

 体制を整えた俺は、破壊された扉を向く。

 しかし視界には、人影が映り込んだ。


 人影の正体は魔族の女だった。

 ラノスが避けるまでの間に、ラノスの前まで来ていたのだ。

 ラノスと女の距離はかなり離れていたはずだが、一瞬でその距離を詰められた。

 これは女が《アーマ》を足に用いて、背中に風の衝撃を与えることで加速したのだ。


 (速っ)


 ラノスは突然目の前まで迫ってきたことに驚く。

 女はラノスの目前に手を掲げる。

 

 先程の突風を出すつもりだろうか。

 避けるのでは間に合わない。

 かといって、防ぐには魔力の高まりからしてとんでもない威力だろう。

 

 (こいつ殺す気だ)


 どんだけ怒ってんだよ!

 それはお楽しみ途中に悪いとは思ったけど、殺すほどか!

 ラノスは女の魔法に対して前に突っ込んだ。

 

 「ッ!?」


 ラノスの行動に動揺する女。

 避けれれないように近づきはしたが、まさか防ぐ素振りすら見せず突っ込むとは思わなかった。

 しかし殺すつもりだったのだ。

 むしろ好都合!

 

 放たれる魔法。

 まともに直撃すればひとたまりもない。

 まともに当たればだが。

 魔法はラノスに直撃することはなく空高くに放たれた。


 「なっーーグッ!」

 

 女の背中に強い衝撃が起きる。

 視界に広がるのは青い空だった。

 瞬間女は理解した。

 今の自分は仰向けに倒れてるのだと。

 でも何故?


 

 「危なかった〜」


 ラノスは、目前に倒れる女性を見る

 紙一重だった。

 一瞬でも反応と判断が遅れていたら大ダメージを負っていた。


 ラノスに魔法が当たらなかった理由は簡単だ。

 放たれる魔法の軌道をずらしただけだ。

 

 あの時、ラノスは放たれる魔法に対して腕を伸ばした。

 伸ばす際腕にありったけの《アーマ》を重ねてだ。 

 伸ばす先は女の腕だ。

 ラノスは女の腕を上に払った。

 そうする事で魔法の軌道は上へと向かった。


 放たれる魔法は強力な風だったが、それに対してラノスが受けた被害はないに等しい。

 腕の服が少し破けているぐらいだ。

 腕に魔法は当たっていた。

 なのに何故服だけで腕に傷がないのか?

 

 放たれる魔法は、強力な風の魔法だったが当たったのはほんの一瞬だ。

 一瞬ならば《アーマ》でも十分に防ぎきりその間に軌道をずらす。

 ラノスが無傷だった理由はこれだ。


 次に女が倒れている理由も簡単。

 ラノスは、腕を掴んだまま後ろに振り返る。

 そしてそのまま一本背負の要領で女を地面に叩きつけた。

 叩きつける前に《空間把握》を使い、空間内の自分の体と女の体の構造を理解し以下に相手に痛みを与えないように気を遣った。

 結果女性には、衝撃は来ても痛みは無かった。


 避けられない?防げない?

 ならばどうすればいい?

 当たらなければ良い。

 これに限る。

 

 簡単なように聞こえるが、これは1年前のラノスには出来なかった。

 1年前のラノスなら前に突っ込むことはせずに、ダメージ覚悟で防ぐ事を考えた筈だ。

 自分がダメージを負っても他の3人、ミア、レンジ、ルフレがいるからだ。

 しかし今のラノスは1人だ。

 それなら立ち回りも変わってくる。

 その一つがさっきの行動だった。

 勿論直撃を受けてより酷いダメージも負ったかもしれないが、成長した今ラノスは自分の行動が成功すると信じ突っ込む事を決心した。

 そしてそれが今の結果だった。

 

 

 女は自分がダメージを負っていない事が不思議だった。

 黒髪の男に気を遣を使われたのは理解できる。

 しかし何故気を使われた?

 あの3人組の仲間なのに。


 「あの〜大丈夫ですか?」


 視界に黒髪の男が映り込む。

 その目は自分を心底心配しており、そこに悪意は感じなかった。


 「ふぅ〜」


 女は深く息を吐き出す。

 冷静になったのだ。

 いや理解したのだ。

 この男はあいつらの仲間じゃない。

 

 「悪かったわ」


 女は素直に謝罪をした。


 「いえ、こちらこそすみませんでした。お楽しみの最中に」

 「お楽しみ?」

 「あれ違うんですか?あの3人と・・」


 ラノスは壊れた扉の先に目線を向ける。

 女も立ち上がり、男達がいた場所に目線を向ける。


 「あれ?」

 「チッ」


 ラノスは困惑した声を出す。

 女も舌を打ち悔しがる。

 それもそうだろ。

 ラノス達が向く先に3人組の男達がいなかったからだ。

 男達はラノス達が戦っている間に逃げたのだ。 

 

 

 

 


 

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