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第6話:リーファ

物語のテンポ感を改善するため1/3ほど削除しました。

以前から読んでいただいている読者の方には問題なく読めるようになっていますし、新規の読者さんにも読みやすくなっているかと思います。

 ◇


 最終試験が行われる場所は、『イートンタウン』から北に位置する『イートン洞窟』。


 イートン草原のスライムよりはやや強い魔物が潜んでいるエリアだが、初心者向け狩場ということは変わらない。


 魔物を相手にするので、気を抜いてはいけないが初心者でも死ぬような場所ではない。


「魔物と戦いながら洞窟の最奥に到達し、無事に戻ってこられれば合格です。では、進みましょう」


 リーファはそう言うと、俺たちの後ろに下がった。


 監督する冒険者は、危険があれば助けるが、基本的には俺たちのみで戦うことになる。


「なあユート」


「ん?」


 魔物がいるエリアまで歩いている途中、グループメンバーのジークから話しかけられた。こいつはちょっとチャラチャラしている感じの『騎士』だ。


 『騎士』は近接戦闘を得意とし、攻防ともにバランスの良い職業だ。『剣士』は攻撃の比重が高いが、『騎士』は防御力も高いという特徴がある。


「ローザちゃんって可愛いよな?」


 ローザという女の子もまた、グループメンバーの一人だ。


 巻き髪で茶髪の……まあ、こいつと似合いそうな派手めな少女である。


「あのお嬢様っぽいところがたまらん。なあ、どうしたら彼女にできると思う?」


 知らんがな。


 とはいえ、せっかく相談してくれているのに無碍にするのも気が悪い。


「デートにでも誘って距離を詰めればいいんじゃないか?」


「だよな。デートに誘うためにも、やっぱここで一発大活躍して男らしいところを見せるのがいいよな!」


 なぜそうなる!?


 いやまあ、いるよなこういうやつ。


 相談という体で相談する気はなく後押ししてほしいだけの人。


「そうと決まりゃ、魔物を薙ぎ倒してかっこいいところを見せてやるぜ! ひゃっほい!」


「お、おいちょっと待て!」


 一人でグループを抜け出して洞窟の先へ進んでいくジーク。


 洞窟の中は見通しが悪い。いくら初心者向けの狩場と言えども、単独で特攻し油断していれば急所に攻撃をくらい、致命傷になることもある。


「ジ、ジークくん、待ちなさい!」


 慌ててジークを止めるリーファ。


 しかし、すでにジークはウルフの群れに突っ込んでしまっていた。


「このくらいの魔物……俺なら余裕!」


 と大きく剣を振るジーク。


 しかし――


「なっ……足が!」


 隠れていた別のウルフに足を噛まれてしまい、姿勢を崩してしまうジーク。


 倒すはずだった眼前の魔物がジークに飛び掛かろうとしている。さらに、その周りには十数匹のウルフの群れがよだれを垂らして囲んでいる。


「や、やべえって……う、嘘じゃん……」


 自身漲っていたさっきとは打って変わって、情けない声を漏らすジーク。


 俺は、やれやれとため息を吐きつつ、ジークに向けて叫んだ。


「ジーク、死にたくなきゃ――伏せろ!」


 俺は、風球と地球の混合魔法『風地斬』を放った。


 風属性と地属性は相性が悪く、威力が半減してしまうのだがだからといって使いものにならないわけではない。


 地球により生成された土を風球により薄く鋭利にすることにより、斬撃のごとくピンポイントな攻撃が可能になる。


 『風火球』だと助けようとしたジークを巻き込む可能性があるため、咄嗟の判断でこっちの魔法を選択したのだ。


 伏せたジークの頭を掠めて『風地球』が飛んでいき――


 ザアアアアアアンンッッ――!!


 3体のウルフを巻き込んで瞬殺したのだった。


「あとは私に任せてください」


 後方から詰めていたリーファがジークを庇うように立ち、迫りくるウルフたちを次々と剣で薙ぎ倒していく。


 ……上手いな。


 特殊なスキルを使ってはいないが、かなり実戦経験を積んでいるのだろうと思わせられる身のこなしだった。


 リーファは鮮やかな剣技を披露し、一瞬で十体のウルフを倒したのだった。


「た、助かった……」


 無謀な特攻を仕掛けたジークは意気消沈していた。


 そこにリーファは物凄い剣幕で詰め寄る。


「ジークくん、何を考えてるんですか! 死にたいんですか!? あと一歩こちらの対応が遅れていたらわかりますか!?」


「す、すんません……」


「大いに反省してください。今回は初めての実戦ということで大目に見ますが、次同じことがあれば問答無用で不合格にしますからね!」


「は、はい……」


 なお、ジークがアピールしようとしていたローザの反応はと言うと――


「ダッサ。何考えているんですのあいつ。ああいうバカは嫌いですわ」


「まあまあローザちゃん。聞こえちゃうよ……」


 同じグループメンバーのもう一人の少女、ソラの隣で残酷な評価を下していたのだった。


 なお、ローザの言葉はジークにしっかり聞こえているようでさらに情けない表情になっていた。


「ジークくん、傷を癒しますね」


 ソラは『回復術師』らしく、ウルフに噛まれたことで足に傷を負ったジークの治療を始めた。


 それほど深い傷ではなかったこともあり、すぐに完治した。


「はい、これでもう大丈夫だよ」


「ソラちゃん……ありがとう。ソラちゃんは俺の女神だよ……」


 うるうるとした瞳でソラの手を握るジーク。


「お、俺……ソラちゃんが好きだ……!」


 失恋で気が動転しているのか、突然ソラに告白してしまうジーク。


「え? え?」


 ソラも目を点にして困惑してしまっている。


 俺も困惑している。


 お前の愛はその程度だったのか……。いや、まあよく考えれば今日出会ったばかりの相手への愛なんてそんなものか。


 なお、ソラの返事は当然ながら――


「えっと……普通に無理。ごめんね」


 ソラはパッとジークから手を離したのだった。


 更なる絶望の底に落ちてしまうジーク。


 しかし、まだソラの言葉は続く。


「まずはお友達から……ね」


 まだ僅かな可能性が残っていることを知ったジークの声のトーンは露骨に明るくなる。


「ぜ、ぜひ!」


 やれやれ。俺はなんで異世界に来てまで他人のラブコメを見せられているのだろうか……。


「みなさん。一旦休憩にしましょう」


 カオスな状況を一旦落ち着かせようと思ったのか、リーファが俺たちに指示を出した。


 リーファは魔物避けの魔石を取り出してキャンプを張ると、俺の方にやってきた。


「ユートくん、さっきはありがとうございます。ユートくんの助けがなければ、犠牲者が出ていたかもしれません」

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