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セレスティアル  作者: たくレイ
第二章
29/60

28話 扉はノックしてから入ろう

 「皆さんお集まり頂きありがとうございます」


 集まる集団に声をかけるのは、白髪長身の男性だった。

 髪色と同じ白いスーツに片眼鏡の一見胡散臭い男だった。

 しかし彼の正体はアマス商会の会長、アマス・レインその人であった。

 年の功は20半ばと若いながら今王国では、名を馳せる様になった傑物であった。

 

 集まる集団は、Cランク以上の冒険者が多く一人前と呼ばれる者達ばかりだった。

 しかし皆一様に緊張していた。

 そんな空気を感じとったのか、アマスは苦笑いを浮かべみなに声を掛ける。


 「緊張している様だね。

  だが安心してくれ。護衛とは言っても目的地は、王国アルタイルここから徒歩3日間の距離です」


 目的地を知り何人かの冒険者は安心をした。

 王国アルタイルの道のりには、しっかりとした街道が敷かれていた。

 決して危険な道のりではない。

 では何故、Cランク冒険者以上の者達が集められたかと言うと、

 

 「実は私冒険者が好きでしてね。将来有望な方達との交流を築きたいと思いまして」


 上手い言い方だ。

 今注目の商会と関係を築ける。

 冒険者にとっては報酬以上に美味しい話だった。

 この話を機に冒険者のやる気は上がった。

 もうここに緊張で身を固くする者はいなかった。

 1人を除いて。


〜ラノス〜


 (あの人やばいな)


 俺は《空間把握》を用いて周りの状況を確認していた。

 《空間把握》では、空間内にいる者達の力量をある程度把握できる。

 筋肉量、内包する魔力、骨格から血液に至るまで本人の知らない体内事情まで知る事ができる。

 その結果わかった事がある。

 それは今、皆の前に立つアマスがこの場にいる冒険者の誰よりも強い事をだ。

 

 (ボルアーさん並かな?)


 勿論ラノスが把握出来ているのは、あくまでも相手の身体能力や魔力量などといったスペックであり、技、魔法、技術、経験などといった目に見えないものまでは分からない。

 それでもスペックでは、ボルアーに並ぶ。

 それだけでも目の前の男アマスが十分に化け物だということが分かる。

 


 (そんな人が護衛依頼か、きな臭くなってきたな)


 しかし依頼を受けた以上ここで帰るという選択はない。

 それにアマスの言う通りで、純粋に関係を築きたいだけかも知れない。

 とにかく警戒は怠らないように緊張感を張り巡らせていよう。


 

 警戒はしていたものの道中特に大きな事が起きたという事はなく、精々が盗賊とおもしき輩に襲われただろうぐらいだったが冒険者の集団にものの数分で潰された。

 数と質は共にこちらが優っていたということも挙げられるだろう。


 「皆様ここまでの護衛有り難うございました。

  こちら報酬になります」


 渡される報酬に喜ぶ冒険者達。

 今回の依頼は、結果だけを見るなら簡単な内容だった。 

 戦闘らしい戦闘は盗賊の一回だけ。

 道中の停まりにも充分な睡眠と食事を取れた。

 本当に楽な依頼だった。

 

 「ラノス君」

 「はい」


 俺に声を掛けてきたのはアマスさんだった。

 何でアマスさんが俺に声を掛けたかと言うと簡単だ。


 「この後時間があれば私の商会に来たまえ。

  話したい事がいっぱいある」


 何故か知らないけど、この人に気に入られたんだよな。

 気に入られんだよな?

 話し掛けられ始めたのは、盗賊の戦闘後だったはず。

 その前にはやたらと視線は感じていた。

 いや、“把握“していた。

 視線だけで、話し掛けられる事もないので放っといていた。

 その筈なのに、今では色々と声を掛けられる。

 本当に何でだろう?

 

 そんなことを考えている俺に、アマスさんは紙とコインを渡してくる。

 

 「これは?」

 「私の商会の住所になります。受付の際は、そのコインを見せれば私の所に案内してくれます」


 ・・・。

 ここまでされると行かないわけには行かないよな。


 「分かりました。後ほど伺わせて貰います」

 「待っていますよ。それでは」


 アマスさんはそう言いこの場から去っていく。

 

 「さて、どうしたもんかな」


 アマスさんに会いに行くのは確定として、それまでの間は何をしようかな。

 



 俺は王国の街並みを見渡しながら歩く。

 流石は王国と言うべきか、人の数や活気は俺がいた街とは比べ物にならない。

 他にも、各国から取り寄せたのか物珍しい食材や装飾品なども数多くある。

 

 「おおぉー」


 正直圧倒されていた。

 地球にいた頃も色々な場所に行き景色も見てきたが、やっぱり初めて見るものは感動が違うな。

 よし!

 せっかくここまで来たんだ。

 この王国を存分に満喫しよう。

 決心した俺はそれからも色々な場所を渡り歩いて行った。

 

 


 「迷った」 


 今俺の目の前にあるのは古びた廃墟だった。

 何でこんな所まで来たんだろう?

 俺自身もよく覚えてない。

 仕方ない来た道を戻ろう。

 

 ガシャーン!!


 振り返って来た道を戻ろうとする俺の背中に、ガラスが割れる音が響く。


 「なんだぁ?」


 俺は気になり物音のする廃墟に近づく。

 扉の前まで来た俺は、『空間把握』を使い中の状況を探る。

 空間内に入ってくる情報では、床に尻もちをつく男性3人組と頭に角がついた女性がいる事は分かった。

 女性は男達に手を掲げる。

 魔法を使うつもりだろう。

 手のひらに集まっていく魔力は、明らかに3人組を殺す圧があった。

 何故こんな状況になっているのかは分からないが、目の前で殺されそうな奴が居るんだ。

 見逃すわけにはいかない。


 「おいやめ・・・ろ?」


 扉を蹴破り室内の中を見た俺は固まる。

 何故なら、俺が見る先には半裸の男性達と顔を赤くし、目元に涙を滲ませた女性。

 いや本当にどう言う状況?

 

 

  

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