18話 悲しみを乗り越える先には、、、
燃え果て、消えるエデンを見終わった俺は力無く地面に倒れる。
「ラノス!」
ミアは慌ててラノスのそばに近づく。
ラノスは、苦痛に喘ぎながらお腹を抑えつける。
お腹からは、更に傷口が開いたのか押さえつけても溢れ出す血を前に、ミアは顔を青くして震える。
震える手をラノスのお腹に抑えてつけて問いかける。
「ラノス、、死なないで」
囁きかける声は、小さく悲痛さを感じた。
「死ぬわけないだろ。ミアを置いて」
か細く、しかし安心感を感じさせる優しい声で答えるラノスに、ミアは類を涙で濡らす。
だが現実は残酷だ。
事実ラノスのお腹からは今も血が止まらず溢れ出す。
このままでは、出血多量でラノスは死ぬ。
ラノスもミアもそれを感じているのだろう。
しかし打つ手がない。
ミアは、周りを見渡す。
しかし周りには森と草木しかなく、どうにかする手立てがなかった。
「ん?」
ミアは、立ち上がり藁にもすがる気持ちで“それ“に近づいた。
“それ“は先程ラノスが殺した大男だった。
大男の元まで向かったミアは、しゃがみ込みその体を弄る。
何か、何かっ、何かっ!
必死に探すミアの願いが叶ったのか、ミアはある包を見つけ出す。
その包からは、赤い液体が入っていた。
「回復ポーション!」
回復ポーション
この世界には、飲み込み又は傷口にかけることで傷を治す液体がある。
これらは、薬草や魔物の素材を元に作り出すことができる。
勿論誰でも作れる訳ではなく、専門的な知識と技術を用いて作り出す事ができる。
このポーションには、他にも多種多様な種類が存在していて、作る人によっては効果の高さが変わってりもするが、幸い大男が持っていた回復ポーションは効果が高くラノスの命を救った。
♢
「はぁ、はぁ」
森の中を走り続けるルフレは、呼吸を乱しながら目的の人物達を見つけ出す。
「すみません!助けてください!!」
ルフレは『夜明けの星々』の団員服を着た者達に声を掛ける。
ルフレの声に気づいた、団員達は振り返りる。
そして、団員達の元まで来たルフレは呼吸が荒いままここまであった出来事を話す。
最初は突然来たルフレに驚いていた団員達は、その顔を少しずつ真剣なものに変えていった。
「という事がありまして。お願いします!ラノスとネルさんを助けに一刻も早く!」
頭を下げるルフレに団員達も話し合い方針を決めた。
「まずは、君の仲間を助けに行こう。君達は急いでボルアーさんに報告だ」
「「はっ!」」
黒髪の男性が他の団員達に指示を飛ばす。
どうやらこの男性が、この中のリーダーみたいだ。
男は柔和な笑顔でルフレに話しかける。
「それじゃあ急ごうか」
「はい!」
ルフレは、黒髪の男と共にラノス達のいる方角に体を向ける。
(待ってて、ラノス、ミア、ネルさん、今向かいます)
だが何故だろう?
この漠然とした不安感は?
何か悪いことが・・・
♢
「良かっだぁぁ〜〜」
抱き付きながら泣くミアに、俺は頭を撫でていた。
あの後ミアが見つけた回復ポーションで傷を塞いだ俺は、しばらくの間その場に留まった。
回復ポーションで傷を塞いだとはいえ、無理が出来る状態ではなかったからだ。
戦闘中にもかなりの魔力を使った。
このままこの場に待機して、応援を待とうということになった。
(それにしても)
俺は空になった回復ポーションを見て思う。
マジで助かった。
いや、冗談抜きに。
この回復ポーションがなかったら俺は死んでたと思う。
何より、ミアが来なかったらあの時に殺されてた。
「本当にありがとうなミア」
「心配させないでよぉ〜」
ポスポス
胸元を叩いてくるミアに不覚にも可愛いと感じたのはいけないだろうか?
暫くして落ち着いたミアは先程までエデンがいた場所を見つめる。
「倒したんだよね?」
「ああ」
そうだ、倒したんだ。
レンジの仇を。
レンジの、、、
「うっ、うう〜」
泣き止んでいたミアは、レンジの事を思い出し再び類を涙で濡らす。
「泣くなよミア」
「ラノスこぞぉ〜」
「え?」
そこで俺は、初めて自分が泣いている事に気づいた。
俺は、瞳から溢れ出す涙を拭く。
しかし拭いても、拭いても、収まらない。
思い出すのはレンジの事ばかりだ。
『おーいラノスー、ミアからおかしくなったって聞いたんだけど』
『おい!あっちにかわいい受付嬢がいるぞ!』
『おい、この依頼を受けないか!』
『すげー強そうだったな!』
『そうだよな!!死にそうになった?そしたら強くなればいいだけだもんな!今度はあのフェンリルに負けないぐらいに 』
『お前等付き合ってるんだろ?』
思い出すレンジとの思い出と言葉の数々。
レンジは、あのお調子者とはもう会えないんだ。
そこで限界だった。
俺は暫くの間その場に蹲り泣いた。
♢
「泣いてばかりいられないな」
「うん」
そうだ。
俺達がここに来た目的を忘れるな。
ネルさんは勿論のこと、そもそも俺達はこの森の諸悪の根源を断ちにきたのだ。
魔物に魔道具を持たせて何をしようとしているのかは分からない。
しかしそれが原因で冒険者が死んだ。
それが街にまで及ぶかも知れない。
放っておいていいはずがない!
レンジの死は悲しい。
今でも泣き叫びたい。
でもきっとあいつなら、
『俺が死んで悲しいなら、俺の分までお前等が生きろ!』
「えっ?」
なんだ?
今レンジの声が聞こえたような?
励ましてくれたのか?
「ははは、分かってるよ」
幻聴?
そうかも知れない。
俺の勝手な妄想や願望かも知れない。
それでもあいつなら、あのお調子者ならそんな事を言う気がする。
そうだろ、親友。
再び目尻に涙が溜まるラノスは、ミアに見えないようにその涙を拭く。
そして前を向くラノスの顔には曇りはなかった。
ミアもまた決意を秘めた顔する。
(ラノスは絶対に守る。そしてラノスとルフレ君3人で無事に帰るんだ!)
悲しみが消えたわけではない。
痛みがなくなったわけではない。
失った者が戻る訳ではない。
しかし、それでも少年少女は前を向き己の使命を果たす。
だが、この世界はどこまで残酷だった。
ドサッ
物音がした方向を見る、ミア、ラノスの前にはーー
♢
ーとある組織ー
「ボス!冒険者の集団が攻めてきたぞ!」
「冒険者の中には、『晴天の使者』と『夜明けの星々』が動いてる!」
「『夜明けの星々』だと!と言う事は『猛虎』が攻めてきてるのか!?」
慌ただしく動き回る部下達を見て、豪勢な椅子に座る男は口を開く。
「鎮まれ」
一言。
しかしその一言に、先程まで騒がしかった空間は凍りつく。
部下達は、男の発する声にまるで心臓を掴まれた感覚を味わう。
感覚的な話ではない。
事実そうなのだ。
今、一言でも声をあげようものなら殺される。
震える部下達を前に、男は続けて喋る。
「案ずるな。これも計画の内だ」
計画
そうここまでは、この男の計画だった。
『蒼天の使者』、『夜明けの星々』、問題ない。
寧ろ、街の中で戦闘を行うよりこちらのホームで戦う方が都合がいい。
構造を理解しているここでは、罠を張ることも効率良く兵を送ることもできる。
相手には不利であり、こちらは有利。
これを活かさない手はない。
それにここでしか切れない切り札も存在する。
何よりも極秘に『夜明けの星々』に潜ませていた“あいつ“をここ等で使う時でもある。
お陰で、冒険者共に大きな混乱と被害を出す事が出来た。
『夜明けの星々』のリーダー、『猛虎』のボルアーの首を取れれば良かったが、流石にそこまでうまくはいかない様だ。
“あいつ“も何度か隙を伺い暗殺を試みようとしたが、どれも失敗したようだ。
流石は英傑というだけの事はある。
だが、その上で問題ない。
それだけの準備と計画を立てた。
「全ては、邪神様の為に」
男の言葉に、部下達も両手を合わせ祈る。
彼らの祈り先、企み、全てが謎のまま。
しかし彼らの悪意は、冒険者達にラノス達に刻一刻と迫るのであった。
♢
ラノス達が向いた先には1人の男が立っていた。
男は、黒髪の頭をしており『夜明けの星々』の団員服を着ていたが、その服にはべっとりとシミ付いた血が付着していた。
別にそれはいい。
いいんだ。
ただ、
(ダメだ見るな!)
違うそんなはずはない。
見るな、やめろ!
気のせいだ!
やめろやめろ、見るな!
ダメだ!ダメだ!見るな!見るな!!
しかし、心とは別にその目は男が離す“何か“を見た。
いや、見てしまった。
ラノスが見つめるその先は、、、
「なっっ、、なんで?」
ー死に絶えるルフレだった。
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